「やりがいのある保育士の仕事だけど、辞めたい。でも、次は何の仕事をすればいいのだろう?」と悩んでいる人は意外と多いものです。
保育士は国家資格の専門職ですが、今まで培ってきたスキルや経験は、保育業界の外でも活かせます。
本記事では、今、転職を視野に入れている保育士が、保育経験を活かせる仕事や異業種へのキャリアチェンジの例を詳しく紹介します。
ぜひ参考にして、転職活動の一助にしてくださいね。
- 長時間労働と低賃金、将来不安から離職を考える保育士がいる
- 保育士としての経験を活かしながら働ける別の職種もある
- 保育とは全く異なる仕事でも、何らかの形で培ってきた経験が活きることもある
- 転職するときは、自分のスキルの棚卸しが必須

ずっと保育士をしてきた人は「他の仕事は無理かも」と不安に感じがち。でも、保育士で培ったさまざまなスキルは、どの職種でも役立つ可能性のある立派なスキルなんですよ。
一緒に見ていきましょう!


ちあき
認可保育園で勤務後退職して留学。その後は英語の幼稚園で働く。結婚を機に派遣保育士に転身し、さまざまな園で経験を積む。保育士歴は通算7年ほど。
子どもが重度アレルギー児になったことでライターに転身した2児の母。


保育士が離職を考える理由は?
「子どもが好きだから」「小さい頃、保育園の先生に憧れて」そんな想いを抱えて保育士を目指し、働いている人は多いはずです。
でも、実際に仕事として続けていくなかで、理想としていた保育と現実のギャップに悩み離職を検討する人は少なくありません。
本章では、保育士が離職を考える代表的な理由を具体的に解説します。
長時間労働と低賃金
保育士は労働時間が長いわりに、賃金が低いという問題があります。
保育施設の中には、昔と比較すると減ってはきましたが、まだまだ行事前のサービス残業が当たり前になっていたり、持ち帰りの仕事があったりするところもあります。
その上、保育士の賃金は、年収ベースで他の業種と比較すると100万円以上も低いというデータがあります。
長時間労働に加えて、低賃金という現実に、離職を考える保育士がいるのも納得です。
参考:保育士の平均賃金
人間関係のストレス
保育士の離職の最大の原因は、職場での人間関係によるものというデータもあります。
同僚や園長、保護者との人間関係がうまくいかずに悩み、離職という選択肢を取る保育士は多いのです。
子どもを預かるという職業上、さまざまな人と「報告・連絡・相談」をする機会が多い職場でもあります。
時には、保護者対応で理不尽なクレームを受けることもあるでしょう。
人間関係にまつわるストレスで疲弊し、離職するのは保育現場には多いケースです。
体力的・精神的な負担
日々の子どもの抱っこや思い切り体を動かす外遊び、時間が取られる行事準備など、想像以上に体力勝負なのが保育の仕事です。
さらに、子どもたちが事故やケガがないよう常に神経を張り巡らせているため、精神的な負担も大きく「このまま続けられるかな……」と不安になる人も少なくないです。
特に、20代の頃は気にならなかった体力面が、30代40代と年を重ねるごとに「体力的に仕事がきつい」と感じる人は多くいます。
将来への不安・キャリアの限界
保育士の仕事は、子どもと一緒に体を動かすことがメインとなるので、年齢が上がるごとに体力的な不安を抱える人はたくさんいます。
また、1つの保育施設の中に役職が少ないことから、昇給やキャリアアップの選択肢が少ないのが現実です。
将来的な体力面の不安や収入面から、もうこれ以上は望めないかもしれないと限界を感じて、保育士の仕事を離職することを検討する人もよく聞きます。
園の運営方針や環境とのミスマッチ
- 子ども主体より、管理重視の方針
- 過度な書類仕事やマニュアル主義
- 保護者対応ばかりが重視される
こうした「園の方針」と自分の保育観のズレが大きいと、働き続けることが苦しくなります。
また、実際に働き始めて「大規模保育園より小規模保育園の方が合っていそう」「教育特化よりも遊び重視の保育が好き」などの自分が本当にしたい保育に気づいて転職を視野に入れる人もいます。
他業種でも通用する保育士の経験・スキル
保育士の仕事は、子どもだけでなく保護者や同僚、園全体との関わりが欠かせません。
仕事を通して培ってきた「コミュニケーション力」「忍耐力・観察力」「マルチタスク力」は、異業種でも高く評価されることが多いスキルです。
特に、対人スキルや臨機応変な対応力は、幅広い仕事で即戦力になる可能性を秘めています。
コミュニケーション力
保育士は、言葉が未発達な子どもとのやり取りを通して、相手の気持ちを汲み取る力に優れています。
「何を伝えたいのか」「どう声をかければ安心するのか」を常に考え、実践してきたからこそのスキルです。
