「保育士って大変そうで続けられるか不安」
「保育士で退職する人はどういう理由で辞めていくんだろう」
保育の仕事はやりがいがある一方で、長く続けられるか不安になりますよね。
実は保育士の離職率はそこまで高くありません。
とはいえ、保育士が離職する理由や長く続けられるポイントがあれば知りたいという人は多いのではないでしょうか。
本記事では保育士の離職率、保育士が離職する理由、そして長く働ける保育園の選び方について紹介します。
- 保育士の離職率
- 保育士の離職する理由
- 離職率が高い保育園の特徴
- 離職率が低い保育園の見極め方
保育士の離職率を解説
離職率とは、一定期間において仕事を辞めた人数と全体の人数を比較して、辞めた人がどの程度いるかを表した指標です。
一概には言えませんが、離職率が高い職場より低い職場の方が良い環境という傾向があります。
では、保育士の離職率はどの程度なのでしょうか。
厚生労働省の資料を基に、保育士全体の離職率から公立・私立の違い、幼稚園教諭の離職率まで解説します。
参考:保育士の現状と主な取組
保育士全体の離職率
保育士全体の離職率は9.3%(10人中1人程度)で、経験年数ごとに見ると6年未満および14年以上の離職率が高い傾向です。
保育の仕事に慣れるまでの間と年齢を重ねて体力が落ち始める頃に離職している人が多い印象を受けました。
また、保育士を含んだ産業全体の離職率は15.0%となっており、比較すると保育士の離職率はそこまで高くはありません。
保育士の離職率に関するネットへの投稿を実際に見ると、「離職率は園によるが、体感としては高くない」というコメントが見られました。
公立保育園の離職率
公立保育園の離職率は5.9%で、保育士全体の離職率と比べると低い状況です。
公立保育園の離職率が低い理由は、一度退職すると再就職が難しいからだと考えられます。
自治体が運営している公立保育園で働く保育士は、地方公務員となるため頻繁に募集は行われません。
令和4年度の保育士の採用者数をみると保育所全体で4万人であるのに対し、公立保育園はわずか6千人強となっており、狭き門であるとわかるでしょう。
私立保育園の離職率
民間企業が運営している私立保育園の離職率は10.7%です。
公立保育園との離職率の差が大きく、理由の一つとして退職するハードルが低いことが挙げられます。
産休・育休や家庭の事情で退職しても、私立保育園の求人は多いので再就職しやすいと言えるでしょう。
また、私立保育園は園ごとに特色があり、より良い環境を目指して転職も可能です。
ただ保育士を辞めるのではなく、勤めている園を辞めて別の園に転職している人も一定数いると考えられます。
幼稚園教諭の離職率
幼稚園教諭の離職率は10.7%となっており、私立保育園と並ぶ水準です。
離職理由は家庭の事情が最も多く、次いで転職が挙げられています。
最近では、保護者から選ばれるために多彩なカリキュラムを用意したり、共働きのニーズに応えるために預かり保育をしたりする私立保育園が多くなりました。
私立保育園と同様に幼稚園でも園によって特色が出てきたため、より良い環境に転職するなどの動きが出てきた可能性があります。
保育士の離職してしまう理由
保育士の離職率がそこまで高くないにもかかわらず、一定の人数が離職しているのはなぜでしょうか。
保育士の離職の原因について調べていくと、保育士特有の仕事内容が理由に関わっているのが見えてきました。
どのような仕事内容が辞める理由になり得るのか、詳しく説明します。
園児の命を預かる仕事で責任が重い
保育は人の命を預かるという大きな責任が伴う仕事であるため、中には責任の重さに耐えられず離職する人もいるでしょう。
子どもは自由に動き回り、声をかけても言うことを聞いてくれず、いつケガをするか分かりません。
そして、感染症が発生したら被害が拡大しないように対策をしたり、アレルギーがある子どもへの配慮をしたりする必要があります。
「一つのミスが大きな事故につながるかもしれない」という不安は人によっては大きなストレスとなり、離職する要因になります。
給料が安い
保育士の平均月給は26万4千円、一方で産業全体の平均月給は33万6千円で差額は約7万2千円です。
