保育士は、子どもたちの健やかな成長を支え、特に共働き世帯には必要不可欠な存在です。
ですが、世間のイメージに「誰でもできる簡単な仕事」「低賃金」「常に人手不足」などがあることから、保育士資格は国家資格じゃないと思っている人も少なくないでしょう。
本記事では、国家資格の保育士資格について詳しく解説し、さまざまな取得方法もお伝えします。
これから保育業界でキャリアを積んでいくことを検討中の方や保育士資格取得を目指す方は、ぜひ最後までお読みください!
- 保育士は平成15年から国家資格!
- 保育士資格を取るためには、指定保育士養成施設を卒業して卒業と同時に資格を取得する方法がある
- もう1つの方法は、試験に合格することで保育士資格を取得する方法がある
- 保育士試験を受けるためにはさまざまな条件がある

保育士資格試験を受けるためにもさまざまな条件をクリアしないと試験さえ受けられません!
さすが国家資格ですよね。


ちあき
認可保育園で勤務後退職して留学。その後は英語の幼稚園で働く。結婚を機に派遣保育士に転身し、さまざまな園で経験を積む。保育士歴は通算7年ほど。
子どもが重度アレルギー児になったことでライターに転身した2児の母。


保育士資格は国家資格!
保育士資格は、児童福祉法の一部改正により平成15年11月から国家資格となりました。
法改正をして、保育士資格を持たない者が保育士や保育士に似た紛らわしい名称を使ってはならないという名称独占規定、守秘義務、信用失墜行為の禁止なども規定されました。
つまり、保育士資格がある人だけしか保育士を名乗れません。
児童福祉法第18条の4には、「保育士とは、保育士の登録を受け、保育士の名称を用いて、専門的知識及び児童の保護者に対する保育に関する指導を行うところを業とする者をいう。」とあります。
乳幼児の保育や保護者への支援を行う専門職として国が認めている資格なのです。
参照:保育士の仕事
保育士資格を取るための2つのルート
指定保育士養成施設を卒業することで資格取得が可能
保育士資格を取得する一般的な方法は、全国で675ヶ所ある厚生労働省が認定した指定保育士養成施設で定められたカリキュラムを修了して、卒業することです。
指定保育士養成施設には、大学や短大、専門学校などがあり、通信教育や夜間学部がある学校もあるので、ご自身の家庭環境などに合わせて自由に選択することが可能です。
内容は、保育の基本知識や実践的な保育技術、実習なども含まれており、知識と実践を網羅的に学ぶことで現場で活かせるスキルを身につけます。
養成施設を卒業した後は、試験を受けることなく保育士資格を取得できます。
保育士試験を受験し合格する
保育士試験は、指定保育士養成施設を卒業していない場合でも資格を取得できる唯一の方法です。
受験資格には、おおむね短期大学卒業程度とありますが、最終学歴が高等学校卒業であってもある基準をクリアすることで受験資格は得られます。
詳しくは次の章でお伝えするのでご覧くださいね。
試験は年に2回実施され、筆記試験と実技試験で構成されています。
筆記試験では、保育に関する幅広い知識が問われ、実技試験では音楽や造形、言語表現などの実践力が評価され、合格すれば保育士資格を取得できます。
保育士試験について詳しく解説!
保育士試験の試験内容
試験は筆記試験と実技試験の2部構成です。
最初に筆記試験が行われ、科目は下記の通りです。
- 保育原理
- 教育原理
- 社会的養護
- 子ども家庭福祉
- 社会福祉
- 保育の心理学
- 子どもの保健
- 子どもの食と栄養
- 保育実習理論
合格基準は全体の60%以上の得点とされています。
筆記試験科目全てに合格すると、次の実技試験を受けることが可能です。
試験内容は、音楽、造形、言語の3分野から2つを選択となっており、実際の保育現場で求められるスキルを評価します。
試験は前期・後期の年2回!
試験は、前期と後期の年2回実施されており、受験機会が比較的多いのが特徴です。
年に2回試験が行われることで、忙しい社会人の受験者であっても予定を合わせやすく、挑戦するハードルが少し低くなりますね。
また、筆記試験で不合格になった場合、一部の科目に合格していれば次回以降に合格した科目を持ち越せます。
筆記試験で合格した科目の有効期限は、合格した年を含めて3年間と定められており、有効期限内に残りの科目を合格すると、試験全体の合格が可能です。
保育士試験の受験資格
参考:https://relax-job.com/more-health/13409
大学卒業・在学中のケース
大学卒業、または大学在学中の場合、保育関連の学部や学科を卒業していなくても保育士試験の受験資格を得られます。
大学在学中なら、在学した実績が2年以上あり、62単位以上を修得完了していることが条件です。
年度中に62単位以上修得できなかった時、または2年間在学しなかった場合は合格となりません。
受験を決める前によく確認をしてくださいね。
短大卒業・在学中のケース
短期大学卒業の場合、保育業界に関連しない学科でも、保育士試験の受験資格を取得可能です。
短期大学に在学中であっても、受験資格はありますが、年度内に卒業できなかった時は、保育士試験に合格していても無効となってしまうので注意が必要です。
もし、短期大学在学中に資格の取得を目指すなら、確実に卒業要件を満たすよう履修している科目を確認し、短期大学の勉学と保育士試験の学習の両立をすることが重要になります。
専門学校卒業・在学中のケース
専門学校を卒業者の場合、以下の基準をクリアしていれば、保育に関連のない学科でも受験資格は得られます。
- 学校教育法に基づいた専修学校であること
- 卒業した課程が修業年限2年以上の専門課程であること
上記をクリアしていれば、受験資格が認められます。
また、在学中の場合、上記の基準をクリアしていれば受験資格はありますが、年度内に卒業できなかった場合は、たとえ試験に合格していても無効となってしまうので注意が必要です。
高校卒業のケース
