保育園における集団遊びは、子どもたちの社会性やコミュニケーション能力など、これから社会に出るために必要なスキルを育む機会です。
子どもたちは集団で遊ぶなかで、人と関わる力や自分を表現する力を体験を通して少しずつ学びます。
本記事では、子どもの発達段階を踏まえた集団遊びのねらいと、年齢別の具体的な遊びの例を元保育士が詳しく解説します。
保育士さん、保育を学ぶ学生さんはぜひ参考にしてくださいね。
- 子どもの遊びは、発達の流れがあり、それぞれ特徴がある
- 集団遊びでは、子どものコミュニケーション能力や社会性が育まれる
- 乳児期は集団遊びより、1人遊びがメインである

子どもの年齢、発達によって、できる集団遊びは変化するものです。
ここでは遊びの発達にも触れていますので、ご自身のクラスの子どもを思い浮かべながら、どんな集団遊びを取り入れるか考えてみてくださいね。


ちあき
認可保育園で勤務後退職して留学。その後は英語の幼稚園で働く。結婚を機に派遣保育士に転身し、さまざまな園で経験を積む。保育士歴は通算7年ほど。
子どもが重度アレルギー児になったことでライターに転身した2児の母。
集団遊びとは
集団遊びとは、子どもの遊びをカテゴライズしたときに分類される遊びの型のひとつです。
子どもが共通の目的やルールのもとで、友達と一緒に遊ぶことを主に集団遊びと呼びます。
遊びの中で、子どもたちはお互いに協力したり、言葉でコミュニケーションを取ったり、時には遊びのルールを追加・変更したりしながら、社会性や協調性を育みます。
例えば、鬼ごっこでは、鬼と逃げる人に分かれ、それぞれが役割を守って遊びます。
これも集団遊びのひとつです。
集団遊びへ発達する流れ
子どもは、最初から集団遊びができるわけではありません。
0歳児クラスの子どもがいきなり共同遊びをするのは無理なように、遊びが発達していくためには、年齢的な要素も関わっています。
具体的な遊びの発達の流れを見てみましょう。
- 1人遊び(自分だけで遊ぶ)
- 傍観遊び(周りの子を見ている)
- 平行遊び(近くで同じ遊びをするが積極的には関わっていない)
- 連合遊び(会話や物のやり取りがある)
- 共同遊び(役割分担や目的共有がある)
例えば、0歳児は目の前の玩具で1人遊びをしますが、2~3歳児頃になると友達と簡単なルールのある遊びを楽しむ平行遊びが見られるようになります。
このように、遊びの発達には順序があり、集団遊びはその中の連合遊びと共同遊びに該当すると言えるでしょう。
保育園の集団遊びで育つ力
保育園での集団遊びには、子どもの成長に欠かせない成長ポイントがたくさん詰まっています。
昨今は少子化で、きょうだいがいない子どもも多いため、保育園で同年代の子どもと関わる遊びは子どもにとっても価値のある時間です。
本章では、集団遊びを通して育まれる3つの力に注目して解説します。
社会性が育まれる
集団遊びを通して、子どもたちは「友達と関わる楽しさ」や「一緒に過ごす心地よさ」を体験し、その中で社会性が育まれます。
友達との関係の中で、感情をコントロールしたり、時には主張したり、譲り合ったりする力が自然と育まれていくのです。
例えば、子どもたちから「○○役は順番こでやろう!」「一緒にやろう!」などの言葉が聞こえてきたら、社会性がぐんと育ってきた証拠です。
今まで自分中心だった世界に、友達という存在が加わり、他者と関わってどう遊びを楽しむか試行錯誤しながら社会性を習得してます。
コミュニケーション能力が磨かれる
遊びの中で、子どもたちは自分の思いを言葉で伝えたり、相手の気持ちをくみ取ったりする練習を重ねます。
例えば、1歳児クラスや2歳児クラスの子どもでは、まだ言葉が出始めたばかりで自分の気持ちを一方的にしか伝えられないケースが多いです。
言葉の発達が進み、2歳児クラスの後半~3歳児クラスになると、自分の気持ちを言葉で伝えようとし、もっと年齢が高くなると相手の表情から気持ちを考える力が育ちます。
気持ちが通じたときの喜びは、コミュニケーションスキルが育った瞬間とも言えるでしょう。
ルールへの理解を示す
「ルールを守る」ことは、私たち人間が社会で生きていくうえで欠かせない力です。
集団遊びの中では、ルールに基づいて行動する機会がたくさんあります。
- 順番を待つ
- 役割を引き受ける
- 貸し借り
- 片付け
- 負けを認める など
ルールを守るからこそ楽しく遊べる、またはルールを守らなかったため遊びが成立しなかった体験を経て、子どもたちは遊びの中でルールを守ることを学んでいきます。
【年齢別】保育園で集団遊びを行うねらいと遊びの例
子どもの遊びは、年齢によって大きく異なります。
したがって、集団遊びとして行う際に掲げるねらいや取り入れる遊びも変わってきます。
本章では、年齢別に発達段階に合わせた集団遊びのねらいと遊びの例を紹介します。
保育の計画や日々の実践にぜひ役立ててください。
0歳児・1歳児・2歳児の集団遊びのねらい
乳児期の子どもはまだ1人遊びが中心です。
保育所保育指針でも、友達と関わって遊ぶ集団遊びは、基本的に3歳以上からとされています。
だからといって、集団遊びはまだ早いと切り捨てるのはもったいないです。
1人遊びが中心だとしても、子どもたちは友達の存在を認識し、刺激されていることも少なくありません。
これから、子どもの遊びが健やかに育っていくように種まきする時期と捉えることが大切です。
遊ぶ中で人との関わりに気づく経験が、集団遊びへの土台となります。
0歳児・1歳児・2歳児の遊びの例
