「インクルーシブ保育」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。
多様性が重視されている今の時代、保育でも個性を尊重しながら、すべての子どもが同じ保育を受けられる取り組みをインクルーシブ保育と言います。
この記事では、インクルーシブ保育のメリットや大変さ、保育士が求められるスキルなどを詳しくご紹介します。
園で取り入れるために必要な準備についても説明しますので、ぜひ参考にしてください。
- 様々な子どもが同じ環境で同じ保育を受ける
- 保育士・子ども・保護者それぞれの理解が必要
- 専門知識を身につける必要がある
- 環境設備・人員配置が必要である
インクルーシブ保育に抵抗がある人もいますよね。すべての子どもが平等に支援を受けることができるので色々な成長を見ることができるのが魅力です。園で取り入れられるのか検討するためにも参考にしてくださいね。
インクルーシブ保育とは
インクルーシブ保育とは、子どもの国籍や宗教の違い、障害の有無にかかわらず、同じ空間・環境で一緒に過ごす保育のことです。
インクルーシブとは、英語で「包括的」「すべてを含んでいる」という意味です。
今までの保育は、障害があるかないかによってクラスが分けられ、障害のある子どもたちが集団生活を送るための支援が行われていました。
しかし、インクルーシブ保育では、発達などは関係なく、すべての子供たちに支援が必要だと考えられているので、子どもの個性を尊重しながら、同じ場所で一人ひとりに合ったサポートを行います。
インクルーシブ保育の目的
インクルーシブ保育の目的は、お互いの個性を受け入れ尊重し合うために、子どもたちが公平な教育を受けられるようにすることです。
社会に出ると、性別や年齢、国籍や宗教の違い、障害の有無などにかかわらず、たくさんの人と関わる機会があります。
子どもの初めての集団生活である保育園で、一人ひとりに違いがあると知り、関わり方を知ることで将来社会に出た時に偏見や差別を生まないようにする目的があります。
そのため、特定の子どもを特別扱いするのではなく、どうしたら一緒に遊んだり生活したりできるか考えられるよう保育します。
インクルーシブ保育において大切なこと【ポイント】
保育士自身の多様性への理解
保育士自身の多様性への理解が重要です。
子どもは身近な大人の行動をよく観察しているので、お手本となるべき保育士が誰か一人を特別扱いしていると、その行動や態度が伝染します。
偏見や差別がなく、共存していくことが目的なので、まずは保育士がそれぞれの個性を認め、すべての子どもに平等に接していくことが大切です。
そのため、多様性を理解し、クラスの子どもが一緒に活動できるように保育計画を立てる必要がありますね。
子どもの自尊心を大切にする
子どもの自尊心を大切にする保育を行うことで、心が豊かになり、より成長することができます。
すべての子供たちに支援が必要ですが、関わり方を間違えると「自分だけができない」と劣等感が生まれてしまいます。
また、保育士が特定の子にばかり関わっていると、「見てもらえていない」と感じさせてしまい、自尊心を傷つけてしまうことがあります。
前向きな気持ちになれるような、声掛けやサポートがポイントになります。
専門知識のある保育士の配置
手厚い支援を行うために、専門知識のある保育士の配置が必要です。
様々な子どもがいると、それぞれに合った準備やフォローをしなければなりません。
例えば、医療ケアの必要な子どもと、そうでない子の排泄の支援は異なるでしょう。
生活習慣一つひとつの行動が違うやり方になるため、きちんとした知識を持ってサポートすることが重要になります。
そのため、専門性の高い保育士の確保がインクルーシブ保育を行うポイントになります。
保護者の理解
保護者の理解がなければ成り立ちません。
様々な個性を持つ子どもが同じ場所で生活するということは、トラブルが起こる可能性も考えられます。
また、保護者の中には、教育の質が低下するのではないかと不安を感じる人もいるでしょう。
園の活動を細かく伝えたり、家庭の事情に寄り添ったりすることで、コミュニケーションを取り理解を得る必要があります。
保育園と保護者が良い関係を築くことが重要なポイントです。
インクルーシブ保育のメリット
様々な子供との接し方を学べる
インクルーシブ保育は、様々な子どもとの接し方を学べる機会がたくさんあります。
色々な個性を子どもが一緒に過ごすことで、お互いの状況を見て手を差し伸べたり、共に活動したりする方法を考えるきっかけになります。
