1歳児のトイレトレーニングは、排泄の感覚や習慣を育てる準備として捉えることが大切です。
保育園でのトイレトレーニングは、毎日の生活のリズムや子どもとの関わりの中で無理なく楽しく進めていけるような工夫が必要になります。
今回は、1歳児のトイレトレーニングのねらいと、保育園で実際に行われている進め方や工夫、関わり方のポイントなどを、具体的に解説しています。
- 1歳児のトイレトレーニングは、トイレを認識することから始まる
- トイレトレーニングは、自立へ向かうための基盤作りにとても重要
- トイレトレーニングを円滑に行っていくには、事前準備と家庭との連携が大切
- トイレに慣れることから始め、段階を踏んでいくことで安心感が生まれる

1歳児のトイレトレーニングは「トイレに慣れること」から始まります。
ついつい周りのこと比較して、焦ってしまう気持ちもありますが、一人ひとりの気持ちに寄り添いながら、安心できる関わりを大切にしてあげてくださいね。


Takako 元保育士ライター
保育士歴7年、現在は男女2児の母をしています。保育現場で培った経験や知識を活かし、悩んだり困ったりしている保育士の方、保育士を目指している方の力になれるような記事を心がけています。
トイレトレーニングとは?
トイレトレーニング(通称トイトレ)とは、赤ちゃんがオムツから卒業し、自分でトイレで排泄できるようになるまでの練習期間のことをいいます。
一般的には2歳前後から始めることが多くありますが、保育園では集団生活の中での流れやリズムを活かし、1歳児クラスから少しずつ排泄習慣を身につける取り組みを始めることもあります。
本記事では、1歳児の発達に合わせた無理のないトイレトレーニングの進め方について、保育現場での実践を踏まえて解説していきます。
1歳児の心と体の発達
1歳児は、心と体の両面で大きく成長する時期です。
つかまり立ちから、歩けるようになり、指先なども器用になってくるため様々なことを「自分でやってみたい」とする意欲が芽生えてきます。
また、排泄機能も徐々に発達してくるため、トイレトレーニングの準備が始まる時期でもあります。
こうした発達を理解し、丁寧に寄り添うことが大切です。
身体的な発達
この時期の子どもたちは、徐々につかまり立ちからひとり歩きへと発達していき、歩く、走るといった基本的な動きが少しずつできるようになります。
それにより、さまざまなものへの興味関心が広がり、活発に動くようになっていく時期です。
また、段差をのぼる、しゃがむ、などのバランス感覚や積み木を重ねるといった指先の発達も進んでいき、日常の中で自分の体をコントロールする力を身につけながら、運動機能が目覚ましく伸びていきます。
心の発達
1歳児は「自分でやりたい」という気持ちが強くなり、服を着ようとしたり、スプーンを使って食べようとしたりと身の回りのことに意欲的に取り組むようになります。
その反面まだ自分の気持ちをうまく言葉で伝えることが難しく、泣いたり怒ったりして感情を表現し、身近な大人に丁寧に関わり、受け止めてもらうことで、安心して感情を出せるようになり心の安定につながっていきます。
安心して関わることのできる大人の存在は、心の成長を支える大切な基盤です。
1歳児のトイレトレーニングへのアプローチ
1歳児のトイレトレーニングでは、排泄の自立を目指すのではなく、排泄の感覚や習慣づけを行う第一歩として捉えることが大切です。
子ども達の心と体の発達をふまえながら、無理なく「トイレに慣れる」「座る習慣をつける」など、一人ひとりのペースに寄り添った関わりが重要になってくるでしょう。
まずは「トイレって何?」を知るところから始める
1歳児のトイレトレーニングは「トイレはどんな場所かを知る」ことから始まります。
子どもによっては、初めての場所、少し閉鎖的な場所(プライバシー確保のため個室になっていたり、仕切りがあったりするため)、照明が少し暗くなっていたりすると不安になることがあります。
まずは、トイレの存在を知る、トイレに行ってみる、トイレでオムツを変えてみる、便器に座ってみる、などと段階を踏んでいきましょう。
保育者が楽しく声をかけたり、一緒にトイレに入ったりすることで、「トイレってこわくないんだ」「おしっこするばしょなんだ」と学んでいきます。
できるタイミングに寄り添う「待つ力」
子どもは一人ひとり発達のペースが異なります。
つい他児と比較してしまいますが「その子の今」に目を向けることがとても大切で、「きっとできるようになる」と信じて見守ってあげましょう。
できるまで待つ、挑戦を見守る、これらの「待つ力」は、大人にも求められる大切な姿勢で、子どもの心の成長に深く関わっています。
大人の待つ力は、子どもの自己肯定感や主体性を育てる大きなサポートになります。
「失敗=成長の一部」と捉える姿勢が重要
子どもが何かに挑戦するときに、失敗はつきものですが、その失敗こそが次の成長につながる大切なステップです。
「失敗=だめなこと」ではなく、「成長の一部」と捉える姿勢が大切です。
「よくがんばったね」「ここを持ってみたらどう?」など、保育者の前向きな声かけや関わり方を通して、子どもたちの心を支えてあげてください。
その丁寧な関わりが、子どもの挑戦しようとする意欲や自信に繋がっていきます。
トイレトレーニングのねらいとは?
