最近保育の求人票などでよく目にするようになった「児童発達支援管理責任者」という仕事が気になる方も多いのではないでしょうか。
児童発達支援管理責任者は、障がいのある子どもたちの支援計画を作成し、適切なサービス提供を管理・調整する専門職です。
資格を取得するためには、実務経験と研修の修了が必要で、最短でも数年の時間がかかります。
本記事では、児童発達支援管理責任者の仕事内容、資格取得までの最短ルートについて詳しく解説します。
これから児童発達支援管理責任者を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
- 障がい児の保育や療育分野のスペシャリストであり、施設で働く職員への指導や助言を行う仕事
- 資格を取るためには最短で約7年間かかる
- 資格を取るためには、3つのルートがある
- 実務経験以外にも研修が必要
- 研修期間は2年以上と長かったが、短縮されて条件を満たせば6ヶ月になった

ちあき
認可保育園で勤務後退職して留学。その後は英語の幼稚園で働く。結婚を機に派遣保育士に転身し、さまざまな園で経験を積む。保育士歴は通算7年ほど。
子どもが重度アレルギー児になったことでライターに転身した2児の母。

最近、保育系の求人票でも見かけるようになった児童発達支援管理責任者。本記事では、資格取得に必要な経験年数や具体的に必要な資格などを整理したので、これから保育士以外のキャリアも計画的に考えていきたい人はぜひ参考にしてください!


児童発達支援管理責任者はどんな資格?
児童発達支援管理責任者は、「児発管」とも呼ばれている、障がい児の保育や療育分野のスペシャリストです。
児童福祉法によって幅広い障がい者支援施設での勤務ができます。
障がいのある子どもたちのニーズに応じた支援計画を作り、サービス提供の質を管理・向上させる役目を担い、児童発達支援施設には1人以上配置することが決められています。
施設を利用する児童や家族へのサポートだけでなく、施設で働く職員への指導や助言を行うリーダー職です。
児童発達支援管理責任者の主な仕事内容
児童発達支援管理責任者は、障がいのある子どもたちのサポートから、保護者への相談支援、地域の連携機関との連携や施設で働く職員の指導など幅広い仕事を行います。
どれも専門的な知識と経験が求められる難易度の高い仕事です。
以下で、メインの業務内容を詳しく解説しますので、これから目指していく方は参考にしてください。
個別支援計画作り
主な業務の1つとして挙げられるのは、個別支援計画の作成です。
施設を利用する子どもたちは、それぞれ障がいの程度や発達状況がさまざまです。
したがって、今の課題を把握しつつも子どもの発達を考慮して、家族とも話し合いながら支援内容や目標を設定します。
子どもや保護者との面談を通して情報収集を行い、具体的な支援方法や目標を明確にするのが計画作成の際のポイントです。
また、計画は定期的に見直し、必要に応じて修正を行います。
利用児童と保護者からの相談
子育てに悩みは付き物ですが、障がいのある子どもの子育ては保護者にとって、さらに多くのことを悩み、不安になりがちです。
児童発達支援管理責任者は、施設を利用している子どもやその保護者からの相談に応じ、適切な助言や情報提供を行います。
例えば、子どもの発達に関する不安や、家庭での対応方法など、幅広い相談に対応することで、保護者の不安や悩みを軽減が可能です。
よって、施設と家庭の連携がスムーズになり、一貫した支援体制の構築に繋がります。
地域の関係機関と家族を繋ぐ役割
地域の関係機関との連携も、重要な役割の1つです。
子どもや保護者がスムーズに必要としている支援を受けられるように、間に入りさまざまな関係機関への情報伝達や支援内容を確認します。
- 医療機関
- 教育機関
- 行政機関
子どもにとって最適な支援体制でサポートしていくために、子どもの状況をしっかり理解している児童発達支援管理責任者が中心になって進められます。
療育スタッフへの指導・助言
児童発達支援管理責任者は、豊富な知識と経験を持つ専門職として、施設で働く療育スタッフへの指導や助言を行います。
療育スタッフが子どもたちに適切な支援を提供できるよう、専門的な知識や技術の提供だけでなく、時には研修の企画・実施を行います。
また、施設で働くスタッフ間の連携がスムーズになるよう促し、一丸となって効果的な支援を提供できる環境づくりをサポートします。
児童発達支援管理責任者の資格を得る最短ルートは?
