「放課後等デイサービスの仕事ってどんなもの?」
興味はあるものの、実際はどんな仕事なのか疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。
放課後等デイサービスとは、障がいのある子どもや、発達に特性のある子どもを預かる施設です。
一般的な保育園や幼稚園よりもなんだかきつそう…、というイメージを持たれがちですが、良さがたくさんあります。
今回は、放課後等デイサービスでの仕事に興味を持っている人へ、仕事内容や1日の流れ、きついと言われている理由、仕事のやりがいなどを解説します。
放課後等デイサービスの仕事がきついと言われる理由
放課後等デイサービスの仕事は、ほかの福祉系事業と同じように「きつい」というイメージを持つ方が多いようです。
では、どんな部分が「きつそう」と思われているのでしょうか。
5つのポイントを解説していきます。
- 体力的な負担が大きい
- 日常的にトラブルが多い
- 子どもへの接し方にかなり気を遣う
- 保護者とのコミュニケーションが大変
- 給与が低すぎる園もある
体力的な負担が大きい
放課後等デイサービスは、6~18歳までの様々な特性を持った子どもたちが放課後を過ごす場です。
心身に障がいを抱える子ども、多動傾向にある子どもや、情緒が安定しない子どもなど、日常生活のあらゆる場面で介助を必要とする子どもが一堂に集まります。
小学生から高校生までを対象とする施設のため、中には体格の大きな子どももいるでしょう。
そんな子どもたちに対し、怪我や事故のないように配慮して、神経を張り巡らせ見守る職員の体力的な負担は大きいと言えます。
夏休みや冬休みなどの長期休みの際には、1日中預かる施設もあり、その負担は更に大きくなるでしょう。
日常的にトラブルが多い
放課後等デイサービスでは、運営をする上で日常的に様々なトラブルに直面します。
中でも多いのが、いじめや暴言・暴力などの、子ども同士の関わりの中で起こるトラブルです。
他者と適切な関係を築けないケースや、子ども自身が日常的にストレスを感じていて、それを放課後デイサービスで発散しているケースなどがあり、どちらもそれぞれの子どもの特性や背景が少なからず影響しています。
放課後等デイサービスの職員には、そういった一人ひとりの特性や心の中に溜め込んだストレスを受け止め、適切な援助や精神の安定を図る関わりが求められるのです。
子どもへの接し方にかなり気を遣う
放課後等デイサービスでは、子どもへの接し方に気を遣い、悩んでしまう職員も多いようです。
年齢、障がいの程度、性格などに違いのある子どもたちへの接し方は、毎日同じというわけにはいきません。
また、様々な特性や発達障がいを抱えた子どもたちは、他者とのコミュニケーションをうまく取れないケースという課題を持っている場合が多く、その関わりは容易ではありません。
特に、経験の少ないうちは、指導方法が適切なのか自信が持てず、悩んでしまうことも多いでしょう。
ベテランや先輩職員から助言をもらえたり、悩みを相談できる環境が大切になります。
保護者とのコミニュケーションが大変
子どもへの適切な指導や関わりには、保護者との良好なコミュニケーションは欠かせません。
支援方法に対する方針の違いによる意見や、特別な配慮を依頼するなど、我が子を心配するがゆえの要望を伝えてくるケースも少なからずあります。
中には、無理難題を訴えてくるケースもあるかもしれません。
保護者から向けられる厳しい言葉をまともに受けてしまうと、精神的にきつくなってきてしまいます。
気持ちを受け止めつつも、時には毅然とした態度で向き合うスキルも必要です。
給与が低すぎる園もある
放課後等デイサービス職員の給与は、職種や資格、経験、地域などによって施設ごとに異なります。
厚生労働省から発表されている、令和5年度障害福祉サービス等経営実態調査結果によれば、放課後等デイサービスで働く常勤職員の平均年収はおよそ310万円です。
国税庁発表の一般労働者の平均年収はおよそ461万円となっているため、放課後等デイサービス職員の給与は低い水準であると言えるでしょう。
しかし、近年、介護や福祉サービス業界において待遇改善の動きがあり、給与のベースアップや処遇改善加算が期待できます。
参照:国税庁 平均給与
放課後等デイサービスの仕事内容
放課後等デイサービスは、日常生活において特別な支援を必要とする小学生から高校生の子どもを対象とする施設です。
放課後や休日などに、家庭や学校とは異なる時間や空間での体験を通して、生活能力の向上や社会性を育むことを目的としています。
障がいの程度や個々の特性に応じたプログラムのもと適切な支援をするのが、職員の主な仕事です。
利用者の自立支援や心身の健やかな成長を促すことを目指すため、職員にはより深い専門性が求められています。
