保育実習の部分実習や責任実習などで、絵本の読み聞かせを考えている方は多いのではないでしょうか。
部分実習や責任実習では指導案を書く必要がありますが、「絵本の読み聞かせの指導案の書き方がわからない」「担当年齢児の絵本の読み聞かせのねらいは何だろう」といった疑問が多いかもしれません。
本記事では、絵本の指導案を書く際のポイントや0歳児〜5歳児までの指導案の例文をそれぞれご紹介します。
絵本の指導案作成にお困りの保育学生の方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 絵本の指導案を作る前に考えること
- 絵本の指導案の各項目に書く内容
- 年齢別の絵本の読み聞かせのねらいや保育者の援助
- 先輩保育士からのアドバイス
実習での読み聞かせはとても緊張しますよね。元保育士が指導案に書くポイントや読み聞かせにおすすめの絵本をご紹介するので、ぜひ参考にしてくださいね!読み聞かせが無事に成功することを願っています。
絵本の読み聞かせの指導案を作る前に考えること
読み聞かせする絵本を選ぶ
指導案を作る前に、読み聞かせに使用する絵本を選びましょう。
保育室にある絵本や、読みやすそうな絵本を選ぶだけでは読み聞かせの意味がありません。
読み聞かせのねらいは、0歳児なら色彩や言葉に興味をもつ、5歳児なら物語を通して自然現象や行事の由来などに興味をもつなど、年齢によって大きく異なります。
年齢の発達に合わない絵本を読み聞かせても、子どもたちは何の成長にもつながりません。
担当する年齢児の発達をしっかりと理解し、絵本選びをおこなうようにしてください。
読むタイミングを考える
1日の生活のうち、どのタイミングで絵本の読み聞かせをおこなうのかを考えましょう。
部分実習や責任実習では、絵本の読み聞かせのタイミングを以下のように自分で選べる場合があります。
- 朝の会・帰りの会
- 主な活動の前
- 午睡前・午睡後
読み聞かせをおこなう時間帯によって環境構成や援助方法を変える必要があるので、どのタイミングで読み聞かせをしたいのかを事前にイメージしてみてください。
導入の手遊びを併せて検討する
絵本の読み聞かせをする際は、併せて導入も一緒におこなうようにしましょう。
いきなり子どもを集めて絵本の読み聞かせを始めても、子どもの絵本に集中するスイッチはまだ入っていません。
簡単な手遊びをしたあとに、絵本の読み聞かせを始めるのがおすすめです。
「はじまるよはじまるよ」「棒が一本」「魚が跳ねて」など、絵本の導入にぴったりな手遊びがたくさんあるので、どの手遊びをおこなうのかを検討し、指導案に記載しておいてください。
絵本の内容にあった手遊びがあれば、子どもたちもより絵本に興味をもちやすくなりますよ。
絵本の読み聞かせ指導案の項目
ねらい
読み聞かせのねらいは月齢により異なりますが、共通している点もあります。
- 読み聞かせを通して興味関心や想像力を養う
- 絵や言葉を通して物語の世界観を味わう
- 保育者や友だちと一緒に絵本に親しみをもつ
上記を参考に、絵本の読み聞かせを通してどのような姿になってほしいのかをイメージし、ねらいを設定しましょう。
ねらいが担当児の年齢や成長にあっているのか、発達段階の確認も大切です。
環境構成
読み聞かせを楽しむためにどのような配慮をおこなうのかを記載するのが、環境構成です。
環境構成は、以下の3つの視点から考えることが大切です。
- 室内環境(外部音が耳に入らないようにするために窓を閉める、周りに人がいない場所を選ぶなど)
- 実習生の立ち位置(子どもの気が散らないように壁を背後にして座る、装飾物や玩具のない場所を選ぶ)
- 子どもの位置(絵本が見える範囲に座るように促す、カーペットやござを敷いて絵本の時間と認識できるようにするなど)
子どもの姿
読み聞かせの最中に、実習生も予想しない言動をとるのが子ども本来の姿です。
