保育園では自然災害や不審者侵入などの際、速やかに避難できるよう定期的に避難訓練を実施しています。
保育者の中には、「避難訓練の指導案の書き方が分からない」「何をねらいにしたらよいの?」と指導案の書き方に悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
本記事では、保育園で行う避難訓練の指導案の書き方やねらいを詳しくご紹介するので、スムーズに避難訓練を行うための参考にしてみてください。
- 避難訓練のねらいは子ども・保育士・保護者でそれぞれ異なる
- 避難訓練の種類には地震・火事・水害・不審者などがある
- 保育園では避難訓練の年間計画や災害別のマニュアルを作成しておく
- 避難訓練を行う際は子どもを怖がらせないように注意する

ゆぴ 元保育士ライター
保育士歴9年。ピアノが得意で、子どもと一緒に歌をうたうことが好きでした。現在は、専業主婦兼Webライターとして活動中です。保育士や保育士を目指す方の、力になれるような記事を執筆しています。
【対象者別】保育園での避難訓練の目的・ねらい
ここでは、対象者別の避難訓練の目的とねらいを解説します。
避難訓練は園児を対象に行うイメージが強いかもしれませんが、保育士や保護者を対象に行う訓練もあります。
園児だけでなく、保育士や保護者など園の関係者全員が避難訓練の目的を理解して取り組まなければいけません。
保育園で行う避難訓練の目的やねらい、内容などは対象者別で異なることを覚えておきましょう。
【園児】避難訓練の目的・ねらい
園児を対象にした避難訓練の目的・ねらいは、以下を参考に設定しましょう。
- 災害時でも保育士の話に耳を傾け安全に避難できるようにする
- 保育園や戸外で災害に遭った際の避難方法を理解する
災害が発生すると、子どもはどうしたらよいのか分からずパニックになる姿が予想されます。
緊急時でも保育士の話を聞いて冷静に避難するために、日頃から避難訓練を行いましょう。
避難方法は災害の種類や発生場所によって異なるので、室内なら机の下や押し入れの下に隠れる、戸外なら1箇所に集まる、火事の場合はハンカチを口元に当てるなど、それぞれの具体的な避難方法を伝えることが大切です。
【保育士】避難訓練の目的・ねらい
保育士を対象にした避難訓練の目的・ねらいは、以下を参考にしてみてください。
- 災害時に子どもが安全に避難できるよう適切な指示を行う
- 避難訓練の振り返りを行い、避難経路や避難方法の問題点を共有、改善する
保育士は、災害の発生場所や時間帯などを把握して適切に子どもを避難させなければなりません。
どのような場面であっても安全に子どもを誘導できるように、繰り返し避難訓練を行うことが大切です。
【保護者】避難訓練の目的・ねらい
保育園では、保護者を対象にした避難訓練も行います。
目的やねらいは以下の通りです。
- 災害時に保育園とどのように連絡を取ればよいのかを学ぶ
- 災害時の引き渡しを経験する
災害時は園と保護者の連絡が取りにくくなるため、どう対応するべきか保護者も分からなくなってしまいます。
災害時の園とのやりとりや子どもの引き渡し方などを実際に経験し、災害時に安全に引き渡しができるように訓練しておきましょう。
【月別】保育園での避難訓練のねらい
保育園における避難訓練は、消防法の義務により少なくとも月に1回以上実施しなければなりません。
月別にねらいを立てておけば指導案が書きやすくなり、訓練もスムーズに行えます。
以下に、園児を対象にした月別のねらいの例をご紹介するので、作成時の参考にしてみてください。
月 | ねらい(一例) |
---|---|
4月 | 避難訓練があることを理解する |
5月 | 地震発生時の身の守り方や避難方法を知る |
6月 | 火災発生時の身の守り方や避難方法を知る |
7月 | 散歩先での身の守り方を知る |
8月 | 水遊び中の身の守り方を知る |
9月 | 津波発生時の身の守り方や避難方法を知る |
10月 | 台風発生時の身の守り方を知る |
11月 | 午睡時に災害が発生したときの身の守り方を知る |
12月 | 予告なしの状況でも保育者の指示に従い速やかに避難する |
1月 | 不審者侵入時の身も守り方を知る |
