保育園以外の児童福祉施設で働く施設保育士は、通常の保育園で働く保育士では得られない、やりがいを感じられる職業です。
施設保育士への就職が気になる方の中には、「施設保育士の詳しい仕事内容が分からない」「通常の保育園で働くより大変なのかな」など、疑問や不安を感じる方もいるでしょう。
本記事では施設保育士とは何か、仕事内容や魅力、求められるスキルなどを詳しくご紹介します。
施設保育士の仕事に興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
- 施設保育士は、児童養護施設や乳児院などの児童福祉施設で働く保育士
- 子どもの身の回りの援助だけでなく、心のサポートや自立支援など業務は幅広い
- 保育士資格があれば働くことが可能
- コミュニケーション能力以外にも、忍耐力や包容力などのスキルや児童心理に関する知識が必要

子どもと親密な関係を築き、より成長を身近に感じられるのが施設保育士の魅力です。この機会に施設保育士の理解を深めてみてくださいね。


ゆぴ 元保育士ライター
保育士歴9年。ピアノが得意で、子どもと一緒に歌をうたうことが好きでした。現在は、専業主婦兼Webライターとして活動中です。保育士や保育士を目指す方の、力になれるような記事を執筆しています。
施設保育士とは?概要と働く場所
施設保育士とは、保育園以外の児童福祉施設で子どもの世話をする保育士を指します。
施設保育士が働く施設の一部を、下記にまとめました。
- 児童養護施設
- 乳児院
- 助産施設
- 知的障害児施設
- 知的障害児通園施設
- 盲ろうあ児施設
- 肢体不自由児施設
- 重症心身障害児施設
- 児童発達支援センター
- 児童自立支援施設
- 母子生活支援施設
通常の保育園と同じように、施設保育士は食事や着替え、排泄など子どもの日常生活の援助を行います。
施設保育士が働く場所
先述した通り、施設保育士はあらゆる児童福祉施設での勤務が可能です。
ここでは、施設保育士が働く児童福祉施設の中から、乳児院・児童養護施設・児童自立支援施設・障がい児入所施設の4つをピックアップし、どのような施設なのかをご紹介します。
興味があり勤務してみたい施設はあるか、参考にしてみてください。
働く場所 | どんな施設? |
---|---|
乳児院 | 保護者の養育が受けられない乳幼児を養育する。子育て支援を行う短期利用から、子どもの養育・保護者支援・退所後のアフターケアなどを行う長所利用まで乳幼児の在所期間は様々。 |
児童養護施設 | 保護者のいない児童や保護者の監護が適当でない児童に対し、生活環境の提供や生活指導などを通し、心身の健やかな成長とその自立を支援する。虐待を受けた子や障がいを持つ子が過半数を占めており、専門的なケアが必要とされている。 |
児童自立支援施設 | 非行問題や家庭環境が原因で不良行為をする、又はする恐れのある児童に対し、個々の状況に合わせた指導を行う。また、児童の自立を支援し、退所後も相談や援助などのアフターケアも図る。 |
障がい児入所施設 | 障がいがある児童に対し、日常生活の指導や必要な知識・技能を付与する。発達支援機能・自立支援機能・社会的養護機能・地域支援機能4つの機能を担う役割がある。 |
施設保育士の仕事内容
施設保育士の仕事内容の一部を、以下にまとめました。
- 食事、排泄、入浴、着替えなど身の回りの援助
- 子どもの心のケア
- 洗濯、掃除、集団行動など生きていくうえで必要な知識を教える
- 自立して生活できるように援助する
施設保育士が勤務する児童福祉施設の多くが入所施設のため、当直や夜勤などのシフト制で24時間子どもたちを見守ります。
通常の保育園で勤務する保育士と比べ、昼夜を問わずに子どもの世話をするのが施設保育士の1番の違いであることを理解しておきましょう。
乳児院での施設保育士の仕事