トイレトレーニングのねらいは、排泄に対する興味や感覚を育て、自分の意思を言葉やしぐさで伝える力や、決まった時間にトイレへ行く習慣を通して、生活リズムを身につけることです。
こうした日々の関わりは、保育計画・指導計画の中で「子どもの心身の発達を支える大切な要素」となり、安心して自立へ向かうための基盤をつくります。
- 排泄に関する興味や意識を育てる
- 自分の気持ちや状態を感じ、伝える力を育てる
- 生活リズムを整える
- 身の回りのことをやってみようとする気持ちを育てる
- 清潔や快適さの心地よさを感じる
1歳児のトイレトレーニングに必要な準備
1歳児のトイレトレーニングは、無理に進めるのではなく、自然に排泄の習慣が身につくよう、環境を整えたり、必要な道具を準備したりすることがとても大切です。
トイレが嫌なものにならないよう、「できたこと」に注目してたくさん褒めてあげましょう。
具体的にどんな準備や心構えが大切なのか紹介しますので、参考にしてくださいね。
準備する用品
補助便座や踏み台は、足がしっかりついて安定して座れるように用意しましょう。
おしりふきやトイレットペーパー、着替えも事前に準備するなど、清潔さと安心感を保つためにもトイレトレーニングを行う際は、事前の準備がとても大切です。
また、漏らしてしまった時のためにすぐに対応できるよう、あらかじめ消毒セットや替えの洋服一式を保育者の手の届くところに用意しておくと安心です。
- 踏み台(必要に応じて)
- 補助便座(必要に応じて)
- 布製のパンツ(必要に応じた枚数)
- トイレットペーパー(一回分ずつにしておくと、使いやすい)
- 着替え一式(名前の書いたバンドなどで一つにまとめておくと見つけやすい)
- アルコールや床掃除をするための用具(漏らしてしまった時の対応用)
- 子ども用ベンチ (ズボンやパンツを履くため)
トイレ内の環境整備
保育園でトイトレを行う場合、トイレは子ども用の小さなものが設置されていると思いますが、必要に応じて補助便座や踏み台を用意してください。
足がしっかり地面(または踏み台)についていることで、バランスがとりやすくなり下腹部に力を入れやすくなるためしっかり確認しましょう。
シールカードやスタンプカード、子どもたちが興味のあるキャラクターを壁面や各トイレに貼っておくなどすると、トイレに対する不安感や恐怖感が薄れ、楽しくトイレに行くきっかけにもなりますよ。
保護者との情報共有
保護者との情報共有はトイレトレーニングを円滑に進めていくためには欠かせません。
家庭での様子や子どもの興味や不安、排泄のタイミングなどを把握し、保育園での取り組みと連携することで、一貫した支援が可能になります。
- 排泄のタイミングを共有する
家庭で「朝食後すぐにうんちがでることが多い」と分かれば、保育園でもその時間にトイレに誘い成功体験を積みやすくなる - おしっこに行きたい時のサインを共有する
「おしっこが出そうな時は、カーテンに隠れる」「股をおさえたり、落ち着きがなくなる」などがわかれば、タイミングを見逃さずにトイレに誘いやすくなる
このように、家庭とうまく連携を取りながら行うことで、子どものペースに合わせたトイレトレーニングを行うことができるようになります。
実際の保育現場での進め方とポイント
1歳児のトイレトレーニングは、発達や気持ちに寄り添いながら、日々の保育の中で少しずつ進めていくことが大切です。
まずは、トイレに慣れることから始めます。
座る習慣や排泄の感覚を育てていくためには、無理なく自然な流れで関わる工夫と、大人の「待つ姿勢」が必要不可欠です。
① トイレに慣れる
子どもによっては、トイレの閉鎖的な感じや水の流れる音などに恐怖心や不安感を感じてしまうことがあります。
そのため、まずはトイレを親しみやすい場所に整えて、絵本やシール壁面制作などを用いて明るく楽しい場所だと感じられるように意識しましょう。