2月 | 担任以外の保育者の指示に従い避難する |
3月 | 地震や火災発生時に自分の身を自分で守れるよう考えて行動する |
新しいクラスでの避難経路や避難方法が理解できていない春〜夏にかけては、身の守り方や避難方法の基礎の理解をねらいにします。
段々と慣れてきたら、午睡中や散歩時など自由遊び以外の時間に訓練を取り入れたり、予告なしの訓練を実施したりして、あらゆる場面での避難に対応できるようにしていきましょう。
保育園で行う避難訓練の種類
保育園で行う避難訓練には、地震や火事、水害、不審者などさまざまな種類があります。
それぞれ身の守り方や避難方法が異なるので、保育士は子どもたちにシーン別の避難方法を理解できるよう伝えていきましょう。
保育士の動きもケースごとに変わるため、スムーズに動くための避難方法の把握が大切です。
①地震
- 地震発生の放送を聞く
- 窓際から離れ、机の下など落下物の危険がない場所に隠れる
- 乳児はタオルや布団をかけて頭を守る
- 保育士の指示に従い、防災頭巾を被るなどの準備をして安全な場所に避難する
- 避難後、点呼や保育士の話を聞く
地震を想定した避難訓練では、子どもに自分の身を守るようにすぐに指示を出し、避難経路を確認することが大切です。
室内にいる場合は、速やかに外に避難できるよう窓やドアを開けるのも忘れないようにしましょう。
避難時は外履きに履き替えていると逃げ遅れる可能性があるため、履き替えはせずに上履きのまま避難した方がよいです。
②火事
- 火事発生の放送を聞く
- 手やハンカチで鼻と口を押さえて煙を吸わないようにする
- 鼻と口を押さえたまま安全な場所に避難する
- 避難後、点呼や保育士の話を聞く
火事を想定した避難訓練の難しい点は、火災の出火元によって避難経路や避難場所が変わることです。
できるだけ出火元に近づかずに避難しなければならないため、保育士には咄嗟の判断が求められます。
また、火災発生時は火災の拡大を防ぐためにドアや窓をすぐに閉めましょう。
避難時は、煙を吸わないように口元を押さえる、低姿勢で避難することを子どもに伝えてください。
③水害
- 水害発生の放送を聞く
- 保育士の指示に従い安全な場所へ避難する
- 避難後、点呼や保育士の話を聞く
水害の避難訓練は、大雨や台風による津波を想定して行うことが多いです。
水害は、地震や火事と比べ事前に予測しやすいので、余裕を持って避難するようにしましょう。
なるべく高い場所に避難しなければならないため、保育園周りの高い施設や場所の把握が大切です。
避難時に坂道を登る際は職員間で連携し、乳児が乗っている避難車など人手が必要な場所を支えてあげてください。
④不審者
- 不審者に気づいた保育士が内部に報告する
- 不審者発生の放送又は合言葉を聞く
- 保育士の指示に従い安全な場所に避難する
- 避難後、点呼や保育士の話を聞く
不審者を想定にした訓練では、特に職員間の連携が大切です。
不審者に刺激を与えないように接しつつ、子どもを避難させる必要があります。
保育士は、不審者の対応担当と子どもの誘導担当に分かれて動きましょう。
周りの保育士や子どもに不審者を知らせる際は、不審者に気づかれないように事前に決めておいた合言葉を使うのが基本です。
保育園での避難訓練の指導案の書き方
保育園における避難訓練の指導案を作成する際は、以下の項目を取り入れるようにしましょう。
災害の想定時間や場所、避難場所などを事前に決めておけば、子どもの活動を調整できますよ。
また、どのようなシーンにも対応できるように、災害の種類や発生時刻、場所などを毎回変えて実施するのが理想です。
①避難訓練を実施する日時
避難訓練は、事前に日時を決めてから行うのが一般的です。
実際の災害は何時に発生するか分からないので、以下のようにさまざまな時間を想定して実施しましょう。
- 午前中の自由遊び
- 午後の自由遊び
- 昼食時
- 午睡時
- 朝や夕方の時間外保育時
主活動に影響を与えたくないのであれば、避難訓練の時間に合わせてそれ以外の活動時間を調整してみてください。
避難訓練は保育園の全職員が行う必要があるので、正規職員だけでなく非常勤職員や時間外保育士も参加できるように指導案を作成しましょう。
②災害が発生する場所と災害の原因
