保育士は離職率が高いといわれ、近年は保育士不足が理由で賃金引き上げや保育士数の配置の見直しなどがありました。
なぜ、保育士は退職してしまうのでしょう。
この記事では保育士が退職してしまう理由や退職する際の伝え方などを詳しく解説していきます。
最後まで読むことで、勤めている保育園を退職し、新しい一歩を踏み出せるでしょう。
保育士のよくある退職理由7選
保育士が退職する理由は以下の通りです。
保育士は給料が安く、家に持ち帰りの仕事もあり、さらには女性が多い職場であることが退職理由につながっています。
上記の理由は、東京都の保育士実態調査をもとにしており、どうして保育士が退職してしまうのかを詳しく解説していきます。
保育士を退職しようと考えている人は、自分を見つめ直すきっかけになるでしょう。
【退職理由①】給料が安い
厚生労働省の調査によると、保育士の平均年収は約391万円です。
全国の平均給料の水準が485万円のため、年間で94万円もの差があり、上記の実態調査の資料では、保育士が非常に不満と感じている項目の中で、最も多い割合を示したのが給料でした。
給料が安いと、家賃や食費などの生活費でなくなり、自分がリフレッシュするためのお金が手元にありません。
また、老後のために少ない給料を貯蓄する保育士もいます。
こうした背景から、給料が少ないために気持ちの切り替えができず、日々の仕事でイライラしたり、気持ちが滅入ったりすることで退職を考える保育士がいるのです。
【退職理由②】仕事量が多い
保育士の仕事量はとても多いです。
仕事内容は、子どもを見守るだけではなく、指導案の作成、子どもの成長記録、行事の計画や準備など多岐にわたります。
また、そういった事務作業は子どもたちのお昼寝時間にしか時間をとることはできません。
結局、時間内に仕事が終わらずに、家に持ち帰って仕事をする保育士が多いのが現状です。
家に帰っても仕事、朝起きたらまた仕事と繰り返していくうちに、保育士という職業に嫌気がさしてくるため、退職を考える保育士がでてきます。
【退職理由③】労働時間が長い
保育士の労働時間は長いです。
保育士は休憩時間がありません。法律上はとるべきなのですが、休憩時間は子どものお昼寝中にとる園が多いでしょう。
その間に連絡帳を書いたり制作の準備をしたりするのが保育士です。
仕事が間に合わないから、休憩時間にするしかありません。
また、お昼寝中は仕事に集中できず、呼吸チェックや室温の調整、トイレにいく子どもの対応もあります。
他業種と比べ、休憩中でも落ち着かないのが保育士です。
【退職理由④】職場の人間関係
保育士を辞めたことがある人で、最も多い理由が職場の人間関係です。
保育園の9割は女性のため、保育士は女性社会の職場環境ですが、園内で仲のいい保育士同士がグループをつくって、うわさ話をしたり、陰口をきいたりします。
陰口やうわさ話の多い保育園は、職場での人間関係が悪くなり、自分を守るため、一緒になって保育士や子ども、保護者のうわさ話してしまう風潮があります。
そうした背景から人間関係が悪くなりやすく、同僚や先輩に会いたくないなどと感じて保育園を退職しようとするのです。
【退職理由⑤】他業種への興味
保育士をしていると、他業種への興味がわきます。
なぜなら、保育園の中でしか働けない人が多かったからです。
保育士証は国家資格であり、保育園で働くためには必要な資格ですが、逆に保育園でしか働けないと思い込んでしまうようです。
現在は、保育士でもベビーシッターや子育てコーチング、保育士が役立つシアターやペープサートなどを販売することができます。
また、ネイルなどの美容・ファッションへ興味をもち、違う業種へチャレンジする時代になってきているため、退職して新しいことに挑戦する保育士も増えています。
【退職理由⑥】職業適正に対する不安
保育士への職業適性に対する不安も退職理由のひとつです。
保育士の仕事は子どもが相手なので、思い通りに対処できないことも少なくありません。
日々の反省や苛立ち、もっと上手な声掛けができたのではないかなど自己嫌悪になる保育士は多くいます。
例えば、子どもと関わる際に自分の声掛けには不機嫌になったのに、他の保育士には気持ちを打ち明けてくれたときです。
子どもは保育士をよく観察しているため、人で判断することがあります。
