「保育士不足」と耳にする機会は増えていますが、その背景には何があるのでしょうか。
本記事では、現役保育士の視点から感じている理由をひも解きながら、現場のリアルな課題を整理します。
併せて、今後につながる具体的な対策についても分かりやすく解説するので最後までご覧ください。
- 保育士不足は長年の課題である
- 保育士不足は保育の質の低下、待機児童増加などを引き起こす
- 精神的負担や、業務量に対して待遇が合わないといった背景がある
- 対策として園のリアルや魅力を発信していく必要がある
【元保育士】ゆぴライター「また保育士さんが1人減っちゃった……」現役時代、私も職場の保育士不足に悩んだ経験があります。保育士不足の背景や対策をしっかりと理解しておきましょう。


ゆぴ先生 元保育士ライター
保育士歴9年。ピアノが得意で、子どもと一緒に歌をうたうことが好きでした。現在は、専業主婦兼Webライターとして活動中です。保育士や保育士を目指す方の、力になれるような記事を執筆しています。


数字で見る保育士不足の現状
以下の表は、保育士の有効求人倍率の推移をまとめたものになります。
令和7年10月時点では保育士が 3.10倍、全職種が 1.20倍であることから、保育士不足が目に見えて分かります。
| 年度 | 保育士の有効求人倍率 |
|---|---|
| R1 | 2.86 |
| R2 | 2.94 |
| R3 | 2.93 |
| R4 | 3.16 |
| R5 | 3.54 |
| R6 | 3.79 |
| R7 | 3.10 |
保育士不足によって起こる問題
- 保育の質が低下し、子ども一人ひとりへの関わりが薄くなる
- 保育士の業務負担が増え、心身の疲労や離職につながる
- 定員割れや受け入れ制限により、待機児童が発生しやすくなる
保育士不足が進むと、まず現場では一人の保育士が担当する子どもの人数が増え、十分に目を配ることが難しくなります。
その結果、個々の発達や気持ちに寄り添った保育が行いにくくなり、保育の質の低下が懸念されるでしょう。
また、業務量の増加により残業や持ち帰り仕事が常態化し心身の疲労が蓄積することで、さらなる離職を招く悪循環に陥ります。
加えて、配置基準を満たせず受け入れ人数を制限せざるを得ない園も増え、待機児童の発生や保護者の就労継続に影響を及ぼすなど、社会全体への波及も大きな課題です。
保育士不足に対して国が行っている対策
長年問題視されている保育士不足に対して、国はこれまで「処遇改善・給与引き上げ」などさまざまな取り組みを行ってきています。
さらに保育士不足の現状改善するために、2026年度からは「こども誰でも通園制度」といった対策も開始しました。
国が行っている対策5つを詳しく解説します。
処遇改善・給与引き上げ
処遇改善・給与引き上げは2025年11月にこども家庭庁より発表された改革です。
- 保育士などの人件費を5.3%引き上げる方針を決定
- これにより、1人あたり年約20万円程度の処遇改善効果を見込む
- 物価高対策や運営費の補助を組み合わせ、保育現場の環境改善も進める
主要な施策は2025年度の公定価格において保育士の人件費を5.3%引き上げる方針で、これにより平均賃金ベースで1人あたり年間約20万円の給与改善効果が見込まれています。
低賃金が慢性的な課題となっている保育現場の人材確保と定着を促し、物価高対策として施設運営費の補助と組み合わせて働きやすい環境づくりを進めるのがねらいです。
「こども誰でも通園制度」
2026年度から本格的に開始された「こども誰でも通園制度」は、保護者の就労要件に左右されず、必要な時間だけ保育を利用できる点が特徴です。
これまでフルタイム就労が前提だった保育利用が柔軟化され、午前中のみや午後のみといったスポット的な利用が増えることが見込まれます。
こうした利用形態の広がりは、短時間勤務のニーズを生み、子育て中や長いブランクがありフルタイム勤務が難しかった潜在保育士が、パートやアルバイトとして現場に復帰しやすくなる可能性があります。
結果として、保育士不足の緩和につながる間接的な効果が期待されますよ。
経営情報の「見える化」
保育士不足を解消するためには、園の経営情報を「見える化」することが重要です。
人件費の使い道や補助金の配分状況が明確になれば、処遇改善がどの程度現場に還元されているかが分かり、保護者だけでなく保育士の不信感や不安の軽減につながります。
また、経営の透明性が高まることで働く側は将来の賃金や職場環境を見通しやすく、安心して働き続けやすくなります。
結果として人材の定着が進み、保育士不足の改善につながると考えられるでしょう。
保育人材の確保全般支援
- 雇用環境の改善支援(処遇改善加算や管理者研修など)
- 求人と求職のマッチング支援(ハローワーク等で就職支援・再就職支援)
- 能力開発・就業継続支援(資格取得支援・研修・離職防止研修)
厚生労働省は保育人材確保のため、処遇改善や雇用管理の研修を通じて働きやすい環境づくりを支援しています。
また、ハローワークや保育士支援センターを活用して求人と求職のマッチングを強化し、潜在保育士の再就職も促進。
さらに、資格取得やスキル向上の研修で能力開発・離職防止を図る総合的な支援策を実施していますよ。
子育て支援制度の整備
- 児童手当や育児支援金の拡充
- 保育・幼稚園・認定こども園の無償化・利用枠拡大
- 育児関連の社会保障負担(保険料・税負担)の軽減
子育て支援制度の整備は保育士不足を直接解消する施策ではありませんが、間接的に影響します。
支援金制度の充実や育児関連の社会保障負担の見直しにより、家庭で子育てを選びやすくなれば保育施設への利用希望が過度に集中する状況を和らげることができますよ。
その結果、保育士一人あたりの負担軽減につながり、離職防止や働きやすさの向上が期待されます。
処遇改善や人員配置の見直しと併せて進めることで、保育士不足の解消に近づくといえるでしょう。
保育士が感じる「保育士不足」の主な原因
保育士不足の背景には、「業務量に対して待遇が見合っていない」「精神的負担が大きい」といった理由があり、元保育士の私も現役時代から感じていました。
実際の保育現場のリアルや保育士不足の原因である諸事情について保育士がどのように感じていたのか、具体的にお伝えしていきます。
業務に対して待遇が見合っていない
- 求人内容と実際の勤務量や給与が異なる
- 残業代が申請できない
- 持ち帰りの仕事がある
- 残業や休日出勤がある
- 昇給制度がない
これらは多くの保育士が共感できるのではないでしょうか。
元保育士の私も残業や持ち帰りの仕事、休日出勤などをこなしても給料が発生せずに不憫だと感じていました。
「業務量に対し給料が見合っていない」と感じて退職してしまう保育士が多いのが現状です。