- 相談支援業務に通算5年以上
- 直接支援業務に通算8年以上
- 特定の資格保有者として相談支援・直接支援業務に通算5年以上
- 実務経験のうち、老人福祉施設と医療機関等以外に3年以上
児童発達支援管理責任者になるためには、上記のような一定の実務経験が求められます。
しかし、上記は「実務経験」の要件のみです。
資格を取るための道のりは長く、実務経験の他にいくつかの研修を受け、それぞれ受講資格の条件もあります。
結論からお伝えしますと、資格を得るまでには最短でも7年程度かかります。
詳しくは以下で解説しますので、参考にしてください。
相談支援業務ルート
児童発達支援管理責任者になるためのルートのひとつに「相談支援業務ルート」があります。
障がいを持つ方や環境的な理由で生活に支障をきたしている方に対して、日常生活の自立を支援する相談業務を行うことで、将来的に資格取得を目指します。
相談支援業務の経験を5年以上積むことで、児童発達支援管理責任者の資格要件を満たすことが可能です。
ただし、業務に従事するには一定の資格が必要となるため、次の項目で詳しく解説します。
相談支援業務の従事者が必要な資格
相談支援業務ルートで児童発達支援管理責任者の資格を取得するためには、以下のいずれかの資格を持っている必要があります。
資格がない場合、相談支援業務として認められないため、注意が必要です。
- 社会福祉主事任用資格
- 訪問介護員(介護職員初任者研修)2級以上
- 児童指導員任用資格
- 保育士
- 精神障害者社会復帰施設指導員任用資格
- 指定の国家資格(医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、精神保健福祉士)を有する者
資格を取得することで、資格取得への道が開けます。
相談支援業務の該当施設
相談支援業務の実務経験として認められるのは、以下の施設および事業での相談業務です。
- 障害者支援事業
- 身体(知的)障害者相談支援事業
- 地域生活支援事業
- 児童相談所
- 児童家庭支援センター
- 身体(知的)障害者更生相談所
- 発達障害者支援センター
- 福祉事務所
- 保健所
- 市町村役場
- 障害児入所施設
- 乳児院
- 児童養護施設
- 児童心理治療施設
- 児童自立支援施設
- 障害者支援施設
以下の施設での相談支援業務は、一定期間の実務経験としてカウントされませんので注意してください。
- 老人福祉施設
- 精神保健福祉センター
- 救護施設および更生施設
- 介護老人保健施設
- 地域包括支援センター
相談支援業務にみなされる要件
相談支援業務として認められるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- 障害福祉センターや障害者就業・生活支援センターで就労支援に関わる相談業務に従事している
- 学校教育法第1条に規定する大学を除く学校で進路指導や教育相談業務を行う
- 都道府県知事が相談支援業務に準ずると認めた業務に従事している
上記の要件を満たしていれば、児童発達支援管理責任者の資格取得に必要な実務経験として認められます。
直接支援業務ルート
児童発達支援管理責任者になるためのルートのひとつに「直接支援業務ルート」があります。
このルートは、障がいを持つ人に直接的な支援を行う業務を5年以上(資格を持っていない場合は8年以上)経験することが求められます。
具体的には、食事・入浴・排せつなどの介助、生活支援、運動機能訓練、療育プログラムの提供などが該当します。
また、支援を行うスタッフのレベル向上のための指導や助言も含まれています。
直接支援業務の従事者が必要な資格
直接支援業務ルートで児童発達支援管理責任者の資格を取得するためには、以下のいずれかの資格を持っている場合、5年以上の実務経験が必要です。
資格を持たない場合は8年余りの経験が求められます。
- 社会福祉主事任用資格
- 訪問介護員(介護職員初任者研修)2級以上
- 児童指導員任用資格
- 保育士
- 精神障害者社会復帰施設指導員任用資格
- 指定の国家資格(医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、精神保健福祉士)を有する者
資格を持っていない場合、8年以上の直接支援業務の実務経験が必要です。
資格取得による要件短縮を検討することも資格取得へ近づく方法の1つです。
直接支援業務の該当施設
