ライフワークバランスが大切だと言われる昨今、心身を健康に保ち、仕事もプライベートも充実させたいと願う人は多いです。
そんな中、保育士の給与の低さが問題視されて、給与の向上に対する取り組みがなされるようになりました。
しかし、保育士の処遇は給与面だけではなく残業の多さにも課題があるのではないでしょうか。
保育士の残業が多いのはなぜなのか、どんな対策を取ることが有効なのかといったことをお伝えします。
- 保育士はサービス残業が多い傾向にある
- 残業が多くなる理由は様々ある
- 自分なりに工夫することで残業を減らすことはできる
- 労働基準監督署や弁護士に相談する方法もある

はたから見れば穏やかに見える保育士の仕事は、心身ともに毎日クタクタになるほどの重労働です。
せめて残業などせずに、ゆっくりと自分の時間を確保したいものですよね。
疲弊せずに働ける方法を一緒に考えましょう!


あん 元保育士ライター
保育士歴11年、現在は2児の母です。公・私立園それぞれで正規・非正規保育士として働いた経験を活かし、役立つ情報をわかりやすくお伝えします。
保育士の残業は多い?データをもとに解説
残業が多くて大変というイメージがある保育士ですが、統計のデータではどのような数字が出ているのでしょうか。
政府統計ポータルサイトの“e-Stat”によると、保育士の1カ月の残業時間は4時間とされています。(2019年)
サイト内で統計を行っている100の職種の平均はひと月13.29時間となっており、比較すると保育士の残業は少ない印象です。
ただ統計に反映されている残業とは、残業代として処理された時間でサービス残業はカウントされていません。
「確実に4時間以上は残業している」と思われる方は少なくないのではないでしょうか。
データにこそ反映されていませんが残業は多いですし、サービス残業になってしまう点も改善していく必要がありそうですね。
残業をしている保育士が多い理由
保育以外の仕事が多い
子どもとの関わり以外にも保育士の仕事はたくさんあります。
連絡ノートの記入、おたよりの作成、保育計画の作成、職員会議・研修、壁面の製作や子どもの製作物の準備などのほかにも、夏になったらプールの用意や片付けをし、おしっこがついたパンツを洗い、砂場を消毒し…等々、挙げたらきりがありません。
勤務時間内に全てを終えるのは至難の業です。
そうなると、書類の作成や製作の準備などは後回しになってしまい、残業や持ち帰り仕事になってしまいます。
イベントや行事が来るたびに残業になる
運動会や発表会などのイベントや行事の前は特に残業が増えがちです。
衣装作りや背景、小道具作り、パンフレットの作成などの製作物も多いですし、他のクラスや職員と連携して進めていくための相談や打ち合わせなども多く、子どもを保育しながら保育時間中にこなすのは困難です。
保育園の方針次第で製作物などの作業量にそれぞれ差はありますが、普段の保育よりも仕事の量が増えるのは多くの園で共通しています。
慢性的な人手不足
保育士は慢性的に不足しています。
保育士の人数は、国が「児童福祉施設最低基準」で定めており、例えば4歳児以上は子ども30人につき保育士が1人となっています。
“最低限の基準”なのですが、この基準ギリギリで運営している保育園は少なくありません。
そうなると当然1人あたりの仕事量は多く、残業が増えてしまいます。
また保育士にも昼の休憩は大抵1時間あるとされていますが、人の少なさと仕事量の多さから、十分な休憩を取ることは難しいことが多いです。
帰りにくい雰囲気がある
自分は帰りたいと思っていても、帰りにくい雰囲気のために帰れず、残業してしまうことがあります。
帰りにくい雰囲気がある理由としては、早く帰ることに園長らが否定的であることや、他の保育士が皆残って仕事をしている中、自分だけ早く帰るのは気が引けるといった事です。
保育士の残業時間を減らそうという意識の園長であれば良いのですが、「長く働いている=頑張っている」と評価される職場では、なかなか帰りづらいものです。
保護者対応
勤務時間以降に保護者対応をする必要は基本的にはありません。
ですが、その日の保育中にケガをしてしまったとか、友達との間でトラブルが起きて、保護者に詳しい状況を説明しなければならないといった場合には、保護者が来るまで待っているということがあります。
連絡ノート等で保護者に伝えることも可能ではありますが、保護者に納得感や安心感を与え信頼関係を築くには直接話をすることが必要な場面もあり、残業が増える原因の1つとなっています。
残業が多くなる時期は?
