保育現場で、近年注目を集めている派遣保育士という働き方をご存知でしょうか。
派遣保育士は他の働き方と比較して時給が高い傾向にあり、「なぜそんなに時給が高いの?」と疑問に思う人もいるでしょう。
本記事では、派遣保育士の時給が高い理由について、実際に現場で働く派遣保育士の口コミを元に解説していきます。
- 派遣保育士でも担任を持つこともあれば、保育補助として働く場合がある
- 派遣保育士の時給は、他の働き方と比較すると高く設定されている場合が多い
- 派遣保育士はボーナスが支給されないケースがほとんど
- 派遣保育士は、柔軟な働き方や多種多様な保育施設で経験を積みたい人におすすめの働き方

実際に派遣保育士としてさまざまな保育施設での保育経験のある私が、派遣保育士の時給が高い理由やリアルな派遣保育士としての働き方を解説します!


ちあき
認可保育園で勤務後退職して留学。その後は英語の幼稚園で働く。結婚を機に派遣保育士に転身し、さまざまな園で経験を積む。保育士歴は通算7年ほど。
子どもが重度アレルギー児になったことでライターに転身した2児の母。


派遣保育士と正社員(パート)の違いとは?
派遣保育士と正社員保育士、パート保育士は、そもそも雇用先が異なります。
派遣保育士は派遣会社に雇用され、保育施設に派遣される形ですが、正社員・パート保育士は保育施設と直接契約を結びます。
他にも、契約期間や給与体系などで違いがあります。
下記の表にまとめたので、ぜひ参考にしてください。
派遣保育士 | 正社員(パート) | |
---|---|---|
雇用形態 | 派遣会社との契約 | 保育施設と直接契約 |
契約期間 | 数ヶ月単位など有期契約が基本 | 無期契約 |
給与体系 | 時給制 | 正社員:月給制 パート:時給制 |
福利厚生 | 派遣会社による | 充実していることが多い |
勤務時間 | 希望に応じたシフト勤務が可能 | 正社員:フルタイムが基本 パート:短時間勤務が多い |
派遣保育士は、上記の表から分かるとおり、希望に合わせたシフト勤務ができることが魅力です。
一方で、契約の安定性や福利厚生は派遣会社によって異なるので、あらかじめ確認しておきましょう。
派遣保育士の仕事内容は?
派遣保育士は正社員保育士ではないことから、補助的なポジションで働くイメージがあるかもしれません。
しかし、仕事内容は保育施設や契約内容によってさまざまです。
保育補助としてサポート業務メインで働くケースもあれば、担任業務を担うケースも珍しくありません。
本章では、代表的な働き方を2つ紹介します。
保育補助として働く
保育補助とは、担任保育士をサポートする役割を担っています。
担任を持たずにフリーの保育士として働き、クラスに入るときは保育補助としてサポートメインで働くケースもあれば、クラス担任として配属されているけどポジションは保育補助というケースもあります。
保護者対応や書類業務がない場合が多く、負担感が少なく働けることが魅力的です。
しかし、中には掃除や環境設定などの雑務の仕事が多く、逆に子どもと触れ合う機会も少ないケースもあります。
担任を持つ
一部の派遣保育士は、クラス担任として配置されることもあります。
正社員保育士と同様に日案、週案、月案などの書類の作成や保護者対応、イベントの用意など責任のある仕事を任されることも多いです。
派遣保育士の中でも勤務条件として、フルタイムを希望している、週4以上の勤務を希望している場合に担任を持つ傾向があります。
担任を持つことで、最初の契約は数ヶ月単位だとしても最終的に年度末まで伸びるなどの長期契約になることもあります。
派遣保育士の時給はどれくらい?ボーナスは?
派遣保育士は、他の働き方と比較して時給が高いと言われていますが、実際にどのくらいの時給が相場でしょうか。
また、ボーナスは支給されるのでしょうか?
気になる疑問について、本章では他の雇用形態と比較しながら詳しく解説していきます。
派遣保育士の時給
派遣保育士の時給は、全国平均で1,377円です。
地域によって1,200円〜1,600円程度の差があり、首都圏などの人口が多い地域では高めの時給が設定されている傾向があります。
対して、正社員の保育士の年収は全国平均で約330万円とされ、ボーナスを3ヵ月分もらっていると仮定して時給換算すると1,250円です。
パート保育士の全国平均時給は、1,145円となっています。
3つの働き方の時給を比較すると、派遣保育士の時給は他の雇用形態よりも高めであることが分かります。
※2025年4月22日現在
参照:保育士の仕事の年収・時給・給料
派遣保育士のボーナス事情
多くの派遣保育士は、ボーナスが支給されない契約になっています。
正社員保育士であれば年に1〜2回の賞与があり、月給の1~3ヶ月程度支給されることが多く、安定した収入に直結しています。
しかし、派遣はボーナス分を時給に上乗せする形で支給されている場合がほとんどです。
したがって、年収ベースで見れば正社員とフルタイムで働く派遣保育士は大差がないケースもあります。
ボーナスというまとまった額が支給されないのは派遣という働き方の特徴です。
派遣保育士の時給が高い理由5つ
「パート保育士よりも派遣保育士の時給が高いのは分かるけど、時給換算した正社員保育士よりも時給が高いのには納得できない!」という人も多いでしょう。
実は、派遣という働き方には、時給が高くなる要因がいくつかあります。
本章では、派遣保育士の時給が高い主な5つの理由を解説します。
ボーナスや福利厚生がない
派遣保育士は、基本的にボーナスや住宅手当などの福利厚生がありません。
時給にボーナスやその他の手当分が上乗せされているからです。
正社員が受け取っている手当の分を、派遣保育士は現金で直接もらっているというイメージです。
福利厚生がない=有休がないと思われがちですが、基本的には6ヶ月以上継続的に勤務していて全労働日の8割以上の出勤があれば、有休は取得できますよ。