避難訓練の指導案には、災害の発生場所と原因も必ず記載しましょう。
特に火災や不審者を想定した場合、発生場所によって避難経路や避難場所が毎回変わるため、発生場所の記載は重要になります。
どの職員が見ても緊急時の状況が伝わるように、以下を参考に作成してください。
- 午前11時に調理室で火災が発生
- 午後15時に園庭の隅にある落ち葉から発火
- 午前9時に裏門から園庭に不審者が侵入
- 午後16時に正門付近に不審者発生
③避難方法・避難場所
災害の発生日時や場所、原因を元に避難方法と避難場所を検討します。
避難場所や経路は一つとは限らないので、発生場所を参考に適切なルートを想定しておきましょう。
周りのクラスと経路が被ると避難に時間がかかる恐れがあるため、近隣クラスの保育者同士で避難経路を確認しておくことも大切です。
また、散歩先の避難訓練では周りの保育者に頼らず、自分を含めた数人の保育者の判断で避難経路や場所を考えなければいけません。
「〇〇公園なら大きな木の下に集まる」など、散歩先ごとの避難場所を事前に決めておきましょう。
保育園で避難訓練を実施する前に行う準備
保育園で避難訓練をするには事前準備が必須です。
十分な準備が行き届いていないと訓練当日にバタバタしてしまい、実際に災害が発生したときのイメージトレーニングができません。
ここでは、避難訓練を実施する前に必ず行うべき準備を3つご紹介するので、スムーズに訓練ができるよう参考にしてください。
①避難訓練の年間計画表を作成する
年間計画表の作成は、避難訓練の準備に欠かせません。
保育園では最低でも年に12回避難訓練を行うため、年度初めに各月ごとの設定やねらいを記載した年間計画表を準備しておきましょう。
年間計画表には、以下の項目を記載すると見返すのに便利です。
- 月
- 設定
- 発生場所
- 避難場所
- 子どもが体験する内容
- ねらい
- 保育者の注意点
訓練当日は落ち着いて取り組めるよう、ねらいや子どもが体験する姿を中心に具体的に書いてみてください。
②災害の種類別のマニュアルを作成する
避難訓練を行うにあたり、災害の種類別のマニュアルを作成しましょう。
以下のように、災害の種類により避難方法や保育者の動きは変わります。
- 地震発生時:窓やドアを開ける、落下物の危険のない場所に誘導するなど
- 火災発生時:窓やドアを閉める、火元を確認して遠回りのルートで避難するなど
- 不審者発生時:不審者に刺激を与えないように対応する、気づかれないように周りに合図を送るなど
どのようなケースにも対応できるように、分かりやすくマニュアルを記載しましょう。
マニュアルを作成する際は、各自治体が発行している保育施設用の防災マニュアルや、経済産業省が出している防災ハンドブックなどを参考にしてみてください。
③防災グッズを準備する
どのような災害にも対応できるように、防災グッズを準備しておきましょう。
いざと言うときに防災グッズが不足していると、食料がない、防寒グッズがないなど生活に支障をきたす恐れがあります。
以下を参考に、防災グッズを用意してみてください。
- ウェットティッシュ
- 哺乳瓶
- 液体ミルク
- ミネラルウォーター
- 非常食
- 紙おむつ
- お尻拭き
- ビニール袋
- 簡易トイレ
- 抱っこ紐
- 衣服
- バスタオル
- マスク
- バザードマップ
- 園児名簿
- 懐中電灯
- ホイッスル
- 携帯用カイロ
- ヘルメット・防災頭巾
- 携帯用ラジオ
- 乾電池
- ガムテープ
- マジックペン
避難訓練の大切さを子どもたちに伝えるコツ
避難訓練の一番の目的は、園児に災害時の身の守り方や避難方法を理解してもらうことです。
年齢の低い子どもに避難訓練の重要さを伝えるのは、簡単なことではありません。
以下の方法を取り入れて、子どもたちに分かりやすく避難訓練の大切さを教えていきましょう。
①絵本や紙芝居を使う
絵本や紙芝居を使って避難訓練の目的を伝えていきましょう。
避難訓練の目的や避難方法を言葉で説明しても、年齢の低い2〜3歳児には伝わりづらいです。
子どもの興味を引きやすい絵本や紙芝居なら、言葉で伝えるより理解してもらいやすいですよ。
以下を参考に、避難訓練の大切さが分かる絵本を導入に取り入れてみてください。
