加配保育士という言葉を聞いても、どのような仕事をする保育士なのか知らない方も多いのではないでしょうか。
仕事内容を知っていたとしても「どうすればなれるのか」「加配保育士になるとメリットはあるのか」など、気になりますよね。
本記事では仕事内容からメリット・デメリット、給料の目安など加配保育士について解説しています。
最後まで読んでいただければ、加配保育士について知識が深まるでしょう。
- 加配保育士の仕事は、障害を持つ子どもに対して日常生活や集団生活ができるようにサポートを行うこと
- 加配保育士は保育士資格が必要だが、自治体によっては資格不要の場合もある
- 加配保育士は障害の知識やスキルを常に勉強して、障害を持つ子どもの受け入れ体制を整えておく必要がある
- 保育園内で孤独を感じる場合もあるが、加配保育士は保育士としてスキルアップができる
加配保育士とは?障害児保育の受け入れ状況と加配支援状況
加配保育士とは、保育園などの保育所で少人数の障害を持つ子どもについて保育を行う保育士のことです。
通常の職員数に加えて配置される保育士のため、「加配」という言葉が使われています。
障害児保育とは障害を持つ子どもを保育所で預かって必要な援助と保育を提供することを指し、保育所内で障害児保育の役割を担うのが加配保育士です。
本章では、加配保育士や障害児保育の現状について紹介します。
加配保育士の配置基準は決まっている?
加配保育士の配置基準は施設の種類によって異なります。
内閣府の資料より、小規模保育事業などの地域型保育事業は障害認定された児童2人に対し保育士1人の配置がされている状況です。
保育所や認定こども園などの特定教育・保育施設は特に定められていませんが、自治体によっては個別に設けられています。
長崎県西海市では子どもが持つ障害の状況によって配置基準を設けており、下記のとおりです。
- 特別児童扶養手当の支給対象の子ども2人に対して保育士1人
- 上記以外の障害を持つ子ども3人に対して保育士1人
なお、厚生労働省は障害を持つ子ども2人につき保育士1人を水準としています。
参考:障害のある子供の教育・育成に関する施策|障害児保育の推進について
障害児保育の受け入れ状況
2011年からの障害児保育の実施状況を確認すると、障害認定された子を受け入れている保育所は年々増加しています。
また、公立の保育所等が72.1%に対して私立の保育所等が 48.7%と、公立の保育所の受け入れが進んでいる現状です。
私立の保育所等でも今後は受け入れが進んでいく可能性があり、加配保育士の需要も同時に見込まれるでしょう。
2017年に策定された保育士等キャリアアップ研修でも「障害児保育」の分野が設けられており、障害児保育に対する関心が高まっている状況だと言えます。
参考:障害のある子供の教育・育成に関する施策|保育所等における障害児保育に関する調査
障害児保育の加配支援状況
障害児保育に対する職員の配置状況に関するアンケートでは、多くの保育所で「障害の種類や程度によって職員の配置を決めて支援を行っている」と回答しました。
障害を持つ子どもの人数で決めない理由は、子どもが持つ障害の状況に合わせて支援を行うためであると推測が可能です。
また、市町村によって公立私立関係なく同様の職員配置がされているケースもあれば異なるケースもあるので、支援状況は施設によって異なっていると分かります。
加配保育士の役割と仕事内容
加配保育士の仕事は他の保育士と同様に子どもの保育ですが、細かく見ていくと仕事内容に違う点があります。
障害を持つ子どもが周りの環境に慣れていけるようなサポートはもちろん、適切な援助のためにさまざまな対応が必要です。
加配保育士の具体的な仕事内容を確認してみましょう。
日常生活のサポート
加配保育士は障害を持つ子どもが保育園で過ごしている間、着替え、排せつ、食事などの日常生活のサポートをします。
身体の障害によって体を上手く動かせない子もいれば、知的障害の程度によって自分で身の回りの支度が難しい子もいるでしょう。
日常生活のすべてを手助けするのではなく、子どもが持つ障害の種類や程度に合わせた方法でサポートする必要があります。
自分でやりたい気持ちや落ち着くルーティーンがあるかなど、子どもごとに見極めが大事です。
集団生活に入るためのサポート
保育所では集団生活をすることが多いため、障害のある子が上手く馴染めるようにフォローします。
障害の種類や程度によってはパニックになり暴れてしまう子もいるため、様子をみて別室で自由に遊ばせるなどの対応をしてあげましょう。
