子どもの定期検診や幼稚園、保育園の身体測定で、カウプ指数という文字を目にした方は多いでしょう。
カウプ指数とは、乳幼児の子どもの肥満度を表す数値です。
カウプ指数を知れば、子どもの体重管理がしやすくなり、良い健康状態を保つことにも繋がります。
今回はカウプ指数とはなにか、メリットやデメリット、計算方法ついて詳しく解説します。
お子さんの体重について悩みがある方や、保育士や幼稚園教諭の方は、ぜひ最後までご覧ください。
- カウプ指数は乳幼児の発育状態と肥満かどうかを知れる
- カウプ指数のメリットは簡単に計算できる点で、デメリットは詳しい肥満度までは分からない点
- 子どもの肥満を防ぐためには生活習慣を見直す必要がある
- 乳幼児期に肥満度が標準値よりも高くてもそれほど気にする必要はない
カウプ指数とは?カウプ指数の算出方法と判定基準
カウプ指数とは、乳幼児の子どもの健康状態を表す数値で、主に肥満度を判断する際に用いられます。
痩せているか太っているかがすぐに分かるので、体重管理がしやすくなるのが特徴。
生後3カ月から就学前までの子どもが対象となっていて、乳児の定期検診や身体測定などでも計算されます。
保育園や幼稚園でも園によっては計算するところもあるので、計算方法を知っておくと便利です。
ご自身でも計算できるため、お子さんの体重が気になっている方は、計算してみてください。
カウプ指数=体重(g)÷【身長(㎝)×身長(㎝)】×10
カウプ指数計算例
分かりやすいよう年齢別に計算を行いました。
①0歳4カ月 身長:65.2㎝ 体重:7145g
7145÷(65.2×65.2)×10=16.8
カウプ指数=16.8
②2歳6か月 身長:90㎝ 体重:15000g
15000÷(90×90)×10=18.5
カウプ指数=18.5
③5歳 身長:111㎝ 体重:15000g
15000÷(111×111)×10=12.1
カウプ指数=12.1
上記の式に当てはめて計算すれば、簡単にカウプ指数を求められます。
体重は㎏ではなく、gに変換して計算を行わなければならないので、注意しましょう。
カウプ指数の判定基準
厚生労働省が発表している資料によると、カウプ指数の標準値は以下の通りです。
体型 | 数値 |
---|---|
痩せ気味 | カウプ指数14以下 |
標準 | カウプ指数15~17 |
太り気味 | カウプ指数18以上 |
カウプ指数の基準値は年齢によって変化しますが、理由は0歳児と就学前の子どもとでは、体型に大きな違いがあるためです。
上記の基準値はあくまで参考程度に留めておきましょう。
乳幼児のカウプ指数正常範囲
年齢 | 正常な範囲とされる判定結果 |
---|---|
3か月〜1歳未満 | 16~18 |
1歳〜1歳6か月未満 | 15.5~17.5 |
1歳6か月〜3歳未満 | 15~17 |
3歳〜5歳まで | 14.5~16.5 |
学童期(6歳〜) | 18~22 |
上記のグラフからも分かるように、カウプ指数は年齢によって標準値が変化します。
3カ月~1歳未満は、乳児期で最も高い数値になっていますが、0歳児は個人差が大きいので、カウプ指数が標準よりも高くても、さほど心配する必要はありません。
成長曲線に沿って成長していれば、問題ないと判断されることが多いです。
カウプ指数はあくまで目安となる数値なので、過剰に数値にこだわらず、保健師や専門家の意見も参考にしてみましょう。
カウプ指数のメリット
- 子どもの発育を数値で判断できる
- 痩せているか太っているかがすぐに分かる
- 身長の差は関係ない
カウプ指数のメリットは上記の3つがあり、それぞれについて解説していきます。
まず一つ目は、子どもの発育状態を数値で判断できる点です。
カウプ指数が適用される生後3カ月の赤ちゃんは、母乳やミルクのみなので、栄養状態の把握が難しいですよね。
また、母乳やミルクをよく飲む子もいれば、あまり飲まない子もいます。
そこで、きちんと発育できているか判断するのが、カウプ指数です。
二つ目は、カウプ指数は発育状態だけではなく、子どもが痩せているか太っているかも知れます。
数値を見ればすぐに分かるので、体重管理もしやすくなるでしょう。
最後に、カウプ指数は身長の差は数値に関係しないため、身長が低いからカウプ指数も低くなるということはありません。
カウプ指数のデメリット
- 年齢に制限がある
- 詳しい発育状態までは分からない
カウプ指数のデメリットは、年齢に制限がある点です。
生後3カ月から就学前までの子どもにしか適用されないため、長期的に調べることはできません。