乳児院での施設保育士の主な仕事内容は、以下の通りです。
- 子どもの身の回りのサポート
- 保護者のサポート
- 親子のサポート
乳児院では、主に0歳児〜2歳児が生活します。
365日24時間施設で過ごすので、ミルクをあげる、夜泣きの対応、生活の中でのマナーやしつけを行うなど、保護者の役割も果たさなければなりません。
また、子どもを少しでも早く保護者の元に渡すのも施設保育士の大切な仕事です。
乳児院に入所している子は、退所後は実の保護者や里親の元で暮らします。
そのため、保護者や里親と面談し、相談に乗ったりアドバイスをしたりして、子どもが安心した環境下で暮らせるようにサポートを行います。
児童養護施設での施設保育士の仕事
児童養護施設での施設保育士の仕事内容は、以下の通りです。
- 子どもの身の回りのサポート
- 診察や予防接種など病院の付き添い
- 幼稚園や学校との連携、行事への参加
- 衣類や生活用品などの買い出し
児童養護施設も、乳児院同様に365日24時間のサポートが必要です。
子どもの身の回りの世話はもちろん、宿題の確認や病院の付き添い、日用品の買い出しなど、ときには保護者の役割も果たします。
施設で働く保育士としてだけでなく、ときには本気で叱る、相談に乗る、冗談を言い合うなど、本当の親子のように愛情を持って接する心構えが必要です。
障がい児入所施設での施設保育士の仕事
障がい児入所施設での施設保育士の仕事内容は、以下の通りです。
- 日常生活の援助
- 支援計画の作成
- 保健所や児童発達支援センターなどの機関との連携
障がい児入所施設は福祉型・医療型の2種類があり、共に自宅で日常生活を送ることが困難な子どもが生活しています。
福祉型障害児入所施設では、障がいのある子どもに対し、日常生活における基本的動作や集団生活への適応訓練を行なっています。
一方の医療型障害児入所施設は、自閉症児・肢体不自由児・重症心身障がい児などが入所し、発達支援のみならず、児童の治療を並行して行うのが特徴です。
子ども一人ひとりの姿を捉えて、自立支援を目的に支援計画を作成します。
施設保育士になるために必要な資格
施設保育士になるためには、基本的に保育士資格が必要です。
また、以下のような専門的な資格を取得しておくと役立つ場合もあります。
資格名 | 概要 |
---|---|
社会福祉士 | 日常生活に困難を抱えている相談者の支援やサポートを行う。国家資格が必要。 |
児童指導員任用資格 | 児童養護施設、障害児施設などで生活する子どもたちを援助、育成する。児童福祉施設で2年以上の実務経験があれば取得可能。 |
保健児童ソーシャルワーカー | いじめや虐待、不登校などの様々な問題を抱えた子どもたちを支援する。民間資格。 |
赤十字幼児安全法支援員 | 子どもの健やかな生活を守るために、起こりやすい事故や病気の正しい知識を身につける資格。支援員養成講習の受講で取得可能。 |
保育士経験者が解説!施設保育士の魅力
施設保育士として働くと、通常の保育園で働く保育士とはまた異なる魅力を感じられます。
ここでは、乳児院と肢体不自由児施設で実習の経験がある元保育士の私が感じた、施設保育士の魅力を3つ挙げました。
施設保育士に興味のある方は、参考にしてみてください。
乳児保育や障がい児保育の専門知識を深められる
施設保育士として働くと、乳児保育や障がい児保育の専門知識を深められます。
乳児院や肢体不自由児施設では、通常の保育園では預かる機会の少ない産まれて間もない乳児や、身体機能に障がいを持つ子どもの世話をします。
初めはどうかかわれば良いのか戸惑うこともありましたが、周りの保育士の保育を間近で見たり書籍を参考にしたりして、知識やスキルを磨いていきました。
乳児保育や障がい児保育の専門知識を深めていくことで、保育士としての経験値も上がったように感じます。
責任感が強くやりがいが大きい