例えば、宗教の違いで同じ行動ができない時には、どうすれば一緒に楽しめるか考えるでしょう。
そうすることで、自然と思いやりの気持ちを持ち、相手のことを尊重する気持ちなどが身につけられます。
多様性を学べる
年齢や国籍の違う子どもや、障害のある子どもが同じ空間で過ごすことで、多様性を学ぶことができます。
小さい時から一緒に過ごすことで、自分とは違う背景を持つ人がいることを知り、それを受け入れることが当たり前だと感じるようになります。
早いうちから知ることで、無意識な差別や偏見を持ちにくくなります。
子ども同士の理解が深まると、積極的にコミュニケーションを取るようになるので、一人ひとりが成長できます。
他人への思いやりや他者との違いの理解につながる
多種多様な子どもが一緒に過ごすことは、他人への思いやりや他者との違いの理解につながります。
様々な子どもが集まると、家庭での生活では経験しないような出来事があるでしょう。
保育士が他の子どもに関わっているところを見て、より自分との違いを実感することもあると思います。
日常的にその経験をすることで子ども同士も刺激を受け、さらに理解が深まります。
子どもも考え方が柔軟になっていき、成長できますね。
インクルーシブ保育の保育園や保育士側のメリットとは?
- 子どもに合わせた保育
- 専門知識が身に付く
- 経験値が上がる
- コミュニケーション能力が上がる
インクルーシブ保育は、必要な支援が違う子どもたちが一緒にいるため、保育士も子どもに合わせた接し方を学べます。
例えば、医療ケアの必要な子どもの食事は、異なるでしょう。
同じ場所、時間に食事をするにはどうすればいいのか事前に計画を立てたり、臨機応変に状況に合わせたりして進めますよね。
子どもに合う対応をすることで知識や経験が身に付き、スキルアップにもなります。
さらに、家庭との連携を密にするため、園での状況を保護者に伝えることで、コミュニケーション力も上がり保護者との関係の作り方が学べます。
インクルーシブ保育の保育士目線での大変さは?
専門知識やスキルだけでなく、環境設定の準備が必要になり保育士の負担も大きいと言えます。
受け入れられる環境がなければ、充実したサポートを行うことができず、同じ場所にいても別々の保育になってしまう可能性があります。
一緒に活動できないということは、子どもの心を傷つけることにもなりかねません。
特に障害があり医療ケアが必要な子には、専門知識が欠かせなく、改めて資格を取得したり、研修を受けたりしなければいけないこともあります。
すべての子どもを受け入れるためには、準備が必要になるので難しい点も多くあります。
インクルーシブ保育を取り入れるために
園側に必要な体制や準備
インクルーシブ保育を取り入れるためには、保育士の知識やスキルや環境整備など園側に必要な体制や準備があります。
園の共通認識として情報を共有したり、研修を行い学びを深めたりすることも大切です。
手厚いサポートをするためには、環境を整え整備を充実させたり、保育士の人数を確保したりしなければなりません。
また、保護者に方針を受け入れてもらい、さまざまな子どもたちが一緒に過ごしていく理解を得ることも重要です。
保育者に求められるスキル
- 障害や発達の理解
- 国籍や宗教の違いの理解
- コミュニケーション能力
- 臨機応変に対応する柔軟性
インクルーシブ保育を行うためには、保育士のスキルも重要になります。
まずは、子どもたち一人ひとりの障害や発達、国籍や宗教の違いについて理解しなければなりません。
背景を知っていることで、臨機応変に対応することができます。
保育士が柔軟に考えられることができれば、子どもたちものびのびと過ごしていくことができるでしょう。
保育士同士の情報交換や、保護者と連携することなどコミュニケーション能力も必要ですね。
まとめ
今回は、インクルーシブ保育の意味や目的・メリットや大変さ、保育士が求められるスキルなどについてご紹介しました。
障害の有無にかかわらず、すべての子どもを受け入れ保育を行うため、園で取り入れるために必要な準備も多くあります。
「やってみたい」という子どもの気持ちを潰さないように、自尊心を大切にしていくには園の充分なサポートが重要です。
社会に出た時に、差別や偏見なく多種多様な人と関わることに繋がります。
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