各トイレに子どもたちの好きなキャラクターの壁面やポスターなどを用意しておくと、安心感がうまれやすくなりますよ。
- トイレの環境を整える
- 無理に誘わない
- トイレは楽しい場所だよと伝える
- 安心感を感じられるようにする
② トイレに誘う
排泄しやすい時間(食後・午睡前後・外遊びの前後など)に、自然な流れで優しくトイレに誘います。
「おしっこ出るかな?」「座ってみようか」など、安心できる言葉を選び、トイレに行けたこと、便器に座れたことなど子どもの挑戦に目を向けて小さな成功を褒めてあげることで次の意欲につながります。
本当に嫌がるなら、無理に誘うことはせず毎日決まった時間に「トイレ行こうか?」と声をかけてトイレを意識する瞬間を作るだけでも大丈夫です。
トイレが嫌な場所にならないよう配慮しましょう。
- 排泄しやすい時間帯でトイレに誘う
- 褒めて安心感を感じられるようにする
- プレッシャーにならないように意識する
- 嫌がる時は声をかけるだけで大丈夫
- 挑戦したこと、成功を褒めて意欲を育てる
③ 座る習慣をつける
初めのうちは、おしっこが出る感覚をつかむのは難しいものです。
子どもによっては、便器に座るとでないといった子もいるので、ここでは排泄がなくてもただ便器に座るだけで大丈夫です。
「座ってみようか」と声をかけ、短時間でも座る習慣を繰り返します。
そうすると「偶然おしっこが出た」という成功体験がうまれやすくなり、子ども自身が“出た”という感覚に気づくきっかけになります。
そうした経験を積み重ねることで、徐々に「出そう」「出た」という感覚と行動がつながり、排泄への意識が芽生えていきます。
- トイレ=安心して過ごせる場所にする
- ただ座るだけでも大丈夫
- 短時間でも便器に座る習慣を繰り返す
- 楽しい雰囲気で取り組む
- 成功やチャレンジをしっかり認めて褒める
④ トレーニングパンツへ移行
排泄の感覚が1〜2時間ほど空いてきたら、トレーニングパンツへ移行するタイミングの目安です。
その際は家庭と連携を取り、保護者の意向(帰りだけはオムツにしてほしいなど)を確認しながら、始めるタイミングを決めていきましょう。
子どもの活動内容や体調、外出先の状況に応じて、トレーニングパンツとオムツを上手に使い分けることも大切です。
失敗しても責めず、経験を次につなげましょう。
- 排尿間隔が空いたらトレーニングパンツへの移行の目安
- 保護者の意向を聞きながら、タイミングを決める
- トレーニングパンツは多めに用意してもらう
- 状況に合わせてトレーニングパンツとオムツを使い分ける
- 失敗しても責めないことが大切
保育園でのトイレトレーニングスケジュールの例
保育園でのトイレトレーニングは、生活リズムに合わせて無理なく進めることが大切です。
朝の登園時やおやつ前、食後、活動の前、午睡前後など、排泄しやすいタイミングで声かけを行います。
失敗しても叱らず、成功したらしっかり褒めることで、子どもが安心してトイレに親しめる環境をつくりましょう。
以下に保育園で行っているトイレトレーニングスケジュールの例を記載しますので、参考にしてください。
時間帯 | トイレへの誘導ポイント |
---|---|
登園後 | 登園時にオムツ確認・必要に応じてトイレへ |
9:00 | 朝の会・おやつの前に誘う おやつ前は排泄がおきやすいタイミング |
10:00 | 活動の前に誘う 活動に夢中になる前に誘導 |
11:00 | 昼食前にトイレへ誘う 昼食に夢中になる前に誘導 |
12:00 | 午睡前に誘う(午睡中はオムツ) 安心して眠れるようにする |
15:00 | 起床後にトイレへ誘う 起きた直後に排尿があることが多い |