高校卒業者の場合、以下の条件をクリアしていれば受験資格を得られます。
・平成3年3月31日以前に高等学校を卒業している場合
・平成3年4月1日以降に高等学校を卒業した場合
保育科の高等学校を平成8年3月31日以前に卒業していること
・保育科以外を卒業、または保育科を平成8年4月1日以降に卒業している場合
該当の施設で2年以上かつ2880時間以上の実務経験が必要
- 保育所
- 保育所型認定こども園
- 幼保連携型認定こども園
- 児童厚生施設
- 児童養護施設
- 助産施設
- 乳児院
- 母子生活支援施設
- 障害児入所施設
- 児童発達支援センター
- 児童心理治療施設
- 児童自立支援施設
- 児童家庭支援センター
中学卒業のケース
中学卒業の場合でも、一定の実務経験を積むことで、保育士試験の受験資格を得ることが可能です。
受験資格を得るためには、5年以上かつ7200時間以上の実務経験が求められます。
5年で7200時間をクリアするためには、1ヵ月あたり120時間働くことで達成できるでしょう。
下記は、児童福祉法第7条にもとづく児童福祉施設が実務経験を積む場所の対象です。
- 保育所
- 保育所型認定こども園
- 幼保連携型認定こども園
- 児童厚生施設
- 児童養護施設
- 助産施設
- 乳児院
- 母子生活支援施設
- 障害児入所施設
- 児童発達支援センター
- 児童心理治療施設
- 児童自立支援施設
- 児童家庭支援センター
外国の学校卒業したケース
外国の学校卒業者の場合、日本と教育制度が異なるため、保育士試験受験資格者に該当するか事前確認が必要です。
事前確認は時間がかかる時があるので、受験申込日開始前までに早めに行いましょう。
ですが、以下に当てはまる場合は、受験資格があるため事前確認は不要です。
- 平成3年3月より前の日本の高等学校卒業者
- 日本の短期大学や大学、専門学校卒業者
- 日本の高等学校卒業しており、児童福祉施設で2年以上2880時間以上、児童の保護に従事した者
- 児童福祉施設で5年以上、7200時間以上の時間を児童の保護に従事した者
もし、受験資格の有無が不安な場合は、早めに試験機関に問い合わせて確認することをおすすめします。
勤務経験から受験資格を得るケース
実務経験でも条件を満たせば、保育士試験受験資格を取得できます。
高校卒業者であれば以下の条件になります。
- 2年以上の勤務実績
- 2880時間以上の総勤務時間
- 児童等の保護または援護に従事
一方で、高校卒業者ではない場合、条件は以下のとおりです。
- 5年以上の勤務実績
- 7200時間以上の総勤務時間
- 児童等の保護または援護に従事
どちらのケースも、児童福祉法第7条に基づく児童福祉施設での勤務が求められます。
資格取得を目指す際は、自身の勤務状況が条件をクリアしているかを確認しましょう。
保育士試験の直近3年間の合格率
保育士試験の合格率は、約20~30%の間で推移しています。
具体的には、令和5年の合格率は26.9%、令和4年は29.9%、令和3年は20.0%と年ごとに多少異なります。
試験に合格するためには筆記試験と実技試験の両方をクリアする必要があり、試験内容も多岐にわたるため、計画的かつ効率的な学習が必須です。
特に、筆記試験で科目ごとに合格を重ねていく戦略が有効です。
保育士試験に合格するための必要な勉強時間
保育士試験に合格するには、平均して300時間以上の学習時間が必要といわれています。
試験科目は幅広く、子どもの発達や福祉、教育理論など多岐にわたるため、効率的な学習計画が鍵となります。
まずは、科目ごとの範囲や難易度を把握し、自分に合った教材を選びましょう。
また、筆記試験と実技試験の両方をクリアする必要があるため、スケジュールを立てて計画的に進めることが成功のポイントです。
独学が難しい場合は、通信講座や予備校を活用するのもおすすめです。
【試験科目の免除あり!】特例制度が適応される資格とは?
幼稚園教諭免許状を有する者
幼稚園教諭免許状所有者は、特例制度により保育士試験の一部科目が免除されます。
「保育の心理学」「教育原理」「実技試験」に加え、特例施設での「実務経験」によって「保育実習理論」も免除可能です。
また、指定保育士養成施設での学びによって他の試験科目も免除され、実務経験と学びの順番は問いません。
さらに、幼保連携型認定こども園で2年以上かつ2880時間以上勤務した場合、追加の単位修得が認められる特例措置も設けられています。
参照:特例制度について(幼稚園教諭免許状を有する者における保育士資格取得特例)
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士を有する者
社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士のいずれかの資格所有者は、「社会的養護」「子ども家庭福祉」「社会福祉」の筆記試験が免除されます。
また、指定保育士養成施設で科目履修を修得した場合、施設が発行する「免除科目専修証明書」を提出することで、筆記試験の一部または全部、さらに実技試験が免除可能です。
ただし、成績証明書では免除されず、証明書の内容や有効期限にも注意が必要です。
免除対象科目については、卒業した施設で確認を行いましょう。
参照:社会福祉士・介護福祉士・精神保健福祉士資格所有者の免除について
まとめ
保育士資格は国家資格であり、社会的信頼が高い専門資格です。
取得するためには、指定の養成施設で学ぶか、保育士試験に合格する必要があります。
本記事では、保育士資格の取得を考えている方が自分に合った方法を選び、資格取得のための第一歩を踏み出す際の参考になるよう、資格取得の方法、試験内容、さらに特例制度について詳しく解説しました。
保育士資格を取得して、子どもたちの未来を支える道を切り開きましょう。
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