人手不足がもたらす負のスパイラル
人手不足が進むと一人ひとりの業務量が増え、残業や持ち帰り仕事が常態化します。
十分な休息が取れない状態が続くことで心身の負担が蓄積し、離職を選ぶ保育士が増えていくのです。
すると、さらに人手が足りなくなり、残った職員の負担が一層重くなるという悪循環に陥ります。
年度の途中で保育士が急遽退職し、他の保育士がクラスをカバーをするという状況を実際に目にしたことがありますが、「負担が大きいな」と感じていました。
思った以上に精神的負担が大きい
保育士は思っている以上に精神的負担が大きい職種です。
- クラスの色を作らなければいけないプレッシャー
- 保育者間での波長が合わない
- 保護者トラブルの対応
- 行事担当や会議司会のストレス
私も上記のような理由により、精神的に参ることがありました。
周りにも同等の理由で離職する保育士が数名いたのが現状です。
これらのように、保育士は体力だけでなく精神的にも負担が大きい職種であることを理解しておかなければなりません。


潜在保育士が現場に戻りにくい現状
保育士不足の背景には、資格を持ちながら現場で働いていない「潜在保育士」が多いことも挙げられます。
結婚や出産、家庭の事情などで一度離職したあと、長時間勤務や体力面への不安、責任の重さから復帰に踏み出せないケースも少なくありません。
また、ブランクへの不安や職場環境への心配が重なり、「戻りたい気持ちはあるけれど一歩が出ない」という声も聞かれます。
事実、私も潜在保育士の1人です。


「将来性がない仕事」というイメージ
保育士不足の背景には、「将来性がない仕事ではないか」というイメージの広がりも一因といわれています。
給与水準や体力的な負担が注目されることが多く、長く働き続けられるのか不安を感じる人も少なくありません。
また、キャリアアップの道筋が見えにくいと感じることで、就職や復職をためらうケースもあります。
本来は専門性の高い大切な仕事であるにもかかわらず、こうした印象が人材確保に影響していると考えられます。


現場の保育士が考える保育士不足対策は?
保育士不足の解消には制度だけでなく、現場からの工夫も欠かせません。
ここでは、日々子どもと向き合う保育士の視点から、今すぐ取り組める対策を考えていきます。
小さな取り組みでも、積み重ねることで働きやすい環境づくりにつながるので、まずは身近なところから見直してみましょう。
給与面だけでなく「働きやすさ」も重要
離職せず長年保育士として働くためには、給与以外にもいかに働きやすいかがポイントとなります。
- 自宅から通いやすい距離であるか
- 有給が申請しやすいか
- 職場の雰囲気が良いか
- 残業や持ち帰りの仕事がないか
上記は、実際に保育士をしていて感じた「職場選びに重要な項目」です。
自分の希望条件とマッチした働きやすい職場を選ぶことで離職率が減少し、保育士不足解消につながります。