16:00 | 遊び・降園前にトイレへ誘う 遊びの切り替え時や降園前に一度声かけして排泄を促す。 (オムツで帰る子はオムツに) |
1歳児のトイレトレーニング-よくある悩みに元保育士が回答
1歳児のトイレトレーニングは、「慣れること」から始めることが大切ですが、実際には思うように進まなかったり、個人差に戸惑ったりすることもありますよね。
ここでは、現場でよくある保護者や保育士の悩みに、元保育士の視点から具体的な対応や考え方をご紹介します。
ぜひ、参考にしてみてくださいね。
トイレそのものに抵抗がある
1歳児の中には、トイレの空間そのものに不安を感じる子もいます。
見慣れない場所、水が流れる音などが怖くて入れないこともよくあります。
その場合は、無理に座らせようとせず、まずはトイレの前まで行く、トイレの中を見てみる、保育者と一緒に入ってみるなど、段階を踏んで慣れていくことが大切です。
絵本やぬいぐるみを使って楽しい雰囲気をつくるのも効果的なので、子どもの気持ちを尊重し、安心できる関わりを心がけてあげましょう。



無理強いしてしまうと、トイレが嫌になってしまうかもしれません。
子ども達の不安な気持ちを受け止めて少しずつ、一人ひとりに合わせたペースで進めていきましょう!
おむつやパンツへのこだわりが強い
お気に入りのパンツや安心感のあるおむつに強いこだわりを示す子もいます。
変化に不安を感じているのかもしれません。
そんな時は、「こっちもかわいいね」「次はこれにしてみる?」など安心できる声かけや選択肢を用意することで、気持ちが切り替えやすくなります。
子どもと一緒に選んだり、ぬいぐるみに履かせてみたりと、楽しく慣れていける工夫も効果的です。



こだわりが強い子に対しては、無理に変えるのではなく、お気に入りのものを使いながらも、徐々に選択肢を広げていくことがポイントです。
子どもの気持ちを尊重しながら、安心できる関わりを心がけてくださいね。
言葉での排泄のサインがまだ曖昧
1歳児はまだ言葉で排泄を伝えるのが難しく、仕草や表情にサインが現れることが多くあります。
例えば、カーテンに隠れる、隅っこに行く、お腹をおさえる、そわそわしだすなど、子どもによってサインは様々あります。
その際に「おしっこ出そう?」「トイレ行ってみる?」など、日常的に繰り返し言葉をかけていくことで、排泄の感覚と言葉が少しずつ結びついていきます。



1歳児はまだまだ言葉で気持ちを伝えることが難しい時期です。
なので、子ども達の変化やサインをよく観察し、言葉にしてあげることがとても大切です。
焦らず、安心して伝えられる雰囲気づくりを心がけてくださいね。
保育士と保護者のやり方が違って混乱する
家庭と園の中とでやり方やペースが違うと、子どもは混乱してしまうこともあるため、トイレトレーニングは家庭と園の連携がとても重要です。
無理に統一する必要はありませんが、「園ではこうしてます」「家ではこうしています」とお互いの状況を共有し合うことで、子どもにとって一貫性のある声かけや対応がしやすくなります。
ちょっとした情報交換が、子どもの安心感につながりますよ。



トイレトレーニングでは、どちらかのやり方に合わせるのではなく、子どもにとって混乱が少ないよう、お互いに柔軟に対応していくことがポイントです。
保護者と丁寧に話し合い、負担の少ない方法を一緒に考えていけるといいですね。
まとめ
1歳児のトイレトレーニングは、安心できる環境の中で少しずつトイレや排泄をすることに慣れていく過程です。
失敗を責めずに受け止め「大丈夫だよ」と優しく声をかけることで、子どもの心は大きく育ち、次の意欲へとつながります。
一人ひとりのペースを尊重しながら、無理なく丁寧に関わり、自信に繋げてあげてくださいね。
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