保育士の資格を活かせる職場として、学童保育施設への就職や転職を検討している人もいるでしょう。
しかし、学童保育の指導員について調べていくと「仕事が続かない」という内容が目に入ってきます。
どのような理由で指導員が続かないと言われているか分からないと、仕事を続けられるか不安ですよね。
本記事では学童保育施設に就職や転職を検討している方向けに、学童保育の指導員が続かない理由について学童保育の実態と共に解説しています。
- 学童保育の指導員の仕事内容
- 学童保育の指導員が続かない理由
- 学童保育の指導員の給与
- 学童保育の指導員が続かない時の対処法
学童保育の指導員の仕事内容
- おやつの準備・提供
- 遊びの提供・宿題のサポート
- 子供の心身へのサポート
- 保護者への子供の様子の報告
- 日誌・出勤簿の記入
- 長期休暇中の昼食の準備
- 施設の維持管理と環境整備
学童保育の指導員の仕事は、平日の放課後、土曜日、そして夏休みなどの長期休暇中に小学生を施設で預かり、保護者の代わりに見守ることです。
教育より保育に近い仕事内容となっており、給食がない長期休暇中は昼食、平日はおやつの提供を行います。
また子供への対応だけではなく、保護者とのコミュニケーションや日誌や出勤簿の作成、事務作業なども業務に含まれています。
子供の安全に配慮した施設の管理なども大事な仕事です。
学童保育の指導員の現場の声
指導員として働く方の声を見ると、過酷な職場環境や職業の不当な扱いに憤りを感じている様子がうかがえます。
丁寧に子供に向き合いたい理想と、人員不足などで子供の安全を守るだけで精一杯な現実との間に、ギャップがあるようです。
さらに、保護者からのクレームなどもあり精神的にも辛い仕事内容だと分かります。
過酷な環境で働いているにも関わらず、他のアルバイトやパートと同等または低い賃金で働いていることにショックを受けるのは当然のことだと言えるでしょう。
学童保育の指導員が続かない理由
指導員が辞めていくのにはさまざまな理由があり、ハードな業務内容と改善されない処遇に関する内容が多く見られました。
学校と違い、子供の自由がある程度尊重される学童では「ただ子供を見守るだけ」では仕事は務まりません。
学童保育の指導員が続かない理由を、学童特有の仕事内容と共に解説します。
常に人員不足で人手が足りていない
共働き世帯の増加に伴い学童利用児童数が年々増える一方で、学童保育の指導員の有効求人倍率は2.85倍と人員不足の現状です。
授業や休み時間などのルールがない状況で、幼児より体力も知恵もついている小学生を長時間見守るのは想像以上に大変な仕事なのでしょう。
仕事に疲弊して辞めていく人が一定数いるにも関わらず、給与の低さなどが要因で求人を出しても人が集まらない状況です。
学童で働く職員の処遇改善に政府が着手していますが、地域のニーズに対して指導員が足りておらず、人員不足が業界全体で問題になっています。
参考:学童保育の実施状況調査結果について
参考:「放課後児童健全育成事業」の実施について
体力が持たない
小学生を相手に、かけっこやボール遊びなどの外遊びに長時間付き合ったり、ケンカやかんしゃくなどで暴れる子供を抑たりするケースが出てくるでしょう。
小学校低学年ならまだしも高学年になると力もついてくるため、抑えるのに多大な労力を使います。
平日は数時間で終わりますが、夏休みなどの長期休みは8時間勤務が多く、朝から夕方まで子供を見守らなければなりません。
宿題をやる時間など比較的落ち着ける時間がありますが、体力がない指導員は続けられないと感じてしまいます。
業務内容と給与が見合わない
指導員の月額給与は20万7千円となっており、同じ子供と接する保育士の月額給与22万1千円と比較しても低い状況です。
小学生は幼児に比べると手がかからず楽だと思いがちですが、指導員に対しての暴言や暴力をする子供がいるなど業務内容は精神的にもハードです。
実際に働いている方が投稿した内容をみると、しつけが行き届いていない子供や情緒不安定な子供がいるため、一筋縄ではいかない様子がうかがえます。
また、子供との対応のみではなく日誌の記入など指導員の業務は多岐にわたるため、低い給料に見合わないと感じた人が退職していきます。
親御さんや同僚との人間関係の悩み
どの職業でも人間関係は仕事を続けられない理由に挙げられており、児童保育の指導員も例外ではありません。
ネット上の投稿でも、保護者や同僚との人間関係に悩む指導員が多くみられます。
健全な運営のために子供への指導をしたつもりでも、保護者から理解を得られずクレームがくることもあるでしょう。
また、同僚の中には性格がきつい人がいるという声も見られました。
人手不足によって働く職員の厳選ができないことも理由の一つかもしれません。
勤務時間が働きづらい
指導員の勤務時間は平日3時間以上6時間未満、土曜日や学校休業日など1日保育が必要となる場合には8時間以上になります。
正社員は1日8時間のシフト制になるケースが多いです。
平日は学校終了後に勤務する必要があるため、子供が登園・登校中に仕事をしたい人には働きづらい勤務時間だと言えます。
また、遅くまで学童を開放している場合もあり、家族の協力や理解がないと続けるのは難しいでしょう。
子供を預かる責任が重い
乳幼児より自己管理と意思疎通ができる小学生を見守る仕事ですが、保護者の代わりに子供の命を守るという点で大きな責任が伴います。
小学生になると知識がつき、思いもよらぬ方法で施設を抜け出したり危険な遊びをしたりするため、油断ができません。