採用前に園のリアルな姿を伝える
園側は求職者に対し、園のリアルな姿を伝えることが大切です。
- 離職率
- 有給取得率
- 残業時間
- 職場の雰囲気
- 保育中の様子
転職エージェントや求人サイト、園のホームページなどに上記の項目を記載しておくと、求職者は聞きにくい情報を入手でき就職後のイメージが沸きやすく、結果短期間での離職を防ぐ効果があります。
採用面接時にも、求職者からは聞きづらいリアルな園の様子を園側から意識的に伝えてみましょう。
保育士同士が相談しやすい環境を作る
保育士同士が相談しやすい環境づくりは、現場改善にも直結し保育士不足解消の手立てとなります。
- 毎日5〜10分でも共有タイム(ミニミーティング)を設ける
- 相談担当(メンター・リーダー)を決めて窓口を明確にする
- 定期的な1on1面談を実施する
- 休憩をきちんと確保し、雑談できる時間をつくる
私は3つの保育現場で働いていましたが、どの職場でも上記のような取り組みをしていました。
特に園長と1対1で話す面談では、普段なかなか言えない人間関係の悩みや困りごとを伝えられ、悩みの種を取り除けたこともあります。
園の魅力ややりがいを発信する
園のリアルな様子を伝えるだけでなく、現場の保育者視点の魅力ややりがいを発信することも人材確保につながる対策です。
- YouTubeやInstagramなどで日常のリアルを発信する
- 行事だけでなく、普段の保育の様子を紹介
- 「残業ほぼなし」「相談しやすい」など働きやすさも発信
- 若手保育士の声やインタビュー投稿をする
近年は求人票だけで応募を決める人は少なく、園の雰囲気や人間関係をSNSでチェックする人が増えています。
文章だけの求人情報より、写真や動画のほうが職員同士の関係性や空気感が伝わりやすいです。
保育現場のICT化は保育士不足にどう影響する?
保育現場のICT化は、保育士不足の緩和に間接的な影響を与えます。
- 保育記録や連絡帳のデジタル化
- 登降園管理やシフト作成のシステム化
- 写真共有やお知らせ配信のアプリ活用
保育記録や連絡帳のデジタル化により手書き業務が減少し、事務作業の時間短縮が可能です。
加えて、登降園管理やシフト作成をシステム化することで業務負担の偏りを防ぎ、働きやすい環境づくりが進みます。
業務量が軽減されることで離職防止や復職への心理的ハードルが下がり、結果として保育士不足の改善が期待できますよ。
【保育士アンケート】「ここなら続けたい」と感じた園の共通点は?
保育士不足を解消するためには、「ここの園でなら長年働きたい」と思える理想の職場に出会えるかがポイントです。
保育士経験のある数名にアンケートをとった結果、「役割分担が明確である」「心にゆとりを持てる」「メリハリがある働き方である」などが長年働きたい園の共通点であることが分かりました。
具体的にはどういうことなのか詳しくご紹介します。
役割分担の明確で、業務負担に偏りがない園
| Q1. これまでに勤務した中で「ここなら長く働きたい」と感じた園はありましたか? | はい |
|---|---|
| Q2. 「長く働きたい」と感じた理由として、特に当てはまるものを教えてください。 | 人間関係が良かった 業務量が適切だった |
| Q3. その園では、他の園と比べて「違う」と感じた点はありましたか? | 正社員保育士の仕事はコレ、派遣保育士はコレ、パートはコレと枠組みが決まっていたので、誰かに業務が偏りすぎることがなかったのがよかったです。優秀なパートさんだからといって、どんどん仕事が増えていくなどがなくて、みんな働きやすそうでした。 |
| Q4. 逆に「ここでは続けられない」と感じた園に共通していた点があれば教えてください。 | 産休・育児休暇を取った経験のある保育士が今までいなかった園です。幼稚園でしたが、結婚し妊娠したら辞めていく……という暗黙のルールがありました。若手保育士と年配保育士の二極化していました。 |
| Q5. これから働く保育士、または園側に伝えたいことがあれば教えてください。 | 働いている人が若い人ばかりじゃないか、子育て中の人もいるか、男性保育士はいるか、チェックしておくことをおすすめします。どこかに偏りがある場合、一定の人には働きやすい環境かもしれませんが、自分がそこからはじかれたときに働きにくい場合があります。 |



