日本国内では少子化が進んでおり、保育士の方の中にはこのまま仕事を継続できるのかと心配している人もいるでしょう。
さらに、将来への不安を助長しているのが「責任の大きさに対して給料が安い」という現役保育士の方の声です。
実は保育士の資格や経験を活かせる職場は保育園以外にも数多くあり、2013年からは政府によって処遇改善が行われているため、将来性がないとは言い切れません。
本記事では、保育士を続けるか悩んでいる人向けに保育士の将来性や処遇改善について詳しく解説しています。
保育士に将来性はある?様々な観点から解説
確かに国内の現状は少子高齢化が進んでいるため、子どもの数は減っていくでしょう。しかし、子どもの数が減る=保育士に将来性がなくなる訳ではありません。
共働き世帯の増加により、保育ニーズは今後も高いと予想できます。さらに、保育の仕事はAI化ができず、人の手が必要となるでしょう。
他にも待遇改善など、さまざまな観点から保育士の将来性について解説します。
AIに取って代わられることがない
保育士の仕事は子ども一人一人に個別対応をしなければならず、AIでは代替できません。
事務作業などはICT化が可能ですが、園児や保護者などの人への対応は、性格、家庭状況、発達具合や感情を瞬時に判断して行動するスキルが求められます。
また、子どもの心身の発達を促すには人との関わりが大切となるため、保育には保育士が必要不可欠です。
他の業種が機械やAIに仕事を奪われている一方で、保育士は将来性がある職業だと言えるでしょう。
政府が保育士の待遇改善に力を入れている
2013年から政府による保育士の待遇改善が始まり、働く環境は徐々に良くなっています。
2015年には借り上げ社宅制度が始まり、同年から2022年にかけて3種類の処遇改善等加算が設けられました。
さらに、直近の2024年には保育士の配置基準が約76年ぶりに見直しとなっています。
未だに給与や業務量については改善を求める声も多いものの、今後も保育士の声を反映して待遇が改善されていく可能性は十分にあり得るでしょう。
保育への需要は無くなることはない
厚生労働省のデータを見ると共働き世帯の数は年々増加しています。
とくに子育て世代である25〜44歳の女性の就業者の割合は85%を超えており、保育へのニーズは今後も高い水準を維持すると考えられます。
さらに、在留外国人の人口も年々増えており、2023年6月末時点で0~5歳児の在留外国人は9万5千人です。
2023年の日本の出生数は73万弱と比較すると今後は在留外国人の園児の割合は増えていくでしょう。
参考:厚生労働省|共働き等世帯数の年次推移
参考:内閣府|結婚と家族をめぐる基礎データ
参考:政府統計|在留外国人統計
資格があることで別業種に活かせる
保育士の資格は保育園のみではなく他の業種でも活かせます。
とくに子どもと接する仕事をする業種では保育士の資格は大きな強みになるでしょう。
具体的には、ベビーシッター、インターナショナルスクール、学童、幼稚園などが挙げられます。
中でも幼稚園は指定保育士養成施設卒業者の就職先の15%を占めており、保育士の資格を存分に活かせる職場です。
資格があれば保育園以外のさまざまな業種で働けるため、保育士には将来性があると言えます。
様々な働き方の選択肢がある
保育士にはさまざまな雇用形態と施設の種類があり、多様な働き方の中から自分にあったものを選べます。
金銭面で問題がなければ必ずしも正社員で働く必要はなく、パートやアルバイトで気軽に保育に関わることが可能です。
また、大型から小規模、認可、認可外、院内、企業内など数多くある施設から職場を選べるのも保育士の利点です。
最近では役職も細分化され、充実した研修制度などによりキャリアアップの選択肢が広がっています。
保育士の仕事内容を詳しく解説
保育士の仕事内容は下記のとおりです。
- 園児の日常生活のお世話をする
- 園児に生活習慣を身につけさせる
- 園児の心身を発達させる
- 保護者とコミュニケーションをとる
- 地域の子育てをサポートする
- 施設の清掃、備品の管理をする
保育士は日常生活での体験を通して、子どもの年齢や発達に合わせた成長の手伝いを行います。
また、子どもと直接関わる保育だけでなく、保育日誌などに子どもの様子を記録したり保護者と連携したりすることも大事な仕事です。
厚生労働省が公表した保育所保育指針では、保育所の社会的責任として地域社会との交流や連携に努めると明記しています。
そのため、保育園に通う家庭だけではなく地域の子育てサポートも行います。
円滑な保育をするために施設内を清潔に保ち、必要な備品を管理するのも保育士の仕事です。
保育士にはキャリアアップ研修がある!その内容とは?