経験から、相手に合わせた言葉選びや伝え方が自然と身についており、どの職場でも高いコミュニケーション力を発揮できると期待されています。
また、子どもだけでなく、保護者・同僚・園長とさまざまな人と幅広く関わってきたことから、相手の気持ちを汲み取り、安心感を与えるコミュニケーション力にも長けています。
忍耐力と観察力
保育士は日々の業務の中で、言葉でのコミュニケーションがまだ未発達な子どもと関わっています。
体調の変化や気持ちをうまく言葉で表現できないため、保育士は子どもの些細な表情や行動の変化から、異変を察する高い観察力が養われています。
また、子ども相手の仕事は予定通りに進まないことが日常です。
イレギュラーに柔軟に対応しながら粘り強く向き合うことを仕事を通して行っているので、忍耐力も自然と身についています。
書類作成や保護者対応などのマルチタスク力
保育士の仕事は子どものお世話だけではありません。
- 書類作成
- 保護者対応
- 行事の準備
- 日々の保育の準備
- おもちゃや保育室の整理整頓、清掃
さまざまな仕事を同時並行で、時にチームワークを発揮しながら、期限内に滞りなく進める力が求められます。
保育士が日々の業務で培ったマルチタスク能力は非常に高く、異業種でも仕事の優先順位を判断し、効率よく業務をこなす即戦力として活かせます。
保育経験を活かせるおすすめの転職先【同業界・近接業界編】
保育からの転職でも「子どもに関わる仕事は続けたい!」と思っている人におすすめの仕事をご紹介します。
保育士といえば、保育施設で働くイメージが強いですが、保育の知識や経験を活かせる仕事が意外にもありますよ。
今まで培ってきた知識や経験を活かせる代表的な仕事と、活かせるスキルについて具体的にお伝えするのでチェックしてくださいね。
児童発達支援・放課後等デイサービス
発達に特性のある子どもたちの支援をする仕事です。
今までの保育経験を活かすことで、より一人ひとりにフォーカスした支援計画を提案できるでしょう。
- 子どもの発達を見守る観察力
- 保護者との信頼関係づくり
保育士として、集団の中での多数の子どもの発達を見守ってきた観察力、保護者の方との信頼関係を築くコミュニケーション能力が存分に発揮できます。
より深く目の前の子どもに向き合い、それぞれの可能性を最大限に引き出すことにやりがいを感じられます。
学童保育スタッフ
小学校が終わった子どもたちの放課後の見守りや、遊びの提供を行う仕事です。
保育士の仕事と比較すると、短い時間の勤務の傾向があるため体力的な負担が少なく、行事や製作物の準備などがないので働きやすいと言われています。
- 安全管理
- 年齢に応じた遊びを提供するスキル
- 小学生や保護者などさまざまな人と信頼関係を築くスキル
未就学児と比べて、小学生の方が話しが伝わりやすく、一緒に遊ぶことより子どもへのサポートが多いので肉体的にも負担感が少ないです。
ベビーシッター / 家庭的保育
目の前のひとり、または少人数の子どもとしっかり寄り添って保育ができる仕事です。
自分のペースで働けることから、仕事とプライベートのバランスが保てると人気があります
- 一人ひとりに寄り添う力
- 緊急時の対応力
今まで集団保育で「もっと一人ひとりに丁寧に関わりたい」と思ったことがある人もいるのではないでしょうか。
ベビーシッターは1人にフォーカスするので、丁寧に寄り添った保育が可能です。
保護者が望む保育スタイルをしっかり傾聴して、子育てのサポートができるところも魅力です。
企業内保育所スタッフ
企業内保育所は、基本的に従業員の子どもを預かる小規模保育園が中心です。
運動会や発表会などの大きな行事が少ない傾向があり、土日休みのことも多いため、働きやすさは抜群と言われています。
- 保護者との信頼関係を築くスキル
- 少人数ならではのきめ細かい対応
少人数だからこそ、一人ひとりに丁寧に向き合えて、家庭との連携も密接に取れます。
大規模保育施設とは異なる落ち着いた環境で、子どもとの関わりを大切にした保育ができるのが魅力です。
異業種へのキャリアチェンジ例【スキル転用編】
「子どもと関わる仕事からは一度離れたい」「違う世界を見てみたい」と考える人もいるかもしれません。
保育士として培ったさまざまなスキルは、実はどんな職場でも重宝されるスキルでもあります。
異業種でも十分に活躍できるおすすめの仕事を紹介します。
受付・医療事務
病院やクリニックの受付・医療事務は、患者さんへの丁寧な対応が求められる仕事です。
初めて来院する人の不安を和らげたり、混雑時にも落ち着いて対応する力が必要。
- 相手に寄り添って丁寧に対応するスキル