私は派遣保育士として働いていましたが、有休・産休・育休は規定を満たすことで取得できました。
企業のコスト削減になる
保育施設側にとっても、派遣保育士は必要なときに必要な人数だけ雇用できる便利な存在です。
人材を1人雇うには、求人を載せるための費用や紹介料など、たくさんのお金がかかります。
派遣保育士を期間限定で入れることで、園側の負担は軽減されます。
- 派遣保育士の社会保険料
- 雇用保険
- 交通費
- 研修 など
上記の費用を派遣会社が担っていることで、コスト削減分が、派遣保育士の高時給に繋がっています。
スキルの高さが求められる
即戦力として期待される派遣保育士は、ある程度のスキルや経験が求められる傾向にあります。
特に、乳児クラス・幼児クラスの両方の担任経験やピアノ・製作・書類作成が得意な人は重宝されます。
保育士としてのスキルが高いことへの対価として、高時給が設定されているケースも多いです。



私は過去勤務していた保育施設で、英語が話せることと書類業務が得意なことで時給アップしたことがありました。スキルがあれば時給交渉も可能な場合があります。
必要な時期だけ雇用される
派遣保育士は、年度末や産休代替など、期間限定で採用されるケースがほとんどです。
短期間だけ勤務してほしいという保育施設側の要求があり、リスク分を加味して時給が高く設定されます。
逆に言えば、長期的な雇用の安定性はあまりありません。
契約更新も数ヶ月単位の保育施設が多いです。



私が経験した最短パターンは、新年度の6週間だけの派遣の案件です。子どもの慣らし保育で入社時期が1ヶ月ずれる職員の穴埋めのための依頼でした。
交通費が含まれている場合がある
派遣保育士の契約内容では、交通費が時給に含まれているケースもあります。
実質的には交通費が支給されているような形ですが、月ごとの支払い明細に記載されないため、表面上は時給が高く見えるという仕組みです。
派遣保育士の時給が高く見える理由の1つです。



私は登録していた派遣会社は、時給に交通費が含まれることはありませんでした。しかし、別の派遣会社で交通費の上限が決められているケースを見たことがあります。
派遣保育士の仕事は時給に見合っている?リアルな声を紹介
派遣保育士は「時給が高い」と言われる一方で、仕事内容や待遇面でのギャップを感じる人も少なくありません。
SNS上では、派遣保育士としてのリアルな声が日々投稿されています。
本章では、実際の口コミを紹介しつつ、保育士の視点から見たアドバイスや考え方のヒントも添えて紹介します。
正社員で働いてた時と変わらん!
ボーナスないけど
ボーナス年間40万くらいしかないしサービス残業を時給計算したら
40万なんて足りないもんなぁ
そんだったらパート、派遣でいいもん引用元:note



正社員の「名ばかりのボーナス」や「当たり前のサービス残業」に疲れた人にとって、残業がほとんどない派遣保育士は魅力的な選択です。
給与がほとんど変わらないなら、自分の時間を大切にしながら働けた方がいいという方にはぴったりです。
正社員になるしか、食べていく方法はないと思っていましたが、派遣でもフルタイムで働けば、全然生活も貯金もしていけると分かり、今でも続けています
派遣の保育士は担任を持たずに保育補助が主な業務です。
やはり大好きな子どもとの関わりは、私の全身の細胞が喜んでいる感覚レベルで楽しいです引用元:note



