保育士は、女性のイメージがあり、男性保育士を見かけると珍しいと感じる人も多いのではないでしょうか。
最近では、男性保育士が勤務している園も増えてきて、職場環境が変化してきています。
今回は、実際の男性保育士の割合や給与、まだ人数が少ない理由などについて解説していきます。
- 男性保育士の割合や給与、なぜ少ないのか解説
- 男性保育士のメリットとデメリット、どんな男性が向いているか紹介
- 男性保育士のリアルな悩みや思いを調査
- 男性保育士がキャリアアップするための方法を紹介

女性だけでは気づけないことも男性がいることで発見できることもあります。男性保育士が働きやすい環境を作るためにぜひ参考にしてくださいね。


Yama 幼稚園教諭ライター
幼稚園教諭歴10年、保育士資格有。体を動かすことが好きで、一緒に走り回って遊んでいました。現在は2児の母をしながら、子育てと保育の経験を活かしてWebライターをしています。
男性保育士の現状は?
年々男性保育士が増えてきているとはいえ、実際に働いている男性の割合は3割程度で、まだまだ女性のイメージが強い職業です。
家庭の収入の柱となる立場になることが多い男性は、給料面での悩みがあることも事実です。
また、女性ばかりの職場なので環境が整っていないことも、働く男性が増えない一つの原因となっています。
男性保育士の割合ってどれくらい?
昔よりも、男性保育士が増えてきた印象がありますが、実際はまだ少ないのが現状です。
厚生労働省の「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模計(10人以上)の保育士の総数は31,760人。
また、令和6年4月1日時点で登録されている保育士の総数は、1,898,019人。
男性保育士の数は98,676人、女性保育士の数は1,799,343人です。
- 男性が約5.2%
- 女性が約94.8%
この結果を見ても、保育士の男女比は、女性が圧倒的に多いことがわかります。
男性保育士の給与は?
厚生労働省のデータによると、保育士全体の平均年収は約395万円です。
男性保育士に焦点を当てると、前年度の平均年収は407万円とされており、女性保育士よりも少し高いことがわかります。
施設規模による差異は少なく、100人以下の保育園でも年収約395万円と、ほぼ全体平均と同水準です。
ただし、一般的な男性の平均給与と比較すると、まだ少し低めであり、保育業界では待遇改善が今後の課題として考えられています。
男性保育士はなぜ少ない?
男性保育士が少ない理由は、以下が考えられます。
- 保育業界が長年女性中心の職場であること
- 給与が他の専門職と比べて低いこと
- 子どもの世話を男性に任せることに抵抗を感じる保護者がいること
「家計を支える役割は男性」「子育ては女性の仕事」という古くからの社会的なイメージが影響していると言えます。
また、おむつ交換や着替えなどで、子どもの体を男性に触られたくないという意見があることも関係しているでしょう。
男性保育士のメリットとデメリット【元保育士の率直な意見】
女性が多いとされる職場に、男性保育士がいることのメリットやデメリットについて解説していきます。
男性ならではの遊び方やかかわり方ができたり、防犯面で安心できる存在になれたりします。
一方で、女児の着替えやおむつの対応を任せるのは不安という声があることも事実です。
現場で感じることも合わせてご紹介します。
男性保育士のメリット
男性保育士が保育現場にいると、3つのメリットがあります。
- 体力面でのサポート
- 父親とのコミュニケーションの架け橋
- 防犯面での安心感
子どもたちを抱き上げたり、外遊びで活発に動き回ったりする時は、男性の体力が活かされます。
運動会の準備など、力仕事でも重宝される存在です。
子育てに悩むお父さんは「男性同士で相談しやすい」と感じられ、保育士の経験を活かしたアドバイスができます。
登園時や散歩中の見守りでは、男性の存在が抑止力として働くこともあるでしょう。
子どもたちは「男性の優しさ」や「頼りがい」を自然に学べるため、多様な人間関係を築く練習にもなります。
男性保育士のデメリット
男性保育士が活躍する一方で、デメリットもあります。
- 職場で男性が少ないため、居心地の悪さを感じること
- 女児とかかわる際に慎重な対応が求められること
- 職場環境が男性用になっていない場合もあること
- ピアノなどのスキルが求められる場面があること
女性中心の環境では、話しづらさや孤立感を抱く場合があったり、更衣室や休憩スペースが女性専用になっていたりすると不便を感じることがあります。
また、おむつ替えや着替えの場面では、保護者から不安や抵抗感を持たれることがあります。
特に女児に対しては配慮が必要です。
ピアノなどは苦手意識を持つ男性もいるため、負担を感じることもあります。
保育士に向いている男性はどんな人?