多くの保育士は理不尽に感じてしまうでしょう。
そうすると自分は保育士に向いていないと感じ、追い込まれて退職を決意する保育士もいるのです。
【退職理由⑦】保護者対応の大変さ
保護者対応は大変で、多くの保育士が頭を悩ませています。
普段から関係を築く努力をしている保育士ですが、どうしても保護者にとって嫌なことを伝える場面があるのです。
友達を怪我させてしまったときや、発達相談の話などは、保護者の気持ちを汲み取れる保育士だからこそ、気を使う場面であり、慎重にならなくてはいけません。
どんなに配慮しても保護者にとっては、我が子が特別なため、ひどく落ち込んでしまったり、保育士に厳しい言葉を言ったりすることもあるでしょう。
保護者対応のむずかしさや大変さを感じ、中には気まずい雰囲気になってしまうことで保育園を退職するケースもあります。
保育士から異業種へ転職する退職理由
保育士が異業種へ転職するための退職理由は以下の通りです。
- 在宅ワークで子どもとの時間を増やしたい
- やってみたかったことへチャレンジしたい
- 配偶者の会社を手伝うことになった
保育士から異業種に転職するためには、切実な思いが必要です。
子どもとの時間を増やすために在宅でフリーランスをする、ネイルやおしゃれを勉強したいからアパレル業界へ転職をしたいなど、自分で明確な理由をつけることで、異業種への転職を成功させている保育士もいます。
一般的にいわれている保育士が向いている職業は、販売、サービス業、イベント業、個人でするベビーシッター、アパレル、美容などです。
上記以外でも、保育士はコミュニケーション能力や体力、企画力などがあるため、さまざまな職種で保育士経験が活かせます。
保育士が退職を考えたら準備するべきこと
保育士が退職を考えたときに準備すべきことは以下の通りです。
自分の中で退職の意志が固まったら、すべきことは行動です。
退職しようとしても行動をしないと、いきなり辞めたいことを伝えたら保育園も困りますし、自分も精神的にきつくなります。
すぐに行動に移すのではなく、余裕をもって計画的に動くことがおすすめです。
これから退職するにあたって迷惑をかけないように円満退職するためのポイントを解説していきます。
退職理由を決める
まずは退職理由を決めましょう。
「給料が安いから」「先生から陰口を言われた」など、不満を伝えて辞めるよりも希望にみちた理由の言い回しを考えます。
そのほうが、気持ちよく退職でき、次の就職先で面接の志望動機にもなり得るから一石二鳥です。
たとえば、以前から憧れていた保育をしてみたいと思っていたら、その保育を取り入れている園に知り合いがいて、誘ってもらったなど、エピソードを伝えると退職の理由として話しやすいです。
退職理由をしっかりと決めることで、気持ちよく保育園を辞められます。
退職時期を逆算して決める
退職時期は退職したい日から逆算してスケジュールを組みましょう。
すぐに退職したいと思っても、保育園は辞めた保育士の補充をしなければなりません。
また、衝動的に辞めてしまうと転職活動をしていないため、今後の収入源に不安が残ります。
転職時期や退職の相談時期、引き継ぎなどを考えてスケジュールを組んでおくと円満に辞められるでしょう。
しかし、どうしても精神的に無理な場合は遠慮せずに、すぐに退職の意思を示してください。
退職希望日の3ヶ月前までに退職の意思を伝える
退職することは、退職希望日の3ヶ月前には伝えておきましょう。
前述しましたが、保育園は辞める保育士の補充をしないといけません。
すぐに保育士が補充できれば良いですが、保育園側にとっても保育士なら誰でも良いわけでなく、保育園にあった保育士を選ぶでしょう。
募集に面接、引き継ぎなどを考えると、退職を伝えるタイミングを間違えると迷惑をかけてしまいます。
最悪の場合は、退職しないで欲しいと引き止められる場合もあるため、退職希望日の3ヶ月前には退職の意思を伝えてください。
職場への退職の伝え方
職場への退職の伝え方を解説します。
同僚に相談するか、先に園長に伝えるべきかと悩む人もいるでしょう。
ここでは、誰に伝えるか、どのように退職手続きをするのか、もし引き止められたらどう対応するかを詳しくお伝えします。
安心して退職まで進めたい人は、しっかり確認しましょう。
誰にどの順番で伝えるべき?