責任感が強く、やりがいが大きいのも施設保育士の魅力の一つです。
乳児院では、保育者以外に保護者の役割も果たす必要があるため、通常の保育士以上に責任感を強く感じました。
怪我や病気をした場合でも、職員同士で連携をとり責任を持って対応しなければなりません。
命を守る使命感がさらに強まるので気も張りますが、その分著しい子どもの成長を見守ることができ、やりがいが大きいです。
歩けなかった子が歩いた、苦手な食材を食べられるようになったなど、子どもの成長を感じるたびに自分の子どものように喜んだ記憶があります。
他の専門職員との連携を図りながら成長を見守れる
他の専門職員との連携を図りながら成長を見守れるのも、施設保育士ならではの魅力です。
肢体不自由児施設で実習を行なった際に、保育士や看護師以外にも作業療法士や理学療法士、児童指導員など、専門的な分野のスキルを持つ職員の方と働く機会がありました。
上肢や体幹など体のリハビリは、専門知識のある作業療法士や理学療法士の方のアドバイスやサポートが必要です。
他の職員の方と連携を図りながら、一人ひとりの支援計画を立てたり成長を見届けられたりでき、やりがいを感じました。
施設保育士の大変さやむずかしさ
施設保育士には、働く楽しさ・魅力がある一方で、大変さやむずかしさもあります。
精神的な不安や障がいなどを抱えている子どもの世話をするには、それなりの体力や覚悟も必要であり、軽い気持ちで働くことは許されません。
施設保育士勤務の希望がある方は、事前に必ず大変さやむずかしさも把握し、本当に自分は施設保育士に向いているのかを確認しておきましょう。
子どもの人生に大きく関わる責任の重たさ
一つ目に、子どもの人生に大きく関わる責任の重たさが挙げられます。
施設保育士は、保育者だけでなく保護者の役割も担います。
保育者の性格や言動、物事の考え方などの影響を子どもに与えるので、責任も重たく感じるでしょう。
その反面、子どもと関わる時間が多くなり、保育者として関わる以上に子ども一人ひとりと深く関われますよ。
子どもの成長や自立を側で見届けられるのも、施設保育士のやりがいの一つです。
生活指導など保育だけでなく業務範囲が広い
施設保育士は、生活指導以外などの保育だけでなく業務範囲が広いです。
- 一人ひとりの心のケア
- 掃除や生活、集団行動のルールなど社会的マナーを学ばせる
- 自立できるように支援する
- 退所後のサポート
- 掃除・洗濯・料理などのハウスピーキング
身の回りの援助以外にも、買い物でのお金の使い方や洗濯の仕方など、日常生活に必要な知識やルールを教える必要があります。
子どもが自立して生活できるようにあらゆる面でサポートする必要があり大変ですが、少しずつできることが増えていく過程を見れるとうれしさを感じますよ。
身体的・精神的負担が大きい
身体的・精神的負担も大きいのが施設保育士のむずかしさです。
乳児院や児童養護施設など24時間体制の施設では、夜勤や土日出勤もあります。
入浴の援助や夜泣きの対応など、通常の保育園ではしない業務が増えるだけでなく、自身の生活リズムも崩れるため、身体的にも精神的にも負担がかかりやすいです。
しかし、夜勤手当や福利厚生が充実している施設が多いので、待遇面では働くモチベーションを保ちやすいですよ。
子どもと信頼関係を構築するむずかしさ
子どもと信頼関係を構築する難しさもあります。
施設には、保護者からの愛情不足や十分な生活環境下で生活ができずに、心に傷を負った子どもも入所しています。
そのため、関係を深めようとしても無視されたり、暴言を吐かれたりとなかなか子どもから心を開いてくれないケースも多いです。
打ち解けるまでに時間がかかり精神的に負担もかかりますが、その分子どもと打ち解けられるとやりがいを感じられますよ。
施設保育士の給与・求人例
施設保育士の給与や求人例が気になる方も多いと思います。