メリットとデメリットについて解説しましたが、実際に保育士に向いている男性はどんな人なのでしょう。
子どもが好きなことは大前提ですが、楽しいだけでは保育はできません。
子どもが泣いたり怒ったりしている時の対応や、保護者と話をしなければならないこともあります。
どんな男性が保育士に向いているのかご紹介します。
子どもが好きな人
保育士として働く上で、何よりも大切なのは「子どもが好き」という気持ちです。
子どもたちは日々成長しながら、様々な表情や行動を見せてくれ成長していきます。
一つひとつを一緒に喜べたり、興味を持って接したりできる人は、保育士としてのやりがいを強く感じられるでしょう。
また、子どもと遊ぶことが好きな人は、自然と園児との信頼関係を築きやすくなります。
子どもからの信頼を得ると保護者の安心にも繋がり、良い関係が構築できます。
根気強さや冷静さがある人
保育士の仕事では、「根気強さと冷静さ」が求められる場面がたくさんあります。
子どもたちは発達過程で感情の起伏が激しく、時には泣いたり怒ったりすることもあります。
焦らず冷静に対応できる人は信頼されやすいでしょう。
また、子どもたち一人ひとりのペースに寄り添いながら、根気よく関わることができることも大切です。
さらに、トラブルや予期せぬ出来事が起こりやすい保育現場で、落ち着いて判断し、適切な対応ができることも大きな強みになります。
コミュニケーション能力が高い人
保育士として働くには、子どもや保護者、同僚職員と上手く関われるコミュニケーション能力が重要です。
子どもと目線を合わせて話し、遊びを通じて信頼を築くことが大切です。
例えば、トラブルが起きた時は、どちらの気持ちも聞き解決策を考えます。
保護者には、子どもの成長を具体的に伝え、心配事に共感するなど寄り添う姿勢が信頼を得るきっかけになるでしょう。
また、他の保育士との関係では、「わかりやすく伝える」「チームで協力する」姿勢で取り組むことが必要です。
男性保育士のリアルな声を調査!男性保育士の悩みや思いとは?
実際に保育士として働いている男性が感じていることを調査しました。
なかなか女性ばかりの職場では本音が言えず、SNSで悩みを吐き出している人もいるようです。
女性側が力の面で頼りにしていても、男性側は大変な仕事ばかりになっていると感じていることもあります。
どうすれば、お互い気持ちよく働けるのかも合わせて考えてみました。
設備や備品が女性基準
男性保育士の切実な悩み
ビニール手袋のサイズLが園にない引用元:X(旧Twitter)
「ビニール手袋のLサイズが園にない」という切実な声があります。
備品のサイズが女性の手に合わせてあるため、手の大きい男性にとっては困っています。
排泄や嘔吐処理では手袋が必要なことも多いですが、破れやすく衛生面での不安を感じるでしょう。
さらに、更衣室やトイレなどの設備にも課題があります。
中には、着替えは「空き教室で急いで済ませる」といったストレスを日常的に感じている男性保育士もいます。
手袋の用意など、すぐに改善できることは取り組んでいき、女性も男性も気持ちよく働けるようにしたいですね。
力仕事ばかり任される
「男性保育士」の話題になると、「ダイナミックな遊びをしてくれるから」とか、「力仕事を」…のようなことがすぐに出てくると思うんだけど、って、「女性の繊細な感性で」と同様の見方。
引用元:X(旧Twitter)
「男性=力仕事が得意」という固定概念から、男性保育士のやる気や存在を否定している可能性があります。
女性保育士と比べればパワーがありそうだと思ってしまいますよね。
「絵本の読み聞かせ」や「細やかなケア」が得意という人も、周囲の思い込みから体力面での役割が強調されがちです。
保護者からも「ダイナミックな遊びを期待される」という声が聞かれます。
多様性が進む保育現場では、性別ではなく「個々の強み」で役割を分ける仕組みづくりが必要です。
給料が低い
「このままでいいのかな?」と給料日になるたびに感じていたあの頃。 管理職になるか、転職するか、もしかして…と貯金した時期もあった。 結婚するからやめますと去って行った男性保育士もたくさんいる。
引用元:X(旧Twitter)
男性保育士の中には「給料が心配になる」という声もあります。
少しずつ上がってきているとはいえ、全職種の男性平均と比べると保育士の給料は低めです。
将来を考えた時に、やりがいだけでは続けられず、結婚を機に転職する人が多いことも事実です。
給料を上げるために、男性保育士は公立園への転職や管理職への昇進を目指す人が多いでしょう。
給与面での改善は、男性保育士が安心して働ける環境を作る上で重要です。
男性保育士がキャリアアップするための方法
男性保育士の給与などの待遇を良くするためには、キャリアアップする方法があります。