まず始めに退職を伝えるべき相手は、信頼できる同僚で、その次に園長か主任に相談し、最後に園の職員達に伝えましょう。
信頼できる同僚が、最初の理由は応援してくれるからです。
先に応援され励まされることで、退職への道に進もうと決意し、相談したことで安心できます。
信頼できる同僚とは、退職することを周りに軽々しく伝えない同僚のことです。
信頼できる保育士が周りにいない場合は、園長か主任に伝えましょう。
勤めている保育園で、園長か主任どちらから先に相談するか変わります。
園長が主任に相談しなかったことを、主任の管理不足と判断するような人なら、まず主任に相談してください。
目指すのは円満退職のため、自分の動き方で職場の人間関係にも影響があることを知っておきましょう。
退職願の出し方
退職願は退職の意思を示すときに渡します。
退職願を提出する際に気をつけることが、園長に事前に時間をとってもらうことです。
園長は、事務や会議、園の方針について実務を行っているため忙しいです。
また、時間の約束をせずに退職願を出してしまうと園長の印象は悪くなり、円満退職とはいかなくなる場合もあります。
退職願を出すときは、園長としっかりと時間の約束をしてから出しましょう。
退職願と退職届は異なり、退職届は退職日の1ヶ月前に出すのがマナーです。文字の間違えには注意してください。
退職を引き止められた時の対処法
退職を引き止められた場合は、自分の気持ちをもう一度、丁寧に伝えましょう。
引き止めたい場合は、退職しようとしている保育士が必要な存在か、保育士の人数が足りていないかのどちらかです。
どちらにしても、退職しようとする保育士にとっては、環境は変わらないため、丁寧にお断りしてください。
しかし、保育園側が給料や業務の改善をする場合は、その内容を確認して口約束にならないのであれば、残ることも選択肢にいれることも1つの方法です。
【退職理由別】退職を伝える際の例文
退職の意思を示すとき、どのように退職理由を伝えたらいいか悩みますね。
ここでは、退職理由別にわけて、例文をあげています。
必ず、この言い回しが効果的かは状況にもよりますので、参考にして考えてみてください。
以下、退職別の例文です。
給与が安い
結婚資金を貯めたいと思って節約していたのですが、今の給料では親や彼が望む結婚式が挙げられそうにありません。人生に一度きりのものなので、別の職場で働いて、結婚式の資金をつくりたいと思っています。
ここでは、給料が安いからと直接伝えるのではなく、目的のために資金を貯めたいからという理由です。
努力していたが、このままでは無理そうなのでと明確な目的を伝えることで、園側も納得しやすいでしょう。
残業や業務が多い
このたび退職をしたいと思ったのは、自分が体と心に限界を感じたからです。私は手の抜けない性格で、やるからには丁寧に仕事をしたいと思っているのですが、業務が難しく、多くこなすことができません。私の力不足で申し訳ないのですが、みなさんへの迷惑や私も限界を感じたため退職をさせてください。
自分の力不足をお詫びしながらも、きっぱり限界ですと伝えています。
もし、残業や業務が多いのみが理由なら、園で改善できれば続けられることも伝えましょう。
改善できれば辞める必要もないので、園にも、同僚にもよい結果がうまれます。
人間関係が悪い
保育園では、全員で子どもをみることは分かっているのですが、多くの先生たちとの保育観が合わずに我慢しながら仕事をすることが増えました。みんなで話し合ってはみたのですが、先生たちの意見が多く、保育士同士で意思疎通ができなかったです。ですので、子どもを一人ひとり大切にできて保育士の人数も少ない企業型保育園で働きたいと考えるようになりました。
あくまでも、仕事の内容によって退職したいと伝えています。
たとえ、陰口などが多く園の雰囲気が悪くても、それを伝えてしまっては恨みを買ってしまう可能性もあるでしょう。
価値観が合わないことは決して悪いことではないため、別のところで働くことにしたと希望をもって伝えて下さい。
また、転職先の面接は、こういった人間関係の退職理由ではコミュニケーションがとれるか不安になるため、そのまま伝えるのはやめましょう。
他業種への興味からの退職
この度、以前から通っていた絵本屋から、一緒にイベント業をしないかとお誘いをうけました。私自身も絵本をたくさんの子ども達に届けたいという夢があったため、お受けしました。保育士との掛け持ちするのは大変ということもあり、心苦しいのですが、絵本イベントに集中するために退職したいと考えています。
異業種の興味から退職することは、そのまま伝えましょう。
しかし、ぼんやりと仕事が決まっているなどの曖昧な表現は避けて、自分はこの道をいきますという明確な言葉を使ってください。
また、副業でもできると言われることもあるので、全力で挑戦したいことも一緒に言うと熱量も伝わります。
もう決めたのであればと応援してくれる保育園もあるので、気持ちよく思いを伝えましょう。
保護者へ退職を伝える方法とタイミング
保護者へ退職を伝える方法とタイミングは、勤務先の保育園に相談しましょう。
保育園が公表していないのに、保護者に退職することを伝えると子どもに影響を与えてしまうのでやめましょう。
どのタイミングで公表するかは保育園次第にはなりますが、だいたい退職日の1ヶ月前などが多いです。
今まで、子どもたちと関わらせてもらったお礼を保護者に伝えたいことを相談し、事前にお便りで報告し、その後は保育士から挨拶をする流れがよいでしょう。
【まとめ】保育士の退職理由は様々!
- 保育士の退職理由は大きく7つある
- 退職するための準備が大事
- 職場や保護者への退職の伝えるため、時間をつくって相談する
保育士が退職を考える理由は大きく7つあります。
給料が安い、人間関係に困っているなど退職の理由は様々ですが、理由をそのまま伝えずに一度、自分で整理をしましょう。
未来につながる退職理由がまとまったら、退職願の準備や信頼できる同僚に相談しながら退職する意思を固めていきます。
園長に時間をつくってもらい、明確な目的のための退職だということを伝えることで、円満に退職できるでしょう。
退職後に自分が新しい道に踏み出せるように、しっかりプランを立てて行動してください。
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