2017年のキャリアアップ研修の創設までは、保育士のキャリアパスは明確ではありませんでした。
キャリアアップ研修の創設によってリーダー育成の仕組みが確立され、園長および主任のみだった役職に新たに下記3つが追加されています。
- 副主任保育士
- 専門リーダー
- 職務分野別リーダ
保育士として一定以上の経験および研修を修了することで新しい役職に就くことが可能です。
キャリアアップ研修とは?
キャリアアップ研修とは、保育士の処遇改善、専門性向上やリーダーの育成を目的として2017年に制定されたものです。
自治体などが実施し、専門分野別研修・マネジメント研修の他に、新任やブランクがある保育士向けの保育実践研修があります。
受講後は全国で有効な修了証が発行されるため、転職や再就職時に研修修了のアピールが可能です。
専門性向上だけでなく給与アップにもつながるので、機会があれば積極的に受講していきましょう。
処遇改善手当とは?
処遇改善手当とは保育士の給与アップを目的として政府が補助金を出している制度で、I〜Ⅲの3種類が並行して運用されています。
具体的なひと月あたりの処遇改善手当の額は下記のとおりです。
種類 | 対象者 | 処遇改善手当の月額 |
---|---|---|
処遇改善等加算Ⅰ | 全職員 | 基礎分:6,000~3万6,000円 賃金改善要件分:1万8,000円 |
処遇改善等加算Ⅱ | 副主任保育士 専門リーダー 職務分野別リーダー | 副主任・専門リーダー:4万円 職務分野別リーダー:5,000円 |
処遇改善等加算Ⅲ | 全職員 | 9,000円 |
処遇改善等加算Ⅰは基礎分と賃金改善要件分の2種類があり、園によって支払われる金額が異なるため上記金額はあくまで目安です。
処遇改善等加算Ⅰの月額は保育士の平均給与約30万円を基に計算しました。
処遇改善等加算Ⅱは主任手当が4万円未満の場合、副主任と主任の月額給与が逆転する場合があり一部の園で問題となっています。
参考:政府統計|幼稚園・保育所・認定こども園等の経営実態調査
保育士の経験がある人が活躍できる職業
保育士の経験は多くの職場でニーズがあり、保育園以外でも活躍が可能です。
全く違う業種に転職するのも良いですが、保育の経験を活かせる方が就きやすく仕事にも慣れやすいでしょう。
本章では、転職時の参考となるように保育士の経験が活かせる職業を4種類紹介します。
大学講師
保育園の経験を活かせる職業の一つに、指定保育士養成施設に指定されている大学や短期大学の講師があります。
豊富な保育経験やスキルが必要となる一方で、教育面でも一定の資格が必要です。
養成施設の運営基準では「博士または修士の学位を保有し、研究に関する業績を持っている」や「教育や学問に関して業績がある教育経験者」など基準を設けています。
また、求人は多くないため頻繁に情報収集をする必要があります。
託児所・ベビーシッター
保育士の経験を最大限に活かせるのが託児所勤務やベビーシッターです。
とくに資格を持つ保育士は利用者からの信頼が厚く、高いニーズがあります。
仕事内容は子どもの保育であり、保育園での勤務時と大きな差がなく始めやすいため、おすすめです。
個別保育や少人数保育が基本なので余裕をもって業務できるのも魅力の一つでしょう。
ただし、利用者によっては早朝夜間や日曜祝日に対応するなど柔軟性が必要になってきます。
保育園運営会社の本社勤務
複数の保育施設を運営している会社であれば、スーパーバイザーという職業があります。
主な仕事内容は担当しているエリアの保育園へのサポートになるため、保育士の経験を存分に発揮できます。
スーパーバイザーの求人への応募や保育士から転向すれば職に就けるでしょう。
また、会社によっては総合保育士を採用しており、保育士を経験したあとに本社の総合職に転換が可能です。
総合保育士は保育士以外の職業にも興味があるなど、将来の選択肢を広げたい人におすすめです。
児童福祉施設
児童福祉施設の中には保育士の設置を必須としている施設もあり、保育園以外でも保育士の需要は高いと言えます。
具体的には、こども園、児童養護施設、児童発達支援センターなどは保育士の設置が必須です。
保育園と全く同じ仕事内容にはならないものの、子どもに向き合うという点では保育士の経験を十分に活かせるでしょう。
また、保育園では得られなかった専門知識の習得など、大きなやりがいを得られる職業です。
参考:e-Gov法令検索|児童福祉施設の設備及び運営に関する基準
まとめ
少子化が進んできているものの、共働き世帯の増加から保育ニーズは未だに多く、保育士の将来性はあると言えます。
AI化が進んだ現代でも保育の仕事には人の手が必要であり、保育士を求める職場は保育園に留まりません。
また、政府も保育士の処遇改善に力を入れており、今後も処遇改善が進む可能性は十分にあります。
現状に問題がなければ保育士を続けながら経験やスキルを積み、求められる保育士になれるように努めていきましょう。
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