もう一つのデメリットは、カウプ指数だけでは全ての発育状態を判断できない点です。
カウプ指数はあくまで簡単な発育状態と肥満度を調べる数値なので、細かい発育状態を知りたいとなると、以下の指標も一緒に調べる必要があります。
- 身体発育曲線
- 肥満度
身体発育曲線と肥満度の詳しい情報については、厚生労働省が出している「乳幼児身体発育評価マニュアル」参考にしてみてください。
カウプ指数が正常範囲外のときの対処法
カウプ指数が正常範囲外の時の対処法は、以下があります。
- 定期的な健康診断を受ける
- バランスの良い食事と運動
- 生活リズムを整える
カウプ指数が正常範囲から外れてしまったら、不安になる保護者がほとんどだと思います。
しかし、カウプ指数だけで肥満と判断するのは誤りですので、詳しく調べる必要があります。
また、正常値から外れていても、子どもの体型は変化しやすいため、上記の対処法で改善されることも。
肥満対策については後で詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。
乳幼児期の肥満対策が重要視される理由
現代では、乳幼児期の肥満対策が医学会で重要視されています。
理由は、日本小児内分泌学会によると小児肥満の40%が将来の成人肥満に繋がると発表しているからです。
そのため、子どもの年齢が小さいうちに肥満対策を行えば、成人肥満になるリスクを下げられます。
乳幼児の肥満は、成人肥満だけではなく、生活習慣病や精神疾患になるリスクも上がってしまいます。
健康な大人に成長するためにも、幼い時期からしっかいと対策を行いましょう。
生活習慣病になるリスクがある
乳幼児の肥満は、将来生活習慣病になるリスクが上がります。
生活習慣病とは、運動や休養、喫煙、飲酒など様々な生活習慣によって発症する疾患です。がんや心臓病、脳卒中も生活習慣病に含まれます。
生活習慣病は、日頃の生活習慣によって引き起こされる病気なので、生活を改善すれば防ぐことができます。
基本的な生活習慣は、保育園や幼稚園を通じて、乳幼児期から身に付けます。
さらに、学校教育を経て、大人まで同じ習慣が繰り返されていきますので、健康で過ごすためには正しい生活習慣が重要です。
精神的な健康問題を引き起こすリスクがある
近年の研究で、肥満の方は生活習慣病だけではなく、精神疾患にかかりやすいことが分かってきました。
肥満の方がかかりやすい精神疾患は以下の通りです。
- うつ病
- 双極性障害
- 不安障害
- 摂食障害
上記の精神疾患の中で、肥満の方が最もかかりやすい疾患は、うつ病と言われています。
理由は、肥満による体の不自由さだけではなく、社会が及ぼす影響も関係しているからです。
そのため、肥満であることは体だけではなく、心も不調になるリスクが上がります。
将来、幸福感を持って生活するためにも、肥満予防は重要であると言えます。
さまざまな体調不良を引き起こす原因になる
最後に、肥満は様々な体調不良を起こす原因となってしまいます。
上記で説明した生活習慣病や精神疾患だけではなく、以下のような健康被害にも影響があります。
- 睡眠時無呼吸症候群
- 不妊・月経異常
- 関節などの不調
がんや脳梗塞などの代表的な生活習慣病だけではなく、上記のような症状に悩んでいる方も多いです。
特に女性であれば、月経異常を引き起こすリスクが上がるため、将来的には不妊に繋がってしまいます。
関節などの不調もあれば、身体が自由に動かしづらくなり、日頃の生活にも支障をきたします。
乳幼児期の肥満対策
乳児期の肥満は、3歳以降の幼児期には自然に改善されていくのが特徴です。
これを「生理的な肥満」と言い、将来も肥満になる確率は少ないと言われています。
しかし、幼児期に肥満と言われた場合は、小学生以降も肥満になるリスクが高いです。
将来の肥満を防ぐために、乳幼児期から取り組める対策をご紹介します。
栄養バランスの摂れた食事と運動
乳幼児期の肥満の特徴は、1回の食事に対しての栄養バランスが偏っている点です。
また、夕食や間食の量が多いのが原因の一つと言われています。
- 基本は1日3回の食事と間食は1回
- 献立は一汁三菜を心がける
- 塩分が多い加工品などは避ける
- 間食の目安 乳児:100キロカロリー 幼児:200キロカロリー
運動不足も肥満になるリスクが上がるので、適度な運動が必要です。
平日は幼稚園や保育園に通っているため、戸外遊びや運動遊びを通じて、体を動かす時間は多いと思います。
しかし、現代は公園の減少やゲームなどの影響により、休日は外で遊ぶ機会が少ない子どもが増加。
肥満を防ぐためにも積極的に外で遊ぶ時間を増やすことが重要と言えます。