保育士等キャリアアップ研修を受けて実績を積んだり、管理職や公務員保育士を目指すことで基本給を上げたりする方法です。
一つずつどんな内容なのか解説していきます。
男性保育士が働きやすい環境を作るための参考にしてくださいね。
保育士等キャリアアップ研修
「保育士等キャリアアップ研修」とは、研修を受けることによって技能を習得し、キャリアアップができる仕組みです。
専門的な分野に分かれていて、それぞれで学びを深めていき、リーダーや主任、園長などの管理職を育てる目的もあります。
保育士自身も、処遇改善の手当てが付き、給与アップとなるのでモチベーションの向上にも繋がっています。
専門分野別研修(6分野)
保育士のスキルアップを支援する「保育士等キャリアアップ研修」では、6つの専門分野別研修が用意されています。
- ①乳児保育
- ②幼児教育
- ③障害児保育
- ④食育・アレルギー対応
- ⑤保健衛生・安全対策
- ⑥保護者支援・子育て支援
年齢や発達に合わせた保育への理解を深め、適切な教育方法を学びます。
また、障害のある子どもへの理解と支援スキルを習得するだけでなく、感染症対策や事故防止を徹底しながら、食育計画の作成やアレルギー対応も一緒に学びます。
これらの研修を修了することで、専門知識を深め、現場でのリーダーシップを発揮することが期待されているのです。
マネジメント研修
マネジメント研修では、主任保育士をサポートするミドルリーダーを育成することを目的に、リーダーシップや組織運営に関する知識を深めます。
具体的には、チームをまとめる力や、保育の質を高めるための計画力、そして働きやすい環境づくりです。
経験年数7年以上の保育士が対象で、研修を通じて現場での実践的なスキルを磨き、より円滑な保育園運営に貢献することが期待されています。
保育実践研修
「保育士等キャリアアップ研修」の中には、保育実践研修というものもあります。
保育経験が少ない人や、しばらく現場を離れていた人向けの研修です。
子どもたちへの理解を深め、保育者が主体的に楽しい遊びや環境を通じて、保育を展開するためのスキルを学ぶことを目的としています。
実際の研修では、環境構成、子どもとの関わり方、身体や言葉、音楽、物を使った遊びなど、実践的な内容を学びます。
参照:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ
キャリアパスに沿って管理職を目指す
男性保育士がキャリアアップするためには、「管理職を目指す」という選択肢があります。
経験を積むことで、主任や園長といったポジションに就き、保育現場全体をより良くしていくことができます。
職務分野別リーダーの経験や保育経験7年以上という条件のもと、マネジメント研修などを受けることで、副主任保育士への道が開けます。
さらに、平均勤続年数21年以上となると主任や園長への昇進も可能です。
研修を受けることで、着実にステップアップしていくことができます。
参照:保育士等(民間)のキャリアアップの仕組み・処遇改善のイメージ
公務員保育士を目指す
男性保育士が安定したキャリアを築くために、公務員保育士を目指す選択肢があります。
公立保育園の公務員保育士は、給与や福利厚生が民間より充実している場合が多く、長期的に働きやすい環境が整っています。
公務員になるには、自治体の採用試験に合格することが必要です。
試験内容は筆記(一般教養・保育専門知識)に加え、実技(ピアノ・絵本の読み聞かせ)や面接が課されることが一般的です。
給与の平均額も、公立保育園の方が高いのが現状ですので、公務員保育士を目指すことも検討してみてもいいでしょう。
男性保育士の将来性は?
活躍の場を広げるため、自治体ではサポートする取り組みを実施中です。
例えば、千葉市では「男性保育士活躍推進プラン」を策定し、男性用更衣室の設置や複数配置による孤立防止をしています。
また、管理職への登用を促進するため、10年間で男性所長を5人に増やす取り組みも行っています。
他にも、家賃補助や月額報奨金など、働きやすい環境を作るための支援が増えていることも事実です。
環境整備が進むことで、男性保育士が長く安心して働きやすい職場づくりが期待されます。
保育士不足が続く中、多様性を重視する社会の流れも後押しとなり、男性保育士の需要は今後さらに高まるでしょう。
まとめ
今回は、実際の男性保育士の割合や給与、まだ人数が少ない理由などについて解説しました。
男性保育士がいることで、保育の幅が広がり、子どもにも女性保育士にもプラスになることが多くあります。
しかし、まだ環境が整っていなかったり、保護者の理解を得られていないことも事実です。
保育士になりたいと思っている男性が、気持ちよく働くことができるように改善していきたいですね。
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