0歳児クラスでは、月齢に合った遊びを行うのがおすすめです。
1歳児、2歳児になると、友達の存在を認識し、意識するようになります。
例えば、屋外だったら砂場遊び、室内だったらおままごと遊びがおすすめです。
似たようなおもちゃをできれば子どもの人数分、難しいようなら充分な個数用意しておくと、子ども同士の関わりはないものの、同じ場所で同じおもちゃで遊ぶ平行遊びが見られることもあります。
3歳児の集団遊びのねらい
3歳は、平行遊びから友達との関わりを持つ連合遊びへと発展していく時期です。
友達と一緒に遊ぶ楽しさを知り、お互いの気持ちを伝え合う経験を通して、社会性の基礎を育むことをねらいとするのがおすすめです。
まだまだコミュニケーションスキルが未熟なため、自分の主張が強い言葉で出る子どもも少なくないので、コミュニケーションにフォーカスしたねらいを取り入れるのもよいでしょう。
3歳児の遊びの例
3歳児は、友達との関わりが深まり、簡単なルールのある遊びを楽しめるようになる時期です。
順番を守る意識やルールのある遊びの楽しさを体験する良い機会となります。
- 椅子取りゲーム
- ハンカチ落とし
- じゃんけん列車
まだまだルールに沿った遊びが難しいこともあります。
保育士が「〇〇ちゃんの番だよ」「次は〇〇してみようか」などと声をかけながら進めましょう。
また、見立て遊びを通してのやり取りも活発になります。
- お店屋さんごっこ
- 電車ごっこ
「いらっしゃいませ」「ください」といった言葉のキャッチボールを楽しんだり、「出発します」「次はどこに停まりますか?」などと想像力を膨らませたりして、友達との共通のイメージを持ち、役割意識を育むのに役立ちます。
保育士も積極的に参加し、声をかけることで、子どもたちの遊びをさらに広げることができるでしょう。
4歳児の集団遊びのねらい
4歳児は、友達と共通の目標に向かって協力する連合遊びや、役割分担をして遊ぶ共同遊びが活発になる時期です。
目標を達成したいがためにズルをしてしまったり、友達同士のトラブルが増えたりしがちですが、その分友達同士での関わりへの気持ちも高まっています。
自分の気持ちを伝えることはもちろん、友達の話を最後まで聞くことや、お互いに助け合うことをねらいに取り入れるのがおすすめです。
3歳児クラスの時より一段と深い人間関係を築いていきます。
4歳児の遊びの例
4歳児は、ルールのある遊びを通して体を動かす楽しさを知り、友達との連携が深まる遊びがおすすめです。
- ドッジボール
- けいどろ
- フルーツバスケット
ルールを理解する、守ることからさらに一歩踏み込んで、どうしたら楽しいゲームになるチーム分けができるかを考えたり、新しいルールを追加したりする楽しさもあります。
簡単な劇遊びや共同制作も、取り組めるようになります。
特に、劇遊びでは、役になりきって表現することの楽しさを味わいながら、みんなで1つの劇を作りあげる体験もできます。
保育士は、子どもたちの 気持ちを尊重し、見守りながら必要に応じてサポートすることで、遊びをより豊かなものにするサポートを行いましょう。
5歳児の集団遊びのねらい
5歳児は、友達と協力して目標を達成する喜びや達成感を深く感じられるようになります。
集団遊びのねらいは、4歳児の時より高度な社会性に注目したものがおすすめです。
- 相手の気持ちを想像して、時には譲ることを学ぶ
- 自分と違う意見に出会っても、自分たちで解決しようとする
遊びの中で、友達の気持ちを理解したり、協力したり、共通の目標を達成するなどの体験をして、より豊かな人間関係を築けるようにサポートしていきましょう。
5歳児の遊びの例
運動会での出し物やリレーなどは、子どもたちが目標に向かって力を合わせる絶好の機会です。
チームで協力し、作戦を立て、それぞれの役割を果たす中で、連帯感や責任感が育まれます。
「最後まで諦めずに頑張る」という経験は、大きな達成感と自信につながるでしょう。
また、劇や合奏といったクラス全体で取り組む表現活動は、創造性や表現力を豊かにします。
幅広い活動を通して、「みんなでやり遂げる楽しさ」を実感することが、5歳児の集団遊びの大きなねらいでもあります。
保育者は、子どもたちの自主性を尊重し、見守りながら必要に応じてサポートすることで、活動をより豊かな学びへと導けますよ。
【先輩保育士直伝】おすすめの集団遊びの例
2歳児クラス後半や3歳児クラスなど、ルールのある遊びを取り入れ始めて間もない頃におすすめなのが、椅子取りゲームやカードめくりゲームです。
どちらもルールが単純なので子どもたちが混乱しにくく、その上「勝った」「負けた」を体感できます。
もう少し年齢が高くなったら、子どもたち同士のコミュニケーションをたくさんできる余白がある集団遊びがおすすめです。
例えば、ごっこ遊びや子どもたちで何かを作る製作遊びなどは子どもたちの会話から新しいアイディアやルールが生まれ、遊びがどんどん発展していきます。
まとめ
保育園における集団遊びは、社会性やコミュニケーション能力が成長する機会です。
子どもたちの発達段階を見極めて、状況に応じたねらいと遊びを取り入れ、保育士として無理なく子どもの能力を育んでいきましょう。
時には積極的に介入し、時には見守りながら、子どもたちの遊びを豊かにするサポートをしていけるといいですね。
集団遊びを取り入れるときの参考になれば幸いです。
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