席を立ち歩き回る、隣の子どもとトラブルを起こす、おしゃべりが止まらないなど、予想していなかった子どもの行動を目にすると、どうしたらよいのかパニックになってしまいますよね。
読み聞かせ中に予想される子どもの姿を想像して記入しておけば、想定外の動きをした場合でも落ち着いて対応できます。
保育者の援助
声のトーンや抑揚のつけかたを意識する、子どもの気づきに共感するなど、子どもがより絵本に親しみをもてるような援助方法を記載します。
さらに、上記の予想される子どもの姿で予測したものに対し、喋っている子どもに視線を送る、トラブルを解決してから読み聞かせに入るなどの、具体的な援助方法を記入しておきましょう。
20〜30人のように大人数の子どもを1人で見るのは大変なので、周りの保育者にも援助してもらえるように保育者の動きを記入し、読み聞かせの際にお願いしたい動きを伝えておくことも大切です。
絵本の読み聞かせの指導案例【年齢別】
0歳児の指導案
言葉の理解は難しく、言葉の音や挿絵を耳や目で使って感じ取るのが0歳児の発達の特徴です。
ですので、0歳児では絵本の読み聞かせを通して、保育者とのスキンシップや言葉を発する楽しさをねらいに取り入れます。
子どもが絵本の読み聞かせを楽しめるように、保育者は心地よい声でゆっくり読むように心がけることを指導案に必ず記入しましょう。
言葉の理解ができない0歳児の指導案を立てるのは難しいかもしれませんが、子どもの発達を理解すれば何をねらいにすればよいのか分かるようになりますよ!
ねらい
- 絵本を見ながら保育者とのスキンシップを楽しむ
- 保育者と一緒に擬音語や擬態語を発して楽しむ
- 言葉や音、色彩に興味をもつ
環境構成
- 落ち着いた環境で絵本が見れるように玩具や物が少ない場所を選ぶ
- 子どもと同じ目線で見えるように座って読み聞かせる
子供の姿
- 絵本の挿絵に興味を示し、喃語を発したり指差しをしたりする
- 保育者の読み聞かせを聞きながら体を動かしたり笑ったりする
保育者の援助
- 保育者の膝に座らせて安心した雰囲気のなかで絵本を見れるようにする
- 子どもの声や指差しに共感し、一緒に声に出したり指を指したりする
0歳児におすすめなのは、カラフルな挿絵のあるものや、オノマトペ(自然界の音や声、物事の状態や動きなどを音で表した言葉)を発せる絵本です。
「だるまさんが」シリーズや、「いないいないばあ」「くっついた」などは子どもたちにも大人気な絵本なので、ぜひ実習にも取り入れてみてください。
また、抱っこしながらでも持ちやすい小さいサイズの絵本も、0歳児の読み聞かせに適しています。
1歳児の指導案
1歳児は、身近なものや出来事への興味関心が高まる時期です。
また、高月齢になるにつれて「あーうー」などの喃語から「ぶーぶ」「まんま」などの単語が喋れる言葉も変化します。
読み聞かせでは、言葉を発することが楽しめる絵本を選んでみましょう。
長時間集中するのが難しく、友だちに手を出すなどのトラブルが生じる可能性もあるため、あらゆる子どもの姿を予想して、どう対応したらよいのかも指導案に記入しておきましょう。
ねらい
- 言葉の響きやイラストに興味をもち絵本の読み聞かせを楽しむ
- 言葉を繰り返し発して楽しむ
環境構成
- マットやゴザを敷き、絵本を見るスペースが分かりやすいようにする
- 落ち着いた環境で見れるように周りの障害物に配慮する
- 絵本が見やすいように角度を調節する
1歳児は複数担任がほとんどです。子どもが落ち着いた雰囲気で読み聞かせを楽しむために、読み聞かせの際に周りの保育者にどの位置に座ってもらうのかを、指導案の環境構成に記入しておきましょう。
子供の姿
- 保育者の言葉かけを真似したり、絵本に出てきたものを伝えようとしたりする
- 絵本に集中できず、走り回ったり友だちに手を出したりする子もいる
保育者の援助
- 落ち着いた雰囲気で見れるように、声のトーンや顔の表情を意識する
- 子どもの興味に合わせてページのめくる速さを調節する
- 子どもの気づきに共感し、「わんわんだね」などと声に出しながら読み聞かせる