正社員保育士の場合は書類作成や保護者対応などの幅広い業務を行います。しかし、派遣保育士として保育補助で働けば、子どもと丁寧に関わることも可能です。
子どもが大好きで保育士の仕事を目指した人には嬉しい働き方ですね。
派遣保育士として働いていた時期もあったけど、ある園では担任を持ってリーダーや書類も受け取って、別の園では保育補助としてサポートの役割だった。 時給は一緒。 不思議だよね。求人との縁しだいってかんじ。
引用元:X



保育施設によって業務内容に差があるケースもあります。
派遣会社との連携を密にして、自分の働く条件をしっかり伝えることがミスマッチに繋がらないためのコツです。
派遣の保育士はどんな人に向いている?
正社員保育士と異なり、安定しないものの高時給が叶えられる派遣保育士という働き方ですが、どんな人が向いているのでしょうか。
4つのタイプに分けて詳しく解説します。
ご自身の性格や希望する働き方と照らし合わせて確認してみてください。
柔軟な働き方を求めている人
派遣保育士は、さまざまなライフスタイルに合わせた働き方が可能な求人もあります。
- 家事や育児と両立して働くために、週に4日の勤務にする
- 介護と両立するために午前中のみの勤務にする
- 残業や持ち帰りの仕事がほとんどないため、プライベートが充実する
- 副業に力をいれるため、短時間の勤務にする
正社員のように残業や責任の重い仕事の負担が少ない傾向があるため、ワークライフバランスを大切にしたい人に向いています。
多種多様な職場で働いてみたい人
派遣保育士は、私立の保育施設だけでなく、公立の保育施設を始めとする、さまざまな職場で経験を積めます。
- 企業内保育所
- 病児・病後児保育
- 商業施設やイベントの託児
- インターナショナルスクール など
将来どんな保育をしたいか模索中の方にもおすすめです。



私が働いた中でのレアな保育現場はインターナショナルスクールです。クラス内に外国人講師がいる中での勤務は、とても刺激的でした!
事務作業が苦手な人
派遣保育士は、正職員と比べて保護者対応や事務作業の負担が少ないことが多いです。
事務作業が苦手な方は、「保育補助として働きたい」と希望を出すと、より事務作業を避けられる可能性があります。
仮に担任業務を依頼された場合でも、契約時に「指導案の作成は免除してほしい」などの交渉も可能です。
保育の現場での仕事だけに集中したい人にとって、派遣保育士はぴったりの働き方といえるでしょう。
ブランクがある人・未経験者
結婚・出産で一度現場を離れた方や、資格はあるけれど実務未経験という方でも、派遣なら無理なく復帰が可能です。
派遣会社自体にサポート体制が整っているケースもたくさんあります。
また、条件とタイミングによっては、同じ派遣会社から派遣されている保育士がいる保育施設への配属も可能です。
ブランクがある人や未経験者にとっては心強いですよね。
数ヶ月単位で派遣先が変わるのはリスクもありますが、自分に合った保育施設がどんな特徴があるかを考えながら働けるというメリットもあります。
【元派遣保育士が語る】これから派遣保育士を目指す人へのアドバイス
私が派遣保育士を選んだ理由は、不妊治療と仕事の両立を目指していたからです。
これまで出会ってきた派遣保育士仲間の中にも、育児や介護と両立している方や、夢を追うためにあえて正社員ではなく派遣という働き方を選んでいる方が多くいました。
保育士の労働環境は少しずつ改善されているものの、今もなおハードな働き方を求められる場面は少なくありません。
もし、正社員としての働き方に疲れてしまったり、プライベートとの両立が難しく保育の仕事を諦めようとしているなら、「派遣」という選択肢は大いにアリだと感じています。
無理のない条件を派遣会社にしっかり伝えて、自分らしい働き方を見つけてくださいね。
まとめ
派遣保育士の時給が高い理由には、ボーナスや福利厚生がないこと、必要期間だけの雇用で安定性に欠けること、即戦力が求められるためにスキルが必要などのさまざまな要因がありました。
派遣保育士ならではのリスクと捉えるか、メリットとして捉えるかはあなたの叶えたい働き方次第です。
本記事をきっかけに、派遣保育士の働き方への理解を深め、自分らしい働き方を実現させてくださいね。
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