保育士経験を数年間ほど積むと、キャリアアップ研修を勧められる場合があると思います。
研修を受けると具体的にどれくらい給与が上がるか疑問に思っても、一緒に働いている職員に聞くのは少し気まずいですよね。
本記事は、キャリアアップ研修に焦点を当て、研修を受けたことでどれほど給与が上がるのか、実際に上乗せされる金額をお伝えします。
最後に、研修を受けるメリットとデメリットを紹介しますので、ぜひお役立てください。
- キャリアアップ研修の概要
- 処遇改善加算Ⅱとキャリアアップ研修の関連性
- 研修を受けて就くことができる役職
- どのくらい給与額が上がるか
キャリアアップ研修を受けることで給与アップが見込める
現状の保育士の平均収入をご存知でしょうか?
厚生労働省によると保育士の平均年収は326,8万円で、他業種は489,9万円となっています。
他の業界と比べると明らかに低いですよね。
上記の問題への対応策が処遇改善加算です。
加算の種類は3つあり、Ⅱではキャリアアップ研修を受けて特定の役職に就くと加算対象になります。
キャリアアップ研修は、複数の分野から構成される保育士の専門性を高めるための研修です。
参照:保育士の平均賃金
保育士のキャリアアップ研修は「処遇改善等加算Ⅱ」を受ける上で必須
キャリアアップ研修は、処遇改善加算Ⅱの手当をもらうために必須です。
なぜなら、加算Ⅱは特定の役職に就いた保育士個人への手当金だからです。
該当する役職は、職務分野別リーダー、専門リーダー、副主任保育士があげられます。
それぞれの役職に就くには、保育士経験がおおむね3年、もしくは7年以上あることに加えて必要分の研修を修了していることが条件です。
「処遇改善等加算」が導入された背景
処遇改善加算とは、保育士の収入が他業種と比較して低いことや慢性的な人手不足の対策のために導入されました。
2013年から処遇改善加算Ⅰが開始され、2017年から始まったのが処遇改善加算Ⅱです。
今までの保育園には、キャリアを築いていくための昇進先が園長と主任のみがほとんどで、ほんのわずかな保育士だけが昇進、昇給ができる環境でした。
処遇改善加算Ⅱによって、新しい役職が作られ、多くの保育士が昇進、昇給を目指せる仕組みとなりました。
保育業界全体の給与額の上昇と離職率の低下などが期待されています。
「処遇改善等加算Ⅰ」とは?
認可保育園で勤務する職員全員がどれだけ継続して働いているかによって、国から手当金が入る制度です。
長く働いている職員が多い職場ほど加算される割合が大きくなる特徴があります。
非常勤保育士も、1日に6時間以上の勤務か、月に20日以上の勤務があるという条件を満たすと制度の対象になります。
支給される金額は、ひと月当たり12,000円〜38,000円ほどです。
「処遇改善等加算Ⅱ」とは?
特定の役職がある保育士へ手当金が支給される制度です。
以前の保育業界は、園長と主任のみの役職で、経験を積んでも役職に就けない保育士がたくさんいました。
本制度で新しい役職が新設され、保育士が経験を積み、学びを深めることで役職に就きやすくなりました。
職務分野別リーダーになると1ヵ月あたり5,000円の手当金を受け取れ、専門リーダーや副主任保育士になると1ヵ月あたり40,000円の手当金が支給されます。
キャリアアップ研修を受けて給与のアップが見込める役職
- 保育士としての経験がおおむね3年以上、もしくは7年以上ある
- キャリアアップ研修の受講を修了している
- 職務分野別リーダー・専門リーダー・副主任保育士のいずれかに就いている
上記3点の条件をクリアすると、給与額のアップが見込めます。
どの役職に就けばどれくらいの給与額の上乗せが見込めるか詳しく紹介します。
職務分野別リーダー
比較的経験の浅い保育士でも目指せる役職が職務分野別リーダーです。
- 保育士としての経験年数がおおむね3年以上ある
- キャリアアップ研修を1つの分野以上を修了している
- 園からの発令で職務分野別リーダーの役職に就いている
上記の3点を満たすと給与額に月額5,000円が上乗せされます。
ただし、職務分野別リーダーを配置できる人数の上限は決められており、園長と主任を除く保育士全体の1/5までと決められています。
注意点は、研修を受講しても全員が職務分野別リーダーに必ずなれるわけではないことです。
参照:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ
専門リーダー
以下の条件を満たすと専門リーダーになれます。
- 保育士としての経験年数がおおむね7年以上ある
- 職務分野別リーダーの経験がある
- 4分野以上のキャリアアップ研修を受講済みである
- 園からの発令で専門リーダーの役職に就いている
4点を満たすと1ヶ月あたり40,000円が給与額に加算されます。
ただし、専門リーダーを配置できる人数の上限は決められており、園長と主任を除く保育士全体の1/3と定められています。
注意点は、条件を満たした全員が専門リーダーに必ずなれるわけではないことです。
参照:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ
副主任保育士
以下の条件を満たすことで副主任保育士になれます。
- 保育士としての経験年数がおおむね7年以上ある
- 職務分野別リーダーの経験がある
- キャリアアップ研修の「マネジメント」とその他3分野以上受講済みである
- 園からの発令で副主任保育士の役職に就いている
4点を満たすと1ヶ月あたり40,000円が給与額に加算されます。
ただし、専門リーダーと同様に副主任保育士も配置できる人数の上限が決まっています。
園長と主任を除く保育士全体の1/3と定められています。
参照:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ
キャリアアップ研修の内容を詳しく解説
- 乳児保育
- 幼児教育
- 障害児保育
- 食育・アレルギー対応
- 保健衛生・安全対策
- 保護者支援・子育て支援
- 保育実践
- マネジメント
キャリアアップ研修は都道府県が主となって実施されており、上記の8つの分野から構成されています。
それぞれ研修にかかる時間は15時間以上もあり、受講後にレポートを提出する必要があります。
研修を受講し終わると修了証が交付され、一度得た修了証は全国どこでも有効です。
例えば、引越などで一度退職をして県外で再就職するケースでも修了証は有効になります。
参照:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ
キャリアアップ研修のメリット
毎日の保育業務をこなしながらのキャリアアップ研修の受講は大変に思えるかもしれませんが、「私には難しそう」と諦めるのはもったいないです。
なぜなら、研修を受けたことにより得られるメリットがあるからです。
以下で詳しく紹介しますので、受講するかどうか考えてみてください。
分野別に知識が身につく
キャリアアップ研修のどれを選んでも、すぐに日常の保育に活かせる実践的な知識を身につけられるでしょう。
保育士資格を取得する際に多くの理論や技術を学びましたが、実際に現場に出て保育を経験した今だからこそ、研修で吸収できる知識があります。
保育士としてのスキルをさらに磨くための絶好の機会になるはずです。
給与アップに繋がる
キャリアアップ研修の受講によって、該当する役職に就くことで、給与額の上乗せが見込めます。
なぜなら、処遇改善加算Ⅱが適応されるからです。
就く役職によって加算額は異なりますが、1ヵ月あたり5,000円〜40,000円の上乗せが期待できます。
ただし、手当金は保育士個人に振り込まれるものではなく、園を通して支給されます。
園が国に申請をしていない場合は受け取れない場合があるので注意しましょう。
転職や再就職の時のアピールするポイントになる
保育士の仕事をしている人は女性が大半で、結婚、妊娠、出産、子育てなどのライフイベントがあり、仕事を調節せざるを得ないケースもあります。
研修を受けた証の修了証があれば、一度退職をしても、県外に引越した先で再就職をしようと考えたときも、ずっと変わらず自分のスキルを証明してくれます。
転職や再就職をするとき、自分のスキルをアピールするポイントとなるのです。
保育士のキャリアが途切れにくくなり、安心して働くことができるでしょう。
キャリアアップ研修のデメリット
保育士のスキル向上や保育の質を高めるためのキャリアアップ研修ですが、デメリットもあります。
受講を決めたことを後悔しないように、メリットとデメリットを把握した上で考えましょう。
受講する時間が確保できない人も
キャリアアップ研修は、1分野に15時間以上もかかります。
専門リーダーや副主任保育士が目標の場合は、4分野以上の修了が条件なので、合計で60時間以上もかかります。
忙しい毎日の業務で疲弊していると、研修時間の確保が難しく、修了することができません。
研修に理解がない職場環境の場合、研修を受けたくても受けられないまま時間だけが経ってしまうケースもあるでしょう。
必ずしも給与がアップするとは限らない
処遇改善加算Ⅱは必要な量の研修を受け、特定の役職に就くことで手当金の対象となります。
手当金の支給方法は、園が国に手当金の申請をしてから園に支払われ、個人の手元に届く仕組みです。
園が国に申請をしているかどうかで手当金が受け取れない場合もあります。
また、園によって役職に就ける上限人数が決まっているので、研修を受けても役職に就くことができず、手当の対象とならないケースもあります。
まとめ
保育士のキャリアアップ研修についてお伝えしました。
必要な分野の研修を受け、特定の役職に就くと給与額のアップが期待できます。
金額としては、職務分野別リーダーが1ヵ月あたり5,000円で、専門リーダーや副主任保育士は1ヵ月あたり40,000円です。
注意しておきたいポイントは、園が国に申請をすることで得られる手当金だということ。
研修を受ける前に園として申請を行っているかどうかは確認しておきたいところですね。
研修を受けるメリットとデメリットをふまえて、今一度ご自身の保育士としてのキャリアを考えてみてはいかがでしょうか。
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