直接支援業務として認められている実務経験は、以下の施設および事業での支援業務です。
- 障害児入所施設
- 助産施設
- 乳児院
- 母子生活支援施設
- 認可保育所
- 幼保連携型認定こども園
- 児童厚生施設
- 児童家庭支援センター
- 児童養護施設
- 児童心理治療施設
- 児童自立支援施設
- 障害者支援施設
- 老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 病院・診療所の療養病床
- 保険医療機関
- 訪問看護事業所
- 障害者通所支援事業
- 放課後児童健全育成事業
- 小規模居住型児童養育事業
- 病児保育事業
直接支援業務として勤務した経験が5年以上必要なので注意しましょう。
直接支援業務にみなされる要件
以下の条件に当てはまっているケースは、直接支援業務として認められます。
- 特例子会社や重度障害者多数雇用事業所で就業支援業務を行っている
- 学校教育法第1条に規定する大学を除く学校で進路指導や教育相談業務を行う
- 都道府県知事が直接支援業務に準ずると認めた業務を行っている
上記の要件をクリアしていることで、資格取得に必須な実務経験として認められます。
ただし、勤務年数や施設の種類によっては対象外となる場合もあるため、事前に確認しておきましょう。
国家資格ルート
児童発達支援管理責任者の資格取得には、下記の要件が必要になります。
- 指定の国家資格を持っていること
- 資格に基づく業務に5年余り関わっていること
- 相談支援または直接支援の実務経験が3年余りあること
また、実務経験の期間は年単位で求められますが、1年間に180日以上の従事が必要とされています。
したがって、非常勤やパートでの勤務の場合は日数換算に注意が必要です。
過去の職歴も含め、各事業所で実務経験を証明できる書類を取得し、自分が要件をクリアしているか事前に確認しましょう。
該当の国家資格
国家資格ルートでは、以下の国家資格を有していることが求められます。
- 医師
- 歯科医師
- 薬剤師
- 保健師
- 看護師 / 准看護師
- 理学療法士
- 作業療法士
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- 視能訓練士
- 義肢装具士
- 歯科衛生士
- 言語聴覚士
- あん摩マッサージ指圧師
- はり師・きゅう師
- 柔道整復師
- 栄養士・管理栄養士
- 精神保健福祉士
上記の資格を持つ方は、5年を超える業務経験があり、かつ3年を超える相談支援または直接支援業務の経験があれば、要件を満たせます。
該当する業務経験があるか、事前に確認しておきましょう。
全ルートに共通の研修とOJT
- 基礎研修
- 2年間のOJT
- 実践研修
- 更新研修
児童発達支援管理責任者の資格を取得するには、すべてのルートで研修とOJTが必要です。
研修を受講し、実務経験を積むことで、専門知識やスキルを身につけます。
OJTは実際の業務を通じてスキルを磨く重要な期間となるため、十分な経験を積みながら資格取得を目指しましょう。
以前は、基礎研修に26時間、OJTに2年以上、実践研修に14.5時間と長い研修期間が必要でしたが、条件を満たしたケースでは短縮される措置も生まれました。
次の項目で条件を詳しくお伝えします。
令和3年度からOJTが6か月に短縮
- サービス管理責任者等が所属している事業所で、個別支援計画の原案作成までの業務を行う場合
- やむを得ない事情でサービス管理責任者等が不在の事業所において、サービス管理責任者等とみなして勤務し、個別支援計画作りなどの一連の業務を行う場合)
令和3年度の制度改正により、OJT期間が2年間から6か月に短縮されました。
ただし、短縮が認められるには要件を満たす必要があります。
参照:サービス管理責任者・児童発達支援管理責任者研修の対応について
まとめ
児童発達支援管理責任者の資格取得には、実務経験に加えて、研修やOJTが必要です。
特に最短ルートでも7年を超える経験が求められるため、計画的にキャリアを積むことが重要です。
令和3年度の改正によってOJT期間の短縮が可能となりましたが、適用条件があるため、希望したい場合は事前に確認しましょう。
資格取得を目指す方は、自分に合ったルートで効率的に進めていきましょう。
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