ここでは、実際に募集されている児童養護施設で働く施設保育士の求人をご紹介するので、給与や賞与などの詳しい情報が知りたい方はぜひ参考にしてみてください。
項目 | 児童養護施設の施設保育士(例) |
---|---|
雇用形態 | 正社員 |
給与 | 月給26万円〜28万円 |
手当・賞与 | 賞与・昇給あり(年1回) |
勤務時間 | 日勤:12:30~21:30 夜勤:13:00~翌15:00(月5~6回) |
休日・休暇 | 週休2日制 不定期シフト制 4週8休 年間110日 有給休暇(初年度12日) 病気休暇 特別休暇(結婚、忌引、出産など) |
福利厚生・待遇 | 雇用保険 労災保険 健康保険 厚生年金 職員共済会 退職金制度育児・介護休業制度 育児・介護短時間勤務制度等 慶弔見舞金 勤続表彰制度 リフレッシュ休暇制度 資格取得支援制度 福利厚生サービス(リロクラブ) |
応募資格 | 必須:保育士/幼稚園教諭第一種/幼稚園教諭第二種/児童指導員任用資格/小学校教諭普通免許/中学校教諭普通免許 |
一般的な保育園に勤める保育士の求人と比較すると、施設保育士の給与は高いでしょう。
児童心理などの専門的な知識が必要であり、精神面での負担や夜勤があることなどが、高い給与に繋がっていると考えられます。
施設保育士が求められるスキル
施設保育士には、通常の保育士として働く以外にも、以下のような専門的なスキルが求められます。
具体的にどのような場面で必要になるのかを、それぞれ詳しくご紹介します。
包容力や忍耐力
通常の保育士以上に大切なのが、包容力や忍耐力です。
施設保育士に入所している子どもは、何かしらの事情で親元を離れて暮らしているため、情緒不安定だったり暴力や暴言に怯えていたりするケースもあるでしょう。
そのような子どもに対し、なかなか心を開いてくれなくても忍耐強く向き合い、愛情をしっかり伝えていくことが大事です。
心身に傷ついた子どもを助けてあげたい気持ちをもって接しられる人が、施設保育士に向いています。
心のケアなど児童心理に関する知識
心に何かしらの傷を負っている子どもには、心のケアなどの児童心理に関する知識が役立ちます。
子どもの心理に役立つ資格は、以下のように様々な種類があります。
- 子供心理カウンセラー
- チャイルド心理カウンセラー
- チャイルドカウンセラー
- 家庭療法カウンセラー
- 子育て心理アドバイザー
- 臨床発達心理士
- 公認心理士
これらの資格は、通信講座で取得可能なものもあるので、気になる資格があれば勉強して子どものサポートに役立てましょう。
コミュニケーション能力
コミュニケーション能力は、子どもと意思疎通をとるにはもちろん、職員間での情報共有のためにも必要なスキルです。
施設保育士は、以下のように様々な人とのコミュニケーションが必要です。
- 子どもとのコミュニケーション
- 保護者とのコミュニケーション
- 職員間のコミュニケーション
- 他の福祉機関の職員とのコミュニケーション
円滑なコミュニケーションをとるためには、相手の話を聞く・相手に合わせて話す・相手の意見を受け入れるなどがポイントになります。
積極的にコミュニケーションをとり、質の良い保育を提供することが施設保育士に求められます。
まとめ
施設保育士について、仕事内容やむずかしさ、必要なスキルなどをご紹介しました。
体力だけでなく精神的にも負担がかかる職業ですが、その分子どもと深く関われて著しい成長を見届けられる、やりがいのある仕事です。
家庭環境や愛情問題などで親元を離れて暮らす子どもは年々増加しており、施設保育士の需要も高まっています。
子どもが好きなのはもちろん、親の代わりに愛情を注いで接することができる人は、ぜひ施設保育士として働くことを検討してみてくださいね。
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