給与が安い状況では「経済的に安心して働けない」「モチベーションが続かない」などの理由で、働き続けるのは難しいと言えるでしょう。
また、現職保育士の方の口コミを実際に見ると、仕事内容に給与額が合っていないという内容もありました。
政府による施策によって役職の増加や給与改善が行われてきましたが、令和5年の時点でも一般労働者と比較すると安い状況です。
時間外の業務が多い
子どもが好きで保育士になっても、業務量が多く過酷な状況が辛くなり退職する人もいます。
保育士の仕事は子どもと接するだけではなく、週案・月案や連絡帳、研修報告などの多岐にわたります。
中でも書類作成は子どもを見ながら対応するのが難しいため、残業して作業する人もいるでしょう。
1人で抱える業務量が多いほど残業が増え、体を休める時間が減り、徐々に疲弊していきます。
親御さんの相手がストレス
東京都が保育士登録者向けに行った調査では、回答者のうち22.1%の人が退職したい理由として「保護者対応の大変さ」を挙げています。
信頼関係が築けていない保護者には、関係悪化を懸念して言いたいことが言えない時もあるでしょう。
中には理不尽なクレームや自分本位な要求をしてくる保護者もいます。
質の良い保育を提供するために保護者からの協力は不可欠ですが、対応に悩みストレスで辞めていく人がいる状況です。
体力に自信がない
元気に動き回る子どもを相手に仕事をするので、保育士には体力が必要です。
しかし、年齢や健康上の理由で体力が落ちてくると保育士として仕事を続けることに自信をなくし退職を決意します。
実際に勤続年数14年以上の離職率は約30%と他の勤続年数の数値と比べると高くなっています。
主任や園長などのマネジメント層になれば園運営に関わる時間が増え、体力的に楽になりますが、長く勤めているからといって役職に就けるとは限りません。
現場の第一線で働き続けるのが体力的に辛くなり、退職することになるでしょう。
参考:保育士の現状と主な取組
職場の人間関係が上手くいかない
どの業種、職場でも離職理由として挙げられるのは職場の人間関係ですが、保育士も例外ではありません。
保育園は一つの建物内で少人数が働くため、上司や同僚とのトラブルが発生しやすい環境です。
実際に保育方針が合わない園長との関係や派閥争いに悩む声を多く見かけます。
また、園長や同僚からの協力が得られないと保育の仕事自体が難しく、辛い状況に追い込まれてしまうでしょう。
東京都の調査でも人間関係は退職理由の第1位、退職したい理由の第4位となっています。
避けたほうがいい離職率が高い保育園の特徴
保育士が離職する理由はさまざまですが、可能であれば辞めずに長く勤務したいですよね。
実は保育園によって離職率は異なり、高い保育園もあれば低い保育園もあります。
離職率が高い保育園にみられる特徴を下記のとおりまとめたので、確認してみましょう。
頻繁に求人を出している
不採用が続いたり、ブランクがある場合は焦って応募しがちですが、良い環境が待っているとは限りません。
求人が常に出されている園には、人が集まらない、または集まっても離職していくような原因があると予想できます。
例えば「パワハラやいじめの実態がある」「休日出勤や残業が慢性化している」などの可能性があるでしょう。
新規園の開設に備えて保育士を募集している場合もありますが、求人が頻繁に出ている理由が明確にわからない限りは、応募しない方が賢明です。
人手が足りていない
人手が不足している保育園は、職場環境が悪化しやすいため避けましょう。
一人で多くの園児を見守る必要があり、抱える業務量も多くなります。
また、目の前の業務への対応で精一杯になってしまい、園児へ丁寧に関わる時間の確保ができません。
保育の質が低下していけば、保護者からのクレームや事故に繋がるでしょう。
他にも残業時間の増加など、人手不足による職場環境の悪化が懸念されます。
福利厚生について明確に提示されていない
福利厚生は就職・転職活動している人にアピールできるものが多いため、ほとんどの場合は求人に掲載されています。
しかし、求人などに明確に記載がないのであれば、開示できない理由があるかもしれません。
休日出勤が多いにも関わらず振替休日が取得できない園が、休暇制度や年間休日の日数を開示すると園にとってデメリットになります。