始めは全くやろうとしなかった運動や遊びも、しばらく経ったあとに興味が湧いてやることもあります。
「こうしてくれると嬉しい」といった障害を持つ子どもとの関わり方について周りの子どもに共有し、トラブルが発生しないような仕組みづくりも大切です。
個別の保育指導計画の作成
保育園が通常作る年間契約や月案・週案では、障害を持つ子どもの状況に合わないため、加配保育士は障害を持つ子専用の個別の保育指導計画を作ります。
計画書は園での様子だけを見て作るのではなく、下記の内容を保護者に確認して作成しましょう。
- 子どもの得意・不得意なこと
- 子どもにできるようになってほしいこと
- 療育機関での状況
リアルな状況が把握できれば保育園でどのように対応すればよいかがわかるため、適切な援助が行えます。
保護者や療育機関との連携
保育園での子どもとの関わりだけではなく、保護者や療育機関との連携も大事な仕事です。
とくに保護者からの相談には丁寧に対応して気持ちのケアを行います。
どうしても他の子より「できないこと」に目を向けてしまいがちなため、積極的に「できたこと」を伝えるようにしましょう。
また、療育機関と連携して一貫したサポートができれば、障害を持つ子どもに対して質の高い援助が可能になります。
療育機関の様子を見学するなど積極的に情報交換を行いましょう。
他の職員との連携
加配保育士が常にサポートを行えるとは限らないため、障害を持つ子どもについて他の職員への情報共有が大切です。
障害を持つ子どもの特性を他の職員が把握していれば、加配保育士が不在の時でもフォローができます。
クラス担任や副担任に共有すれば、クラスで行う遊びやイベントの内容についても相談しやすくなるでしょう。
トラブルや悩みがあっても、加配保育士だけでなく園全体で迅速な対応が可能になります。
加配保育士になる方法
加配保育士について興味があっても、どうすれば仕事に就けるか気になりますよね。
障害を持つ子どもを担当するのであれば、障害に関する資格やスキルが必要になるのでしょうか。
本章では、加配保育士になるために必要な資格やスキルについて解説します。
加配保育士になるために必要な資格
加配保育士に必要な資格は保育士資格ですが、保育補助など無資格でも加配保育士として扱う自治体もあります。
実際の求人でも無資格の加配保育士を募集しているものがありました。
とはいえ、保育士になるまでの間に障害児保育について学ぶ機会があるので、資格取得が望ましいでしょう。
保育士になる方法は下記の2通りです。
- 厚生労働省が指定した保育士養成施設を卒業する
- 保育士試験を受験して合格する
保育士資格以外にも療育に関する資格を取得すれば、加配保育士としてより活躍が期待できますよ。
参考:保育士試験とは
加配保育士に必要なスキル
- 障害に関する知識
- コミュニケーション能力
- 判断力
子どもが持つ障害の種類や程度に応じた対応が必要となるため、加算保育士には障害に関する知識が必要です。
キャリアアップ研修や民間資格の取得など、自分に合った方法で障害に関する知識を増やしましょう。
また、加配保育士は園内・保護者・行政・施設など多くの人と連携をとります。
高いコミュニケーション能力があれば、トラブルなくスムーズな連携が可能です。
他にも、障害を持つ子どもの気持ちや行動を先読みして何をすべきか判断する力も必要となります。
加配保育士の給与
加配保育士だからと言って特別に給与が高い訳ではなく、一般的な保育士と同じ水準となっています。
下記は、加配保育士を募集している実際の求人に記載されている月給と時給です。
雇用形態 | 給与 |
---|---|
正社員 | 月給229~237千円 |
パート | 時給1,230~1,600円 |
正社員の場合、保育士のハローワークの求人統計データである月給221千円と大きな差はありません。
パートの場合は時給1,200~1,500円が目安です。
保育園に所属する障害児の人数は年度ごとに違うので、人員確保をしやすいパートの方が正社員より求人募集が多い傾向にありました。
加配保育士になるメリット
加配保育士の仕事内容は一般的な保育士と異なる点がありますが、給与に大きな差はありませんでした。
では加配保育士になると、どのようなメリットがあるのでしょうか。
本章では加配保育士になった時に得られるメリットについて解説します。
メリットに魅力を感じたら、加配保育士に就くことを検討してみてください。
目の前にいる子どもに時間をかけて向き合える
加配保育士は少人数の障害を持つ子どもを担当するため、一人一人にじっくり向き合えます。
