保育士は、専門知識と技術をもとに保育をしたり、保護者に子育てのアドバイスをしたりするプロフェッショナルです。
保育士になるには大学・短大・専門学校などを卒業する方法と、保育士試験を受験して合格する方法の2種類があります。
今回は、保育士試験に含まれる「実技試験」に落ちてしまう理由についてお伝えします。
3分野に分かれているそれぞれの実技試験で落ちる理由とその対策方法を知り、保育士試験合格への準備を万全にしましょう!
- 保育士試験の実技試験の合格率は約80%
- 実技試験で求められるものは、高度な技術ではなく保育をするための技術
- 実技試験に向けては準備・練習が重要
- 保育士試験は年2回実施され、何度でも受験可能
子どもたちの育ちを支えたり保護者の子育ての手助けをしたりする保育士の仕事は、とてもやりがいがあります。
緊張しがちな実技試験ですが、力を十分発揮できるように対策をしっかり立てて試験に挑みましょう!
保育士試験の合格率は?
保育士資格試験は年に2回実施されています。
受験資格は概ね「短期大学卒業程度」とされていますが、最終学歴が高卒(または中卒)であっても、条件を満たせば受験資格を得られます。
試験は筆記試験(8科目)と実技試験の2段階で構成されており、筆記試験に合格すれば実技試験を受けられます。
合格点は、筆記試験・実技試験ともに満点の6割以上となっていますが、筆記試験では8科目それぞれで6割以上の点を取る必要があります。
- 音楽表現に関する技術
- 造形表現に関する技術
- 言語表現に関する技術
上記3分野から2分野を選択
実技試験の合格率
実技試験の合格率は平成17年から平成26年の間でみると、平成19年の73.4%が最も低く、平成25年の89.3%が最も高くなっています。
毎年70~80%台の合格率を維持しており、10年間で平均すると82.45%となります。
合格率が10~20%台の筆記試験と比較すると高い数字であることが見て取れます。
実技試験は3分野のうちから自分の得意な2分野を選択して受験することができますので、しっかり準備をして臨めば合格は遠くないでしょう。
筆記試験の合格率
筆記試験の合格率は、平成17年から平成26年の10年間をみると、平成22年の12.9%が最も低く、平成19年の25.8%が最も高くなっています。
平均すると18.09%となり、実技試験と比較すると合格率はずいぶん低くなっています。
合格率が低い理由としては、試験範囲の広さが影響していると考えられます。
保育原理や子どもの保健など8科目に及ぶ上に、それぞれの内容にボリュームがあります。
計画的に十分勉強して試験を受ける必要があるでしょう。
保育士試験の実技で落ちてしまう人の特徴
基本的な規則やルールを守れない
実技試験には様々なルールがあります。
例えば造形表現では、人物の形をしたイラスト入りのものは机上に置けないというルールがありますし、言語の試験では絵本・道具等の一切の使用は禁止されています。
保育士としての適性を問われる実技試験において、ルールを守れないというのはマイナスの印象であり、不合格になる可能性が高くなってしまいます。
上記以外にも細かいルールがありますので、よく確認しておきましょう。
笑顔が苦手・作れない
保育士として働く上で笑顔はとても重要です。
試験官には保育士になった時のあなたの姿をイメージさせ、良い印象を与えることが必要です。
試験では子どもの前で実技をするわけではなく、試験官の前で行ったり、また場合によっては並べられた椅子を子どもに見立てて行ったりもします。
その中で課題に取り組むのですから緊張や恥ずかしさを感じるかもしれませんが、温かな笑顔で試験に臨めるように、意識して練習しておくと良いかもしれません。
子供と接する際の適切な対応ができない
音楽・造形・言語は子どもたちの感性や情緒を育むために欠かせないものであり、実技試験では、受験者が子どもに対して適切に対応できるかを判断します。
試験ではあたかもその場に子どもがいて、その子どもたちに向けて保育をしている設定なのだというイメージを持つことが大切です。
子どもに合わせた声の大きさや速さ、言葉選びや表情、ジェスチャー等、子どもに接する態度としてふさわしいかを意識して行動することが求められます。
実技試験の対策を十分に行なっていない
「実技は合格率が高いから」「実技は得意な分野だから」と、対策をしないで試験に臨むのは大変危険です。
実技試験には制限時間があるものや、そもそも事前に暗記が必要なものもあるため対策なしでの合格は難しいのです。
先ずは自分がどの分野を選択するのかを決め、それぞれの試験で求められている力は何なのかということを確認し対策をとる必要があります。
事前に情報を得たり繰り返し練習したりして、十分な準備をして臨みましょう。
【音楽表現】保育士試験の実技で落ちる主な理由と対策方法
音楽表現の実技で落ちてしまう理由
音楽の分野では、ピアノかギターで弾き語りをすることが求められます。
落ちてしまう理由としては先ず練習不足が挙げられるでしょう。
課題曲自体は難しくはありませんが、緊張や寒さで指がいつも通り動かないことや、弾きながら歌うことに慣れていないことで上手く弾けないことがありますし、弾き歌いに慣れていないと意外と難しいものです。
練習は十分にしておきましょう。
またこれは演奏ではなく弾き歌いの試験です。
演奏が速すぎる、歌う声が聞こえない、歌い方が棒読みである、無表情であるといったことも採点の際のマイナス要素です。
落ちないための対策方法
- 楽譜通りに演奏する
- 明るい表情を絶やさない
- 聞き取りやすい声と速さで弾き語りする
- 途中で演奏を止めない
先ずは音程やリズムを間違わずに正確に演奏できるように十分に練習しましょう。