行事やイベント前
行事やイベントの前は、通常の保育に加え、行事の準備をするので普段よりも仕事の量が増えて残業が増えてしまいがちです。
園でできなかった分は家に持ち帰ってすることも珍しくはありません。
また行事に向けて指導案を書きますし、行事に向けた話し合いやピアノの練習なども必要で仕事は山積みです。
行事に間に合わせねばという思いで残業が増えてしまい、気が付けば夜になっていたという経験をした方も多いのではないでしょうか。
卒園・入園時期
卒園の時期は、年長の担任をはじめとして忙しくなります。
卒園式の準備や練習、アルバム等記念品作成のほかに、小学校への引継ぎ資料の作成もあり、作るのにはとても時間がかかります。
またそれと並行して新年度の準備も進めなければなりません。
各クラス、壁面を作ったり新しい年度に向けて部屋を整えたりと忙しいです。
加えて、入園式の準備もこの時期にせねばなりません。
この時期の残業を避けて通るのは難しいと言えるでしょう。
残業をできるだけ少なくする方法はある?
計画的にコツコツ取り組む
保育士としてしばらく仕事をすると、だんだんと仕事の流れがわかってきます。
するべき仕事を具体的に把握し、コツコツと取り組むことで少しでも残業は減らせます。
ちょっとした隙間時間があった時も、するべきことがわかっていれば作業をする時間に充てることができ、無駄なく時間を使えます。
また、保育のアイデアを考えるのにも意外と時間を取られるものですが、次にすることがわかっていれば、アイデアを巡らせながら保育ができて効率的です。
ダラダラ制作物を作らない
制作物を作る時間は、保育士の仕事の中で大きなウエイトを占めます。
そのため、制作の効率化は残業時間の短縮を考える際に重要です。
いかにきれいに早く作れるか、ベテラン保育士がノウハウを持っていることが多いので、見て学んで自分のものにしましょう。
作る際の手の速さももちろん大切ですが、自分では気づかずにのんびりペースになっていることもありますので、意識することが大切です。
メリハリをつけ、集中して手早く作りましょう。
制作物など使い回しのコツを掴む
制作物などの使い回しは効率よく仕事をするために大切です。
例えば壁面に画用紙などで作った動物を貼る場合、月や季節が変わって壁面を変える度に新しく動物を作るのではなく、帽子や手袋を重ねて貼ることで季節感を大事にしつつ使い回せます。
行事で使う小道具なども、使えそうなものは積極的に使って効率的に活用しましょう。
何度も使うものは厚紙で作ったりラミネートしておいたりすることで、きれいな状態を保って長く使用できます。
自分の時間・私生活もしっかり楽しむ
残業や持ち帰り仕事は当たり前という感覚になってしまいがちですが、勤務時間外の仕事は自分の大切な時間を犠牲にしているということです。
疲弊してしまわないように、私生活を大切にしましょう。
私生活を充実させようとすると、自ずと残業をせずにすむ方法を考えます。
「早く帰る為にはまずこれを終わらせて…」と、仕事の仕方にメリハリが生まれて効率的になります。
私生活の充実は、仕事を充実させることにもつながるのです。
残業しているのに残業代が出ない…対処法とは
労働基準監督署に申告する
保育士はサービス残業が多いとお伝えしてきましたが、残業をしているのに残業代が支払われないというのは違法です。
労働者は労働基準法によって守られていますので、正当に主張すれば働いただけの給料を受け取ることができます。
泣き寝入りする必要はありません。
しかし、いきなり訴えるというのはなかなかハードルが高いですよね。
厚生労働省は労働基準行政の相談窓口を設置しているので、まずはそこで相談してみるのが良いでしょう。
弁護士に相談する
残業代の未払いについて弁護士に相談するのは有効な手段です。
労働基準監督署には無料で相談できますが、動いてくれないこともあるようですので、次の一手として考えると良いかもしれません。
弁護士に相談すると相談料が高そうだしハードルが高いと思ったら、法テラスや弁護士の無料相談会を活用するという方法もあります。
無料相談の後に必要であれば正式に弁護士に相談することも可能ですので、ご自分に合ったやり方を探してみてくださいね。