実際に、子供が学童施設から抜け出して家に帰っていたなどのエピソードを聞いたことがあります。
ただ子供と触れ合うだけではなく、大人数の命を預かる責任の重さが辛くなって辞める人もいるでしょう。
正社員ではなく、パート勤務になる場合が多い
学童保育の指導員は常勤職員よりパートなどの非常勤職員の人数の方が多くなっています。
学童が開いている時間は平日昼過ぎから夕方まで、長期休暇中は8時前後から夕方までと変則的です。
そのため、常時ではなく人手が必要な時間にパートを雇うケースが多いのでしょう。
正社員と比較すると、パートは勤務時間が少ない代わりに給与が低い傾向があるため、金銭面にこだわる人は続けずに転職していきます。
学童保育の指導員の給与
学童保育の運営主体には公営と民間があり、それぞれの給与について調査をしたところ異なる水準であることが分かりました。
常勤で比較すると公営より民間が運営する学童の方が高く、非常勤では公営の方が高い金額です。
給与の具体的な金額とともに公営と民営の給与について解説します。
公営の学童保育の場合
公営学童保育の年給(賞与込)は平均約203万円で、放課後児童支援員の資格の有無や勤務形態によって給与の差がありました。
具体的な金額は下記の通りとなっています。
支援員の資格 | 常勤 | 非常勤 |
---|---|---|
有 | 242万5千円 | 209万7千円 |
無 | 183万2千円 | 176万7千円 |
公営の場合、資格の有無によって約30〜60万円の差額がありました。
公営の学童保育に勤務するのであれば、放課後児童支援員の資格取得が望ましいと言えるでしょう。
また、資格を保有していないケースでは、常勤・非常勤の違いによって給与に大きな差がないことが分かります。
民間の学童保育の場合
民間学童保育の年給(賞与込)は平均194万円で、一見すると公営学童保育の方が高いと感じられます。
しかし、下記の表をみると常勤では公営の学童で働く人より給料は高い状況です。
支援員の資格 | 常勤 | 非常勤 |
---|---|---|
有 | 303万9千円 | 137万3千円 |
無 | 227万6千円 | 107万9千円 |
とくに常勤・非常勤の差が大きく、民間の学童保育で非常勤として働く場合はあまり収入を見込めません。
また、常勤・非常勤ほどではありませんが資格の有無によっても金額に差が出るため、指導員として働く時には放課後児童支援員の資格を取得しておくと良いでしょう。
学童保育の指導員が続かない時の対処法
指導員が続かない理由はさまざまでしたが、対処法がない訳ではありません。
休日や同僚との良い人間関係を有効活用して、ストレスや働く環境を改善していきましょう。
他にも指導員を続けられないと感じた時に試してほしい対処法があるので紹介します。
休日と仕事の日のオンオフの区切りをつける
仕事とプライベートを明確に分けると気分転換になりストレス軽減になります。
家でも仕事について考えてしまうのであれば、体力づくりにもなるスポーツがおすすめです。
体を動かすことに集中できるので、運動中は仕事の悩みを考えずに済むでしょう。
他にも映画館や図書館など、職場と全く違う雰囲気の場所はオンオフの切り替えがしやすいです。
休日にしっかり体を休めてリフレッシュができれば、新たな気持ちで仕事に取り組めます。
同僚としっかりコミュニケーションを図る
幅広い業務を円滑に進めるためには、同僚とのコミュニケーションが大切です。
ネット上の投稿でも、実際に同僚とのコミュニケーションが大事だと言う指導員の方がいました。
保護者の多くは施設内の出来事を職員全員が知っていると思って接してくるため、職員間での情報の共有が重要です。
子供や保護者の特徴なども施設全体で把握しておくと、トラブルを未然に防げます。
また、運営側で決定した事項がパート勤務の方まで伝わっていない可能性もあるので、積極的に情報収集をしていきましょう。
焦らず仕事の良い面を探してみる
経験が浅いうちは「こんなはずではなかった」と理想と現実のギャップに戸惑うものです。
指導員に就いたばかりの時期は仕事に慣れるのに精一杯で、楽しいより苦しいが強く辞めたいと感じるでしょう。
ですが、辞めずに仕事を続ければ、ふとした瞬間にやりがいを見いだせる可能性がでてきます。
実際に働いている方の口コミを見ると「子供たちが懐いてくれるのがやりがい」という内容も多く見られました。
続けられないと感じても、まずは落ち着き、仕事の良い面を探してみてください。
転職も考慮に入れてみる
同僚からのパワハラやいじめだけでなく児童からの暴力など、自分で改善が難しい状況であれば転職するのも一つの方法です。
放課後児童支援員の中には保育士や教員の資格を保有している方も多いため、一度指導員を離れて資格を活かせる業種に就くのも良いでしょう。
また、別の良い環境の学童に転職すれば、指導員の経験を活かせます。
もし放課後児童支援員の資格を持っていないのであれば、転職する機会に取得すれば給与アップが見込めますよ。
まとめ
学童保育施設が続かない理由は、過酷な職場環境や仕事に見合わない給与の低さなどでした。
しかし、子供と体を動かして遊べたり、心や体の変化が大きい小学生をサポートできたり、学童保育の指導員は大変やりがいがある仕事です。
令和4年からは政府が指導員に対する処遇改善を始めており、今後は働く環境の整備が期待できるでしょう。
続かないと言われていても自分に合っていると感じたのであれば、ぜひ学童保育の指導員にチャレンジしてみてください。
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