そして何より大切なのは、子どもたちの前での弾き語りだと意識することです。
具体的には明るく親しみやすい表情で、子どもたちが聞き取りやすい声と速さで歌うことです。
また、子どもたちと一緒に歌っていることを想定して、間違えても演奏をやめずに弾き続けることが理想的です。
曲は移調することが認められているので、試験では自分の歌いやすい高さに合わせて歌うといった方法もあります。
子どもたちと一緒に音楽を楽しむという気持ちで臨みましょう
【造形表現】保育士試験の実技で落ちる主な理由と対策方法
造形表現の実技で落ちてしまう理由
造形表現の試験で求められる力は、保育の状況をイメージした造形表現(情景・人物の描写や色使いなど)ができることであり、それができていないと不合格になります。
造形表現の試験は、問題文の指示に従い、保育の一場面を絵画で表現するという内容です。
絵の中の人物が誰で何をしていてどのような状況なのかが伝わらなければいけません。
また、枠内に描き切れていない、時間が足りずに未完成である、枠内に絵が収まっていない、色使いが適切でない、指示されたルールを守れていない、テーマに沿って描かれていないなども不合格の理由となりえます。
落ちないための対策方法
- どのような場面かがわかるように描く
- 指示された条件の内容を網羅する
- 適切な色使いをする
- 時間内に描き切る
造形の試験では人物・背景を描く練習と彩色の練習、また時間配分の練習が有効となります。
絵の練習といっても、高い絵画の能力は必要ありません。
絵の人物が何をしているか、どのような表情をしているか、どのような状況にあるのかがわかるように、様々なポーズや表情の人物が描けるように練習しておくと良いでしょう。
また背景は、保育室や遊びの場面、戸外など保育の場面を練習しておくと安心です。
指示された画材で絵に応じた適切な色使いをすることも求められます。
上記のような絵を、規定の枠内に時間内に描けるように練習すると良いでしょう。
【言語表現】保育士試験の実技で落ちる主な理由と対策方法
言語表現の実技で落ちてしまう理由
言語表現の試験で求められる力は、保育士として必要な基本的な声の出し方、表現上の技術、幼児に対する話し方ができることで、それができていないと判断されると不合格となります。
動きや表情が硬い、話が分かりづらい、声が小さい、幼児が相手であることを想定した話し方ができていない等は、試験に落ちてしまう原因になると考えられます。
また、決められた時間内にお話をまとめる必要があるので、できなければ減点の対象となりえます。
絵本等の使用はNG等のルールを事前に確認しておかないことも不合格につながるので注意が必要です。
落ちないための対策方法
- 豊かな表情や身振り手振りを加える
- 子どもにもわかりやすく話す
- 全体に聞こえる声で話す
- 早口にならない
言語の試験で行うのは素話で、子どもたちの目に入るのは保育者のみです。
しかも想定している子どもは3歳児で、あらすじを聞くだけでは十分な理解ができず、お話に興味を持てません。
そのため、お話をする際は身振り手振りを交えたり場面に応じた表情をしたりすることで理解を助け、お話の世界に集中できるようにする必要があります。
早口にならないように気を付け、子どもにも分かりやすい簡単な言葉で話すことも大切です。
また、指示されている子どもの人数に応じて全体に聞こえる声量で話すことや、目線を全体に配ることも意識すると良いでしょう。
保育士試験の実技に関する質問に回答
- 実技試験対策の準備期間は1か月ほどあればOK
- 保育士試験は何回でも受験可能
- 保育士試験の開催は毎年4月と10月
実技試験対策の準備期間はどれくらい?
筆記試験が終わってから実技試験までは約2か月半の猶予があります。
筆記試験まではまずその勉強を最優先にし、実技試験の準備は筆記試験に合格してからでも十分可能です。
実技試験では、保育士として必要な姿勢や技術などをチェックされますが、高い技術が求められるわけではありません。
求められていることを理解し、実技試験に向けて対策と準備をする期間は1か月程あれば良いですが、できるだけ余裕をもって取り組むのが望ましいです。
保育士試験は何回まで受けられる?
保育士試験は、何度でも受験が可能です。
また、合格した筆記試験科目については、合格した年を含めて3年間有効ですので有効期間内であればそれ以外の科目に合格すれば筆記試験をクリアすることができます。
実技試験を受ける時期も、筆記試験全科目合格の有効期限内であれば可能です。
保育士試験は年に2回実施されているので、合格した科目を有効に利用して合格につなげたいですね。
保育士資格を取るために繰り返し受験している方は少なくありません。
保育士試験の開催はいつ?
保育士試験は毎年、前期試験と後期試験の年2回行われます。
- 前期試験:筆記試験が4月、実技試験が7月
- 後期試験:筆記試験が10月、実技試験が12月
受験の申し込みは筆記試験の約3か月前から始まり、申し込み方法はオンラインか郵送です。
申し込みの期間が20日間ほどしかないので、気を付けてチェックしましょう。
まとめ
保育士試験の実技試験は、筆記試験と比べると合格率が高いので、油断してしまうことがあるかもしれません。
ですが、合格のためには対策や準備をきちんとして試験に臨むことが必要です。
実技試験は保育士として求められる力があるのかどうかを見極められる場です。
自分の得意な分野を選択し、試験場を実際の保育の現場だとイメージして、十分自分の実力をアピールしましょう。
本記事を実技試験合格のための参考にしてみてくださいね。
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