子どもへの支援
自立支援と日常生活の充実のための活動
障がいや特性を持った子どもたちが、日常生活をより良く送るために必要な自立支援を行います。
子ども一人ひとりの状況や興味関心を適切に把握し、個々の発達に即した計画をもとに支援をしていくのが、放課後等デイサービス職員の大切な役割です。
遊びや学び、社会性や自己肯定感を育む活動のほか、進学や就職などのライフステージの変化に合わせた支援も行い、幅広い視点で一人ひとりの自立をサポートします。
創作活動
創作活動を行うことで、描く、切る、折る、貼る、ちぎる、掴むなどの微細な動きを経験し、指先の感覚を磨くことにつながります。
また、様々な素材や色、形や匂いに違いがあることを知り、創作意欲を育みながら表現の幅を広げていきます。
同時に、創作の時間を通して、完成に向けて頑張る力や集中力、言葉や自己表現方法や力加減、色彩感覚なども学べるのです。
地域交流の機会の提供
障がいや発達に特性がある子どもは、社会的な関わりに制限が課せられたり、範囲が限定的になってしまう懸念があります。
社会との交流は、子どもたちが人生をより良く生きていくためには必要不可欠です。
放課後等デイサービスでは、ボランティア活動や招致、地域の様々な施設との交流などを図ることで、子どもたちが豊かな社会経験や自ら社会に関わる力を育んでいます。
こういった活動が、将来を見据えた自立支援につながっているのです。
余暇の提供
放課後等デイサービスにおいて、様々な活動と同じくらい大切なのが、余暇の時間の提供です。
生活の見通しがつきにくい子どもたちは、日常生活の中で、知らず知らずのうちに心身ともにストレスや疲れをため込んでいる場合があります。
それらはイライラや食欲不振、情緒の乱れや体調不良にもつながります。
放課後等デイサービスでは、リラックスできる環境や時間を意図的に作り、モヤモヤを解消したり、時には人に助けを求める経験を積み、子どもたち自身がうまく気持ちを切り替えられる練習をしているのです。
保護者対応
放課後等デイサービスで働くのであれば、利用する子どもたちだけでなく、保護者の状況や想いに寄り添う必要があります。
保護者は、自分の子どものことを理解してくれている、よく見ていてくれていると感じると安心感を抱いてくれるため、日頃から子ども一人ひとりをしっかり見て、様子や支援の内容を細かく伝えましょう。
また、保護者から受ける悩み相談についても対応力が求められます。
保護者の悩みの解決や心の負担軽減は、良好な親子関係や子どもの健やかな成長につながるため、積極的に聞き寄り添う姿勢が大切です。
ペアレントトレーニングを活用して、保護者が支援について学ぶ機会を設け、子どもの行動や抱えている課題について家庭でもできるサポートや支援方法を伝えることも重要です。
1日の流れ
放課後等デイサービスでは、施設によって様々な取り組みを行っており、送迎のある施設、外出やイベントを多く行う施設など、それぞれ特色があります。
実際に放課後等デイサービスで働く職員は、どのような流れで仕事をしているのでしょうか。
ここでは、放課後等デイサービスのごく平均的な平日の1日を一例とした流れをご紹介します。
- 14:00 子どものお迎え
- 14:30 はじまりの会
- 14:45 集団活動や個別支援、宿題指導、自由遊び
- 15:30 休憩、おやつ
- 16:30 おわりの会
- 17:00 保護者の迎え、自宅へ送迎
放課後等デイサービスでは、平日であれば学校の下校時間に合わせてお迎えに行ってくれる施設が多くあり、仕事をしている保護者も安心です。
施設到着後は、トイレや身支度を済ませたのち、はじまりの会を行い出席や健康状態をチェックします。
はじまりの会では、その日のスケジュールを事前に子どもたちに伝え、見通しを持って過ごせるよう支援しています。
その後、集団や個々に合わせた個別ブログラムを実施し、修了後も自宅に送り届けてくれるので、子どもの発達を促しながら、保護者の負担軽減にもつながっているのです。
きついと感じたときの対処方法
放課後等デイサービスで働くには、ここまで説明した通り、体力的かつ精神的な負担や子どもとの関わりの問題、保護者対応、職員同士の関係など、きついと感じる瞬間が多くあるでしょう。
障がいのある子どもたちとの関わりでは、突発的な出来事があったり、計画通りにいかないことも多く、一般的な仕事と比べると、より臨機応変さや忍耐力が求められます。
きついと感じた時には、信頼できる誰かに話を聞いてもらったり、思い切って仕事から離れてリフレッシュをしたりしてみましょう。
心に余裕が生まれ、また新たな気持ちで仕事に向き合うことができます。
放課後等デイサービスのやりがいとは?