役割分担が明確であれば、自分に与えられた業務に集中して取り組めます。「非常勤なのにこんなに書類を記入しなきゃいけないの?」と後から困ることもありません。入職前に園の見学をして、職員の働く様子をチェックしてみるとよいですよ。
心にゆとりを持てる職場環境
| Q1. これまでに勤務した中で「ここなら長く働きたい」と感じた園はありましたか? | はい |
|---|---|
| Q2. 「長く働きたい」と感じた理由として、特に当てはまるものを教えてください。 | 相談しやすい雰囲気があった 休憩・休暇がきちんと取れていた 業務量が適切だった |
| Q3. その園では、他の園と比べて「違う」と感じた点はありましたか? | 休憩を1時間しっかりととることができた。有休消化率も高く、希望日に休みをとりやすかった。 |
| Q4. 逆に「ここでは続けられない」と感じた園に共通していた点があれば教えてください。 | 1日12時間以上の労働が続いたことや、賞与が極端に少なかった。 |
| Q5. これから働く保育士、または園側に伝えたいことがあれば教えてください。 | 保育士として長く働き続けるためには、「やりがい」だけでなく、労働環境や人間関係の安心感がとても重要だと感じています。 子どもに丁寧に向き合うためにも、保育士自身がしっかり休息を取り、適正な評価や処遇を受けられる環境づくりを大切にしてほしいです。 これから働く保育士の方には、「無理をすることが美徳ではない」ということを伝えたいです。自分を守ることは、子どもを守ることにもつながると思います。 |



休憩や休暇・有休がしっかりとれるといった職場環境は、心のゆとりと大きく関係します。仕事と休暇のバランスが適切に取れていないとパフォーマンス力が欠けたりストレスを抱えたりと影響するため、実際の職員の有休消化率や休憩時間を把握できるとよいですね。
メリハリがある働き方を実現できる園
| Q1. これまでに勤務した中で「ここなら長く働きたい」と感じた園はありましたか? | はい |
|---|---|
| Q2. 「長く働きたい」と感じた理由として、特に当てはまるものを教えてください。 | 人間関係が良かった 休憩・休暇がきちんと取れていた 業務量が適切だった 園の方針や保育観に共感できた 非常勤勤務だったこともあり、休憩がしっかりとれ、定時で上がれていた |
| Q3. その園では、他の園と比べて「違う」と感じた点はありましたか? | 職員間の仲が良く、定期的にプライベートで食事したり出かけたりしていた |
| Q4. 逆に「ここでは続けられない」と感じた園に共通していた点があれば教えてください。 | 非常勤のため給与はもう少し上げたいと感じていた |
| Q5. これから働く保育士、または園側に伝えたいことがあれば教えてください。 | 公務員を目指している人は、まずは非常勤勤務で働いて自治体の保育運営や働き方を自分の目で見てみてもよいと思います |



長年同じ職場で働き続けるには、仕事とプライベートのメリハリが大切です。人間関係が良好な職場であれば、業務中の雰囲気が良いだけでなくプライベートで食事をすることもあるでしょう。園見学の際に職場の雰囲気や職員同士のやりとりを観察してみてください。
保育士不足に関するよくある質問と回答
保育士不足はニュースや政策でもたびたび取り上げられていますが、「なぜ起きているの?」「いつ解消されるの?」といった疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。
保育士不足に関してよく寄せられる質問を取り上げ、その背景や現状、今後の見通しについて分かりやすく解説するので、制度面と現場の実情の両方に触れながら理解を深めていきましょう。
- 保育士不足の主な原因は何ですか?
-
保育士不足の主な原因は、賃金水準の低さや業務負担の大きさ、責任の重さに対して働き続けにくい環境があることです。
- 潜在保育士が復職するメリットや支援制度はありますか?
-
潜在保育士が復職することで人手不足の緩和につながるほか、就職準備金の貸付や復職支援研修、短時間勤務制度などの支援策も用意されています。
- 保育士の配置基準は見直されているのでしょうか?
-
保育士の配置基準は業務の効率化や多様な働き方に対応する観点から、見直しや弾力的な運用が進められています。
- 資格がなくても保育の現場で働けますか?
-
保育士資格がなくても保育補助や子育て支援員として勤務でき、掃除や準備、子どもの見守りなどを担当しながら現場を支えることができます。
- 保育士不足はいつ解消されますか?
-
保育士不足がいつ解消されるかは明確な時期を示せる状況にはなく、処遇改善や配置基準の見直しなど複数の対策が継続的に進んだ場合に、段階的な改善が期待されます。
まとめ
保育士不足の背景には、処遇や業務負担、将来性への不安、潜在保育士の復職の難しさなど、さまざまな要因があります。
一方で、処遇改善やICT化、復職支援制度の充実、園の魅力発信など、できる対策も少しずつ広がっています。
大切なのは、制度任せにせず現場からも働きやすさを整えていくこと。
小さな改善を積み重ねて、保育の未来を支えていきたいですね。