1歳児におすすめなのは、短いフレーズや印象に残りやすい単語が使用されている絵本です。「もこもこもこ」や「きんぎょがにげた」「がたんごとんがたんごとん」などは、子どもに真似しやすい単語が多く、言葉の発達を促すねらいに適しています。読み聞かせの際は、読み手も子どもと一緒に単語を発して楽しみましょう。
2歳児の指導案
2歳児になると、少しずつ自分の思いを言葉にして伝えられるようになります。
絵本の読み聞かせ中に気になることがあると、ついつい口に出してしまうのも2歳児ならではの特徴です。
このような子どもの姿を予想し、保育者がどのように援助するのかを記載しておきましょう。
排泄や着替えなど、身の回りのことが自分でできるようになる2歳児には、生活習慣にまつわる絵本を選ぶのもおすすめです。歯ブラシや着替えが嫌いな子どもも、登場人物が進んでおこなう姿をみて、自分もやってみようと刺激を与えてくれます。「パンツのはきかた」「はみがきれっしゃしゅっぱつしんこう」「おやすみなさい」など生活を題材にした絵本はたくさんあるので、子どもの姿に合ったものを選んでみてくださいね。
ねらい
- 物語や登場人物に興味をもちながら読み聞かせを楽しむ
- 絵本を通して身の回りのことを自分でやってみようとする
環境構成
- 集中して見れるよう周りの環境を整える
- 絵本が見やすいように角度を調節する
子供の姿
- 絵本に出てくるものや言葉の意味がわかり声に出す
- 「もう一回見たい」などと声に出して催促する
保育者の援助
- 子どもの興味や気づきに共感しながら読み聞かせを進めていく
- 読み聞かせが終わったあとに、物語の内容やどんな登場人物がでてきたのかを話したりクイズに出したりして、楽しい気持ちで読み終えるようにする
2歳児になると、ストーリー性のある絵本も読めるようになります。言葉が育つ大事な時期なので、ゆっくり話したりページのめくるスピードを意識したりすることが大切です。また、抑揚はあまりつけず、自然に読み聞かせるようにしましょう。
3歳児の指導案
3歳児になると、絵本のストーリーに対して自分の思いや感じたことを伝えられるようになります。
自分の気持ちを相手に伝えることをねらいにして、読み聞かせをしてみてください。
また、集中力に個人差がでてくるため、長いストーリーの絵本を選ぶと途中で飽きてしまう子どももいます。
クラス全体が飽きずに最後まで楽しく見れる絵本を選びましょう。
3歳児は好奇心旺盛な時期。記憶力もよく、同じ絵本を何度も選んでしまうと「これ見たことある」「他のがいい」と言われてしまうこともあるので、絵本選びには注意してくださいね!
ねらい
- 絵本のストーリーを聞き、自分なりに感じたことを言葉で表現しようとする
環境構成
- 集中して見れるよう周りの環境を整える
- 絵本が見やすいように角度を調節する
子供の姿
- 物語に興味をもち集中してみる
- 絵本を通して感じたことを保育者に伝える
- 途中で飽きてしまい落ち着きがなくなる子どももいる
保育者の援助
- 絵本を見て感じたことを伝えられる場を設ける
- 一人ひとりの発言や思いを十分に受け止める
好奇心が強く、読み聞かせの最中にも「なんで?」「どうして?」という発言が増えます。読み聞かせの経験が少ないと、どう対応したらよいのか困ってしまうかもしれません。しかし、一人ひとりの疑問に答えているとストーリーが頭に入りずらく、子どもの集中力が途切れてしまいます。すべての疑問に答えることはせず、「なんでだろうね」と共感しながら読み聞かせを進めることに重点を当てましょう。
4歳児の指導案
絵本の好みがはっきりしてくるのが4歳児の特徴です。
指導案を作成する前に子どもたちの好みを把握し、クラス全体が興味をもって見れる絵本を選びましょう。
また、自己主張や友だちとの関係性へのこだわりが強くなり、「〇〇ちゃんの隣がいい」など、座る場所を巡ってトラブルが起きやすくなります。