- マルチタスク能力
保育士時代に培った「相手の立場に立って接する力」や「同時に複数の業務を進める力」は大きな武器になります。
書類作成や電話対応なども多いため、細やかな気配りと正確さが活かせる職種です。
カスタマーサポート
カスタマーサポートは、相手の悩みや疑問を的確にくみ取り、わかりやすく伝える力が求められます。
- コミュニケーション能力
- トラブルへの対応力
保育士時代に子どもに対して「どう言えば伝わるか」を考え抜いてきた経験は大きな強みになります。
特に言葉だけのやり取りだからこそ、丁寧で相手目線の分かりやすい説明が重要です。
トラブル時でも冷静に対応する力や、相手の感情に寄り添うコミュニケーション力がそのまま活かせるでしょう。
福祉・介護職
福祉・介護職は、高齢者や障がいのある方の生活を支える仕事です。
相手の立場に立って丁寧に接する力や、小さな変化にも気づける観察力がとても重要になります。
- 相手の気持ちに寄り添う力
- 小さな変化に気づく観察力
保育士時代に身につけた「寄り添う力」や「相手の気持ちをくみ取る力」は、そのまま活かせます。
体力や気力が求められる場面もありますが、人と深く関わる仕事がしたい人にはやりがいのある職場です。
コールセンター
コールセンターは、電話での問い合わせや予約対応を行う仕事です。
相手の話を正確に聞き取り、背景や状況をくみ取って適切な言葉で伝える力が求められます。
- 正確に分かりやすく伝える言葉選び
- 声で相手の状況や背景を感じ取る観察力
保育士は普段から、相手の気持ちを察し、わかりやすく伝える力が自然と身についているため、コールセンターでの仕事でも十分に活躍できるでしょう。
顔が見えないからこそ、言葉だけで信頼関係を築く力が、大きな強みとして活かせます。
教材開発・子育て支援関連のライター
教材開発や子育て支援関連のライターは、保育現場での知識や子育て経験を活かして記事や教材を作成する仕事です。
在宅で働けることも多く、近年人気になっています。
- 分かりやすく伝える文章力
- 保育士として培ってきた専門性
保育士は日々の書類作成で「分かりやすく伝える力」が自然と身についており、大きな強みになります。
さらに、子どもを見てきた人数が保護者よりも圧倒的に多いので、具体的かつリアルに子どもの姿を描写できるでしょう。
保育士から転職成功のポイント
保育士からの転職を成功させるには、事前の準備がとても大切です。
今までの業務で「得意だったこと」「苦手だったこと」を振り返り、自分の強みや価値観を明確したり、自分に合う企業はどこかを探ったり、行動することがカギになります。
自分に合った働き方や職場を見つけるために、以下のポイントを要チェックしましょう。
自分のスキルを棚卸しする
転職活動では、自分のスキルを棚卸ししてよく理解しておくことがとても大事です。
自分の長所がわかっていないと、応募先に「この仕事で自分は何ができるか」を伝えられません。
もし自分のスキルがわからないと感じたら、まずは保育士として「自然にできていたこと」「好きだったこと」「得意かもと思ったこと」を紙に書き出してみましょう。
自分でも気づいていない強みやスキルのヒントが隠れているはずです。
企業・職種のリサーチを怠らない
転職先選びで後悔しないためには、企業や職種のリサーチがとても大切です。
転職サイトや口コミサイトを活用して、仕事内容・働き方・福利厚生を事前にしっかり確認しましょう。
「思っていたのと違った…」というミスマッチを防ぐためにも、リサーチはやりすぎなくらいでちょうどいいです。
不安や疑問をなくしてから応募するのが転職成功の近道です。
保育士からの転職に理解のある求人・サービスを活用する
保育士からの転職では、保育士専門の転職サイトや女性向けの転職サービスを活用するのがおすすめ。
特化型のサービスは、担当者が保育士の仕事や特性を理解していることが多く、自分に合った求人を紹介してもらいやすいです。
一般的な求人サイトよりも、希望にマッチする職場が見つかりやすく、転職活動がスムーズに進みます。
不安なことも相談しやすいのがメリットです。
まとめ
本記事では、保育士が保育の仕事を辞めて転職するならどんな仕事が向いているのかを解説しました。
保育に近い業種でスキルを活かして働く道もあれば、「子どもと関わる仕事から一度離れたい」と思うなら、まったく異なる職種へのチャレンジも可能です。
保育士として培ってきた力は、幅広い仕事で活かせるポイントがあります。
自信を持って、自分に合った道を見つけてくださいね。


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