きついと思われることも多い放課後等デイサービスですが、実は離職率は低いのが特徴です。
厚生労働省が発表している「令和2年雇用動向調査結果の概要」では、放課後等デイサービスの離職率は14.2%とごく平均的な数値となっており、離職率は決して高くないと言えます。
これには、放課後等デイサービスで感じられるやりがいが影響しています。
- 子どもの成長を近くで見られる
- 保護者を助けられる
- 社会的な意義を感じられる
放課後等デイサービスで働く上での最大のやりがいは、やはり子どもの成長を一番近くで見られること。
自分が行った支援により、今までできなかったことができるようになった喜びを共有できることは、何物にも代えがたいものです。
また、困っている保護者を助け、成長を共有したり悩みを分かち合いながら、二人三脚で成長を見守っていけることにも、心からの喜びを感じられるでしょう。
子どもの発達に悩み孤立してしまう保護者も多い中、放課後等デイサービスの職員が担う役割は、社会的にとても重要で意義のある仕事だと、疑う余地もありません。
参照:雇用動向調査結果の概要
向いてる人の特徴/向いてない人の特徴向いてる人の特徴/向いてない人の特徴
ここまでは、放課後等デイサービスの仕事内容や1日の流れなどについて解説してきました。
では、どんな人が放課後等デイサービスの仕事に向いているのでしょうか。
向いている人と向いていない人の特徴についてそれぞれお伝えします。
・子どもが好きな人、子どもとの関わりを喜べる人
・体力や忍耐力がある人
・コミュニケーション能力がある人
やはり一番重要なのは、子どもとの関わりを喜べるかどうかです。
子どもとの関わりを楽しみ、成長を共に喜び、時に忍耐強く見守りながら、献身的にサポートしていく仕事にやりがいを感じられる人は、間違いなく向いていると言えます。
体力勝負の仕事でもありますので、体力に自信がある、コミュニケーション能力があると言うのも、発達に特性を持った子どもたちとの関わりの中では大切な要素です。
・臨機応変な対応が苦手な人
・「いつもと同じ」を好む人
・体力がない人
ここまで触れてきた通り、障がいや発達に特性を持った子どもたちとの関わりでは、予想しない出来事が起こるケースがあります。
また、子どもたちは思い通りに動いてくれるわけではありません。
臨機応変に行動できる能力に欠け、根気強くサポートすることを苦手とする人は、放課後等デイサービスでの仕事には向いていないと言えます。
働く上で必要な資格はある?
放課後等デイサービスでは、管理者をはじめ、児童発達支援管理責任者や児童指導員、保育士、機能訓練担当者等を配置するよう定められています。
そのほか、障害福祉サービスの実務経験者や幼稚園教諭や小中高の教員免許保持者も働くことができます。
施設によっては無資格でも働ける場合がありますが、非正規職員としての採用となることがほとんどです。
きつい放課後等デイサービスに転職しないためのポイント
放課後等デイサービスでの仕事を始めるにあたり、きつい職場に転職しないために、子どもたちが生き生きしているか、職員数は十分か、施設は清潔であるかに注目しましょう。
この3点は、子どもたちと職員を大切にした施設であるかどうかを判断する基準になります。
職員数が十分に満たされており、職員一人ひとりが心身に余裕を持って働けていれば、おのずと施設が衛生的で整っているものです。
子どもたちが生き生きと過ごせていれば、職員からの愛情をしっかりと受けて過ごせていることが伺えます。
反対に、職員数が少なく、働いている人がいつも慌ただしかったり表情が曇っていたりする場合、環境が劣悪な可能性があり、子どもたちに与える影響は図り知れません。
上記をポイントを大切に、より良い職場選びの参考にしてください。
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