このようなトラブルがあった際にどう対応するのかも予測し、指導案の配慮事項に記載しておきましょう。
ねらい
- 絵本の物語に興味をもち、イメージを膨らませる
環境構成
- 集中して見れるよう周りの環境を整える
- 絵本が見やすいように角度を調節する
好きな場所で読み聞かせをみる場合、場所を巡りトラブルが発生することも……。自分の席が決まっている園なら、地べたではなく指定された椅子で読み聞かせをするのも、場所のトラブルを回避するひとつの方法です。
子供の姿
- 物語からイメージしたことや感じたことを保育者や友だちに伝える
- 「〇〇くんの隣に座りたい」など、場所をめぐってトラブルが起きる
保育者の援助
- 絵本を見て感じたことを伝えられる場を設ける
- 一人ひとりの発言や思いから次の遊びや活動に発展させる
4歳児を含め、幼児クラスでは劇ごっこを主活動に取り入れることが多いです。親しみのある絵本は題材にしやすいので、そのまま劇遊びに発展させてみてもよいでしょう。「3びきのやぎのがらがらどん」「ももたろう」「おおきなかぶ」などは4歳児でも話が理解しやすく、楽しく取り入れられますよ。
5歳児の指導案
5歳児になるとより理解力が増すので、長いストーリーや昔話、季節に関するものなど、読み聞かせできる絵本のジャンルが広がります。
物事について考える力も身につくので、自然や環境などの身近な事柄を体験できる活動の導入になりそうな絵本を選んでみてもよいでしょう。
絵本の内容を深く理解するために、読み聞かせ後にクイズを出すのもおすすめです。
話の理解力や想像力が育つ5歳児には、声や身振り手振りだけで話を伝える素話もおすすめ。ハードルは高いですが、2〜3分程度の短い話ならチャレンジしやすいです。集中力や想像力を養うことをねらいにできますよ。
ねらい
- 言葉の面白さを知る
- 物語を通して自然現象や行事の由来などに興味をもつ
環境構成
- 集中して見れるよう周りの環境を整える
- 絵本が見やすいように角度を調節する
子供の姿
- 物語に興味をもち、自然や環境などの事柄について考えを言葉にする
- 途中で飽きてしまい喋り出す子どももいる
保育者の援助
- 読み聞かせ後にどう感じたか意見や思いに耳を傾ける
- さらにイメージが膨らませられるように活動を展開させる
自然にまつわる絵本には、海や太陽、雨とは何かを伝えている「ちきゅうはみんなのいえ」、泥団子作りに興味をもてる「どろだんご」などがあります。読み聞かせ後に園の周辺を散歩したり泥団子作りを活動に入れれば、より自然現象に関心がもてます。子どもたちの姿に合わせて、興味がもてそうな題材の絵本を選んでみてください。
先輩保育士からのワンポイントアドバイス!
絵本の読み聞かせをする際に、抑揚をつけて読むか読まないかで迷われるかもしれません。
実際にインターネットで調べても、抑揚をつけて読むことへの賛成派と反対派両者の意見があり、「結局どうしたらよいの?」と私も学生時代に迷った経験があります。
結論、抑揚はほどよくつける程度ならOKです。
抑揚をまったくつけずに淡々と読み進めるのは面白みに欠けてしまいますし、反対に登場人物になりきって演じたり声色を極端に変えてしまっても、子どもの想像力を掻き消してしまいます。
物語や登場人物の声捉え方は子どもの心の中でイメージすることが大切なので、読み手が子どもを楽しませようと張り切りすぎなくて大丈夫ですよ。
まとめ
絵本の読み聞かせの指導案について、各項目に書く内容や0歳児〜5歳児までのポイントなどをくわしくご紹介しました。
絵本の読み聞かせは、毎日の活動に取り入れる大切な時間なので、実習中に何度も挑戦して実践力を身につけましょう。
子どもの発達や成長に合わせて絵本選びや環境構成を考えるのが、指導案作りに欠かせないポイントです。
本記事に記載した指導案の例文も参考にして、子どもが絵本に親しみをもてるような指導案を書いてみてくださいね。
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