多くの時間をかけて話をしたり遊んだりして、発達や自立を促しながら担当の子どもと信頼関係を築いていくのも仕事の一つです。
一方で担当のクラスを持つ保育士は大人数を相手にするため、一人の子どもにじっくり向き合う時間の確保は難しいでしょう。
学んだ知識や培った経験を存分に活かせる加配保育士は、やりがいを感じられる仕事だと言えます。
保育士としてのスキルアップや経験になる
障害に関する知識は学んで得られたとしても、障害を持つ子どもに時間をかけて関われる経験はそう簡単にできるものではありません。
療育機関で支援を受けている様子をみたり、障害児をもつ保護者の悩みに気づいたりできるのは加配保育士だからこそ得られる経験です。
経験に裏付けられた障害に関する知識は、他の保育園だけではなく、障害のある子どもが利用する児童福祉施設への転職にも役立つでしょう。
将来的に園長などの役職に就いた時に、自治体から障害を持つ子どもの受け入れの相談にも応じられるようになります。
加配保育士になるデメリット
加配保育士だからこそ得られるメリットがある一方で、もちろんデメリットもあります。
障害という一般的な保育士と異なる分野について学び続ける必要があるため、孤独を感じやすいでしょう。
加配保育士になるのであれば、下記のデメリットについても把握した上で仕事に就くのをおすすめします。
常に障害について学ぶ必要がある
障害には多くの種類があり具体的には下記の通りです。
- 身体障害
- 知的障害
- 発達障害
さらに発達障害は自閉症やアスペルガー症候群などに細分化され、一言で障害といっても多岐にわたります。
複数の障害が重なっていることもあり、実際に担当してからでないと判断が難しい場合もあるでしょう。
誰が来ても援助できるように、障害について常に勉強をする必要がある加配保育士は、決して楽な仕事ではありません。
加配保育士ならではの悩みを抱える可能性がある
- 相談できる相手が少ない
- 子どもとの関わり方が難しい
- 正社員の求人が少ない
先輩や同僚に相談したくても、障害のある子どもを担当した経験が少ないなどの理由で相談しづらいと感じることもあるでしょう。
さらに、障害によっはてこだわりが強い子もいるためサポートが上手く行かない場合もあれば、パニックになった子どもに他害行為をされる場合もあります。
また、転職または就職したいと思っても正社員の求人が少ないので、加配保育士として理想の環境で働くのが難しい状況となっています。
加配保育士に向いている人の特徴
加配保育士にチャレンジできそうだと感じても、自分が向いているか心配ですよね。
不向きだからといって仕事ができない訳ではありませんが、向いている特徴があればより前向きに仕事ができる可能性が高いでしょう。
参考として、加配保育士に向いている人にはどのような特徴があるか解説します。
常に障害や保育について学び続ける意欲がある人
障害の種類は多く、どのような障害の種類や特徴を持った子どもが入園してくるかは予測できません。
時間の経過とともに障害の種類が新設されたり、現状より効果的な対応方法が出てきたりする可能性もあるでしょう。
障害を持つ子どもに適切な援助をするためにも、1回の学びで満足せずに常に新しい情報のインプットが必要です。
研修や講座などの座学だけではなく、実際に保育現場で実践してみるなどの経験を重ねていく努力が求められます。
小さな変化に気付けられる人
障害を持つ子どもの成長は障害の種類や度合いによって異なり、ゆっくりと進む子もいます。
小さな変化に気付ければ、例え成長の進みが遅くても「なぜできないのだろう」より「できなかったことができた」とモチベーションの維持が可能です。
送り迎えに来る保護者にも多くの「できたこと」を伝えられるため、成長に悩む保護者にとって心強い存在となれるでしょう。
大きな変化ではなく小さな変化に気付ける人は加配保育士に向いていると言えます。
まとめ
加配保育士は障害を持つ子どもや保護者をサポートするという社会貢献度が高い仕事です。
多くのやりがいを感じられる仕事ですが、障害の知識を積極的に得てアップデートをしていく必要があります。
孤独を感じることもありますが、悩みを抱えず周りの同僚に協力を仰いで園全体で援助できる環境を整えていくことが大切です。
また障害児保育の需要が高まっている状況から、今後は加配保育士がさらに保育園にとって必要な存在となるでしょう。
興味がある方はぜひ、加配保育士に挑戦してみてください。
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