健康的な生活習慣の獲得
健康的な生活習慣を獲得すれば肥満を防げますが、何が原因で肥満になりやすいのかを解説します。
幼児肥満になりやすくする要因は以下の通りです。
- 睡眠不足
- 朝食を食べない
- 夕食が遅い
- 早食い
- 長時間のゲームやテレビ
上記のような生活習慣を繰り返すと、将来も肥満のリスクが高まります。
乳幼児期に培われた悪い生活習慣は、将来にも繋がっていくので、健康的な生活習慣を身に付けることが大切です。
- 早寝早起き
- バランスの良い食生活
- 適度な運動
子どもの生活習慣は家族の影響を受けやすいため、家族全員で規則正しい生活を送るようにしましょう。
定期的に乳幼児検診を受ける
乳幼児肥満を防ぐためには、医療機関などで定期的に乳幼児検診を受けましょう。
厚生労働省によると、乳幼児の1歳半と3歳児検診では、肥満予防の指導を行っています。
- 乳児検診時に成長曲線が97パーセンタイル値を超える場合
- 3歳児検診において不適切な体重増加がみられる場合
乳児期に高度な肥満が認められる場合は、遺伝性によるものが多いため、注意を促します。
3歳児以降は活発な運動量により、スリムな体型に変化していきますが、この時に異常な体重増加が見られる場合は、食事などの生活習慣に指導が入ります。
厚生労働省によると、両親が肥満の場合は、通常の体型の人よりも、10倍の確立で肥満になる可能性が高いと記載。
乳幼児健診で肥満と判断された場合は、定期的な検診を受けながら、家庭での体重管理に気を付ける必要があります。
カウプ指数以外にも気をつけておきたい健康指標
乳幼児肥満において、カウプ指数以外にも気を付けておくべき健康指標があります。
カウプ指数は、あくまで簡単な発育状態と肥満度を示すものなので、カウプ指数だけでは肥満と判断されにくいです。
そこで、カウプ指数以外に知っておくべき健康指標は以下の通りです。
- BMI
- 成長曲線
- ローレル指数
それぞれの健康指標について、下記で詳しく解説していきますね。
①BMI
BMIとは、Body Mass Index(ボディマスインデックス)の略で、肥満や低体重かどうかを知るための指標です。
BMI=体重(㎏)÷【身長(m)×身長(m)】
BMIは主に大人の肥満度に用いられることが多い指標なので、乳幼児期にはあまり使用されません。
簡単に言えば、大人バージョンのカウプ指数がBMIです。
BMIの数値が高ければ高いほど、肥満と診断されますので、注意が必要となります。
②成長曲線
成長曲線とは、子どもの発育の状態を目的として、身長と体重をグラフにしたものです。
成長曲線は、別名発育曲線とも言われており、機関によって呼び方が変わります。
- 厚生労働省や文部科学省では「発育曲線」と呼ぶ
- 小児科では「成長曲線」と呼ぶ
ちなみに母子手帳には発育曲線と記載されていますが、どちらの呼び方も覚えておけば便利です。
身長や体重の成長スピードは、乳児期が一番大きくて、次は思春期と呼ばれる時期になります。
しかし、成長は個人差があり、個々が適性数値を満たしているかどうかを判断するために、成長曲線が使われます。
③ローレル指数
ローレル指数とは、小学生から中学生までの子どもの肥満度を示す指標です。
ローレル指数=体重(㎏)÷【身長(m)×身長(m)×身長(m)】×10
ローレル指数は、BMIやカウプ指数と違って、体重を身長の3乗で割るので計算する際には気を付けましょう。
ローレル指数の判定基準は以下の通りです。
体系 | 数値 |
---|---|
痩せ気味 | 100~115未満 |
普通 | 115~145未満 |
太り気味 | 145~160未満 |
太りすぎ | 160以上 |
今までご紹介した指標をまとめると以下の通りになります。
- BMIは大人の肥満度を示す
- カウプ指数は乳幼児の肥満度を示す
- ローレル指数は小中学生の肥満度を示す
ローレル指数もあくまで一つの数値なので、それほど気にしすぎないようにしましょう。
まとめ
今回は、お母さんや保育士さんなら一度は聞いたことがあるであろう、カウプ指数について解説しました。
健康診断や、自分で計算してカウプ指数が標準より高かった時、気にする方は多いでしょう。
しかし、カウプ指数の数値だけで肥満と断定するのはおすすめできません。
乳幼児期は、食生活や活動量によって数値が変化しやすいため、それほど気にしなくても大丈夫です。
どうしても気になる方は、医療機関や専門家による判断をおすすめします。
子どもの肥満を防ぐためには、日頃の生活習慣が重要となりますので、規則正しく健康的な生活を送れるようにしましょう。
コメント