福利厚生が明確に示されていない場合は働く環境が良くない可能性があるので、求人への応募は避けましょう。
離職率が低いホワイトな保育園の見極め方
離職率が高い保育園は避けられるとしても、良い環境が整っている保育園はどのように探すのか戸惑いますよね。
見極めのために確認するのは口コミの内容、手当の充実度、そして園児数と保育士の割合です。
なぜ確認すればホワイト保育園だと見極めできるのか、理由を含めて詳しく解説します。
口コミや評判を入念にチェックする
保育園の実態を把握するために、実際に働いている人の口コミや評判をチェックしましょう。
人間関係など説明会への参加や園見学で見極めるのが困難なことでも、口コミに投稿されている場合があります。
実際に求人に掲載されている内容でも「実は〇〇だった」という声は多いです。
ただし、中には悪意ある口コミや評判が書き込まれている場合もあるため、可能な限り多くの口コミや評判を見て判断してください。
口コミや評判は、求人サイトやSNSで保育園名または運営会社名で検索すると確認できます。
給与以外の手当を詳しく調べる
- 住宅手当・借り上げ社宅制度
- 通勤手当
- 退職金制度
給与以外の主な手当は上記のとおりです。
給与の高さも大事ですが、手当が厚いと経済的に安心しながら働けます。
ただし、手当があれば無条件で支給されるわけではなく、必要な条件があるため注意してください。
借り上げ社宅制度は自治体が設ける条件以外にも園が個別に設けているものがあります。
通勤手当は園によって支給額が異なり、退職金制度は勤続年数が支払い条件になっていることが多い印象です。
保育園探しの際は、給与額だけではなく手当についても詳しく確認してみましょう。
園児数と保育士の割合を確認する
保育園に配置される保育士の人数は児童福祉法で定められており、下記の通りです。
ただし、令和6年4月に見直しされたので、令和6年9月時点では経過措置がとられています。
園児の年齢 | 保育士の割合 |
---|---|
満1歳未満 | 園児3人につき1人以上 |
満1歳以上~満3歳未満 | 園児6人につき1人以上 |
満3歳以上~満4歳未満 | 園児15人につき1人以上 |
満4歳以上 | 園児25人につき1人以上 |
国が定めている割合は最低基準ですが、上記割合より保育士の数が多ければ人手が足りていると言えるでしょう。
人手に余裕があれば、単純に抱える業務量が少なくなり、多くの時間を子どもと向き合うことに使えます。
また、急な病気や事情で休みになっても、職員同士での助け合いが可能です。
良い職場環境であるかの目安として、園児数と保育士の割合を確認しましょう。
待遇が良い保育園で働きたい場合は公立保育園を目指すのもアリ
良い待遇で働きたい人は、自治体が運営している公立保育園を目指すのがおすすめです。
公立保育園で働く保育士の給与は下記の通りとなります。
役職 | 公立保育園の月給 | 私立保育園の月給 |
---|---|---|
なし | 303,113円 | 301,823円 |
主任 | 561,725円 | 422,966円 |
園長・施設長 | 632,982円 | 565,895円 |
私立保育園の月給と比較すると、役職がない状況では目立った差はないものの、主任・園長になると金額に大きな差があるのがわかるでしょう。
他にも公立保育園で働く場合は健康保険や厚生年金への加入はもちろん、退職金手当があり福利厚生も充実しています。
勤務地変更を伴う異動はありますが、安定した環境で働くことが可能です。
まとめ
全職種の平均と比較すると保育士の離職率はそこまで高くありません。
とはいえ、仕事量や責任の重さ、人間関係などの理由により、年間で約10人に1人が退職している状況です。
長く勤めるためには保育園の実態を把握して、良い環境が整っている職場を選ぶ必要があります。
そのためにも、求人だけではなく口コミや評判を含めた多くの情報を集めましょう。
自分に合った保育園を選べれば、離職率を気にせず仕事ができますよ。
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