残業代が出る職場に転職する
残業代が支払われない環境を変えたければ、転職するのが近道です。
ですが、残業代が支払われる職場かどうかは見ただけではわかりませんよね。
先ずは、他の園に保育士の知り合いがいれば実態を聞いてみると、リアルな感想が聞けます。
また、保育の口コミサイトで評判を調べるという方法もあります。
「残業代が出ない」などと書かれていたら要チェックです。
または、見学してみて残業のことについてそれとなく聞けると良いですね。
残業をできるだけ減らしたいなら転職がおすすめ
残業を減らしたいなら、残業の少ない職場に転職するのがおすすめです。
保育士は全国的に不足しているので、転職先は少なからずあります。
転職先を探す方法は、求人情報サイトやハローワーク以外にも、スカウト型の転職サービスもあります。
また、保育士向けの転職サービスを運営している会社は何社もあります。
登録すると、自分が希望する転職先を一緒に探してくれるサービスですので、活用してみてはいかがでしょうか
- 保育士ワーカー
全国対応のサービス。年間3万人以上の保育士が利用している。入職後も悩み相談可能。
- 保育のお仕事
好条件の求人情報が豊富。キャリアアドバイザーが保育園を訪問し、職場の内情を把握している。
- マイナビ保育士
全国47都道府県の求人を扱っている。豊富な求人とサポートが魅力。
- ヒトシア保育
保育関連の職種幅広い求人がある。全国対応で求人数も多め。
残業が少ない園の特徴・見分け方
保育士の年齢層が幅広い
若い先生からは元気がもらえますよね。
しかし若い人ばかりということは、辞めていく人が多くて働きにくい職場である可能性もあります。
若いときはやる気や体力で乗り切れても、結婚や出産をすれば難しくなってきます。
また、今後ずっと働き続けることが難しいと感じると、将来のことを考えて別の園に転職するということもあります。
若い保育士ばかりの園が一概に悪いとは言えませんが、保育士の年齢層は幅広い方が働きやすい職場である可能性が高いです。
持ち帰りの仕事を禁止している
持ち帰りの仕事を禁止されている園は、残業などに対する意識が高い可能性があります。
経営者としては、仕事を持ち帰って勤務時間外に仕事をしてくれることは悪い事ではありません。
ですが禁止しているということは、保育士の労働環境についての意識を高く持っているとも考えられます。
持ち帰らずに済ませるには、仕事量を減らしたり仕事の効率化を図ったりする必要があるため、そういった点にに配慮があることも予想されますね。
鼓笛隊やマスゲームを取り入れていない
鼓笛隊やマスゲームを取り入れている保育園は仕事の量が多い傾向があります。
楽器や衣装、振り付けの準備も大変ですし、子どもにしっかり教えなければいけない保育内容の為、指導に時間がかかってしまうでしょう。
発表会なども、立派なセットや可愛い衣装を使用することが多いので、その分準備が大変になることもあります。
もちろんそれだけで判断はできませんので、口コミを見たり直接見学の時などに質問したりして判断してくださいね。
園長の考え方
保育園の働きやすさは、園長に大きく左右されます。
園長の考え方次第で、残業が増えるか減るかが大きく変わると言っても過言ではないでしょう。
保育園に見学に行く機会があれば、園長の考えを聞いてみることをおすすめします。
「うちの先生たちは熱心で遅くまで頑張ってくれている」という考え方なら残業は多いと予想されますし、「なるべく負担を減らそうとしている」等という考え方なら少ないと予想されます。
自分に合った考えの園を選びましょう。
まとめ
残業が全くない保育園はほとんど無いでしょう。
しかし、効率よく仕事をすることでできるだけ残業をせず、自分の時間を大切にしたいですね。
人的環境である保育士が十分に休んで心身ともに元気というのは、保育園の子どもたちにとっても望ましい姿です。
無理をしなくてもいい環境で、生き生きと保育士を続けていきたいですね。
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