- じしんのえほん こんなときどうするの?/監:国崎信江 絵:福田岩雄
- 地震がおきたら/原案:谷敏行 文:畑中弘子 絵:かなざわまゆこ
- 「おかしも」はかじのおやくそく/著者:磯みゆき
- 火にきをつけて、ドラゴンくん/著者:ジーン・ペンジウォル 絵:マルティーヌ・グルボー
②劇やペープサートで伝える
劇やペープサートで避難訓練の大切さを伝えるのも一つの方法です。
絵本や紙芝居よりもリアルな設定を演出できるので、身の守り方や避難方法など伝えたいことを盛り込んだ内容にするとよいですよ。
劇の場合、実際に保育者が子ども役を演じることで、子どもも興味を持って見てくれます。
また、劇やペープサートの合間に災害時の動きなどのクイズを取り入れれば子どもの理解が深まるのでおすすめです。
③合言葉で伝える
保育園の避難訓練でよく使われるのが合言葉です。
災害時の約束を覚えやすい合言葉にすれば、子どもが災害時にどう動いたらよいのかを覚えやすいです。
今回は、保育園の定番である「おかしもち」「いかのおすし」2つの合言葉をご紹介します。
- お・・・おさない
- か・・・かけない
- し・・・しゃべらない
- も・・・もどらない
- ち・・・ちかづかない
「おかしもち」は、地震や火災、水害などの災害で避難するときの約束です。
言葉を教えるだけでなく、どうしてこの約束が大事なのか理由も添えて伝えるようにしましょう。
- いか・・・知らない人についていかない
- の・・・知らない人の車にのらない
- お・・・危ないと思ったらおおきな声を出す
- す・・・その場からすぐ逃げる
- し・・・大人の人にしらせる
「いかのおすし」は、不審者に遭遇したときの約束です。
「おかしもち」同様、一つずつ言葉の意味を伝えましょう。
保育園で避難訓練を行うときの注意点
保育園で避難訓練を行うときには、いくつかの注意点があります。
以下の点に注意しないと避難訓練の目的が明確にならず、実際災害に遭ったときにドタバタしてしまうので、覚えておきましょう。
子どもに恐怖心を与えないようにする
避難訓練を行うときは、子どもに恐怖心を与えないようにしましょう。
子どもに恐怖心を与えてしまうと、実際災害に遭ったときにパニックに陥ることが予想されます。
訓練時は以下のような対応を心がけ、訓練であることを伝える姿勢が大切です。
- 事前に避難訓練を行うことを伝えておく
- 災害を知らせる放送で「これは訓練です」と伝える
- 保育士は必死になりすぎず落ち着いて対応する
- 子どもに「大丈夫だよ」「上手に隠れられたね」などと声をかけて落ち着かせる
他のクラスとの協力・他の保育士との連携を徹底する
他のクラスや周りの保育士との協力、連携も大切です。
具体的には、以下のように連携を取るとよいでしょう。
- 避難ルートが被らないように周りのクラスと打ち合わせしておく
- クラス内の職員同士で子どもを見る係、トイレを確認する係など分担を決めておく
- 抱っこや避難車に子どもを乗せるなど、避難準備に時間がかかる乳児クラスの手伝いをする
- パニックになりやすい支援児の情報共有をしておく
複数担任の場合は、一人が乳児クラスの手伝いに回る、トイレの確認、ドアや窓の施錠をするなど分担を決めておくとスムーズに連携が取れます。
避難訓練の振り返り・反省と改善点を洗い出す
避難訓練後は訓練の振り返りをし、反省や改善点を洗い出すようにしましょう。
訓練時の反省点や失敗を振り返らないと次回も同じ失敗を繰り返してしまい、実際に避難するときスムーズに行動できません。
避難訓練後は職員で話し合う時間を設け、反省や改善点を出して共有し、次回に活かせるようにします。
振り返りで出た反省や改善点は、指導案に書き足していつでも見返せるようにしましょう。
まとめ
保育園の避難訓練について、指導案の書き方や注意点をご紹介しました。
自然災害や不審者の発生はいつどこで起こるか予測できないため、どんなケースにも対応できるよう日頃から訓練しなければなりません。
園児の命を守るのは保育士の重大な任務なので、防災意識を高く持って避難訓練に取り組みましょう。
本記事でご紹介した指導案の書き方や避難訓練を行うときの準備、注意